米国がブチャなど民間人虐殺でロシア追加制裁! ロシア最大銀行の資産凍結もエネルギー関連除外! EUの制裁もガスと原油除外!! ルーブル高騰でハンガリー等ルーブル決済希望! 経済制裁でロシア破綻困難!? 2022.5.18

記事公開日:2022.5.19 テキスト
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(文・IWJ編集部 文責・岩上安身 5月18日加筆・アップ)

 ウクライナのブチャなどでの住民虐殺に対して、G7やEU、日本政府は2022年4月7~8日、ロシアからの石炭輸入停止などの追加制裁を発表した。ただしこの時、天然ガスや原油の禁輸には踏み切らなかった。その後、G7は5月8日に開いたオンライン会議で、ロシア産原油の輸入を禁止する方針を表明した。すでに禁輸を決めていた米英カナダにEUと日本も追随したことになる。

 一方で米バイデン政権も、4月6日にロシア最大の金融機関ズベルバンクと最大の民間銀行アルファバンクの米国での資産凍結などを発表した際は、エネルギー関連は除外された。その後、5月4日になってEUの欧州委員会は、ロシアの石油禁輸とともに、ズベルバンクと同国の主要2行を国際貿易の決済を行うSWIFT(国際銀行間通信協会)から排除する案を打ち出した。SWIFTからの排除は、国際貿易からの事実上の締め出しを意味する極めて重い制裁である。

 ロシアのルーブルは、ウクライナ侵攻後、こうした制裁が加わって暴落し、3月10日には1ドル121ルーブルと史上最安値を大幅更新したが、3月中旬以降、侵攻前の水準近くに戻し、1ドル75~80ルーブルに回復している。これを、米ホワイトハウスのジェン・サキ報道官は、人為的操作によるもので「実際には上昇していない」と主張した。

 しかし、ロシアNIS経済研究所の服部倫卓所長は、経済制裁はロシアに致命的ダメージを与えず、天然ガス等の代金を支払うため「外国企業にルーブルが買い支えられる」と指摘している。ルーブル高騰で、ハンガリーのようにルーブル建てでロシアと天然ガスや石油の取引を行う国が出てくれば、国際貿易の決裁にはドルが欠かせない、という「神話」が崩れ、基軸通貨米ドル時代の「終わりの始まり」の可能性さえあり得る。

 5月8日にG7がロシア産石油輸入の「段階的廃止か禁止」で合意したと報じられたが、今回も天然ガスの禁輸には至っていない。全面禁輸を行えば、欧州経済が破綻するからだと見られている。

 この記事は、4月11日時点で発表した記事に、5月18日時点での情報を加筆したものである。詳しくは記事本文を御覧いただきたい!

記事目次

▲米国がロシアへの制裁措置として、資産凍結を発表したロシア最大の金融機関ズベルバンク(ロシア貯蓄銀行)のモスクワにある本社。(Wikipedia、Roman Balabin

西側諸国が追加制裁を発表するも、天然ガスや原油の輸入禁止にまでは踏み切らなかった!

 ウクライナの首都キーフ(キエフ)近郊ブチャなどで、ロシア軍撤退後に多数の市民の死体が発見されたことを受け、これはロシア軍による住民虐殺によるものだと決めつける西側諸国が、ロシアへの追加制裁を発表している。

 岸田文雄総理は2022年4月8日の記者会見で、実現時期については明言しなかったものの、ロシアからの石炭輸入禁止を表明した。

  • <ロシア=悪>として思考停止した制裁強化は国益にならない! 暴力に制裁を対置せず暴力に停戦の仲介と停戦の条件作りを!(日刊IWJガイド、2022年4月10日)

▲ロシアへの追加制裁を発表する岸田文雄総理(2022年4月8日)(首相官邸ウェブサイトより

 これに先立ち、G7は4月7日の外相会合の共同声明で、ロシアへの追加制裁を発表した。

  • G7外相共同声明(仮訳)(外務省、2022年4月7日、pdf

 4月8日付けロイターは、「このうち、エネルギーに関する制裁では、ロシアからの石炭輸入の段階的な廃止や禁止、ロシアの石油への依存を低減するための取り組みの加速を表明した」と報じている。

 また、4月8日付け日本経済新聞は、「欧州連合(EU)加盟国は7日、ロシア産の石炭の輸入停止などを含む制裁案を承認した」と報じた。

 しかし、各国ともまだ、天然ガスや原油の輸入禁止にまでは、この時点で踏み切らなかった。踏み切れなかった、というべきか。日本の国益を考えたら、当然、このような制裁に加わるべきではない。従って踏み切らなくてよかった、あるいは踏み切るべきではない、と言わなくてはならないだろう。

 合意前のEUの追加制裁案について、4月6日付け東京新聞は、「年間40億ユーロ(約5400億円)に相当するロシア産石炭の輸入禁止が柱」だとする一方、「ただ、ウクライナが当初から強く求めていた天然ガスや原油の禁輸は今回も見送られた」と報じた。

 記事によると「ドイツのリントナー財務相は制裁案の検討開始直後の4日に『ロシア産ガスは短期間では替えが利かないのでロシアより私たちへの悪影響が大きい』と述べ、ドイツが強く依存する天然ガスを含む制裁議論をけん制」したと報じられている。

▲「ロシア産ガスは短期間では替えが利かない」と主張したクリスティアン・リントナー ドイツ連邦財務大臣(Wikipedia、Sandro Halank

 また、「リトアニアやポーランドは既に独自でガスなどの禁輸策を導入しており、ロシア産エネルギー脱却を巡る加盟国の足並みの乱れが浮き彫りになっている」と報じている。

米バイデン政権はロシア最大の金融機関ズベルバンクと最大の民間銀行アルファバンクの資産凍結などを発表! 国営テレビの資金源断つ動きも!

 米ホワイトハウスは4月6日、ロシアの最大手銀行の資産凍結やプーチン大統領の家族などの資産凍結を含む、新たな制裁措置を発表した。

 「米国はG7および欧州連合(EU)とともに、ブチャを含むウクライナにおける残虐行為に対して、プーチン政権に厳しくかつ即時的な経済的コストを課し続ける」として、発表された米国の制裁措置の内容は、以下のとおりである。

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