2022年5月10日火曜日、東京都医師会の定例会見が、千代田区にある東京都医師会館で行われた。
会見には、尾崎治夫会長の他、東京都のモニタリング会議にも出席している猪口正孝副会長、角田徹副会長、平川博之副会長、川上一恵理事、黒瀬巌(いわお)理事が参加し、東京都の新型コロナ感染防止対策等について語った。
会見で東京都医師会は、段階的に感染対策を解除していくことを提案したうえで、熱中症のリスクなども考慮しソーシャルディスタンスが十分確保できる屋外ではマスクの着用は不要という見解を示した。
さらに、尾崎会長は「マスクを外せる場面は外した方がいいし、どうしてもリスクが高いような場面は抗原定性検査をやって、(コロナに)かかっていないということを確認する」と述べ、飲食店のような屋内でも検査で陰性が確認できれば、マスクを着用しなくてもよいのではないかという認識を示した。
質疑応答でIWJ記者は東京都医師会ワクチン担当の角田徹副会長と、尾崎会長にそれぞれ質問した。
IWJ記者「今月末にも始まる新型コロナワクチンの4回目接種についておうかがいします。
米国ではオミクロン株の別系統BA.2が感染の約7割を占めており、日本でも都内では同様にBA.2オミクロン株の74%を占めています。感染力が強いとされているBA.2に対して米食品医薬品局(FDA)は、『今のワクチンはBA.2にあまり適していない』と指摘しています。
このような状況で、現在と同じワクチンを4回目に接種して、はたして効果が見込めるものなのでしょうか? ご見解をお聞かせください」
IWJの質問に角田副会長は次のように答えた。
角田副会長「最新のデータで都内でもやはりBA.2が85%ぐらい株が出ています。それはちょっと前のデータですから、現時点では多分90%以上というふうに推測します。
確かにBA.2へのワクチンの効果について多少落ちるというデータは出ておりますが、やはりBA.2にも十分効果があるというデータは出ております。
ただ、比較の問題で、BA.1ないしはその前の株に比べると効果は落ちていることは出ております。ただ、3回目のワクチン接種というのは、非常に2回目までで得た、基礎的な免疫力をさらに高める機能がございますので、ぜひその辺を含めて3回目のワクチンはぜひお願いしたいというふうに思っております」
尾崎会長には次のように質問した。
IWJ記者「現在、国会の憲法審査会で、ウクライナ情勢とともにコロナ禍を理由として、人権を制限して内閣に権力を集中させる緊急事態条項が必要だという議論がなされています。
そこでお聞きしたいのですが、実際にこの2年あまり、医療の現場から、現行憲法の人権規定があるために命を救えなかったとか、憲法で人権を制限しなければ、命と健康が守れないといった事例や現場からの報告はあったのでしょうか?
また、東京都医師会としては、今後の疫病などのパンデミックに備え、憲法で人権を制限して、内閣に権力を集中させる必要があるとお考えでしょうか?」
尾崎会長は次のように回答した。
尾崎会長「そういったケースがあったかどうかという検証は、なかなか医師会レベルでは難しいと思いますので、お答えはできないと思うんですね。
ただ、今後そういうものは必要かどうかというのは、そのパンデミックを起こす原因となるウイルスの性質とか、毒性とか、感染力とかそういったものによって、ある程度制限せざるを得ない場面というのも、もしかしたら出てくるかもしれないということで、一概には論じられないと思っています。
なるべくそういったことは、安易に適用しない方がいいんだとは思いますけれども、やはり場合によってはそういったことも必要になるというような考え方といいますか、それはやはり十分議論をすべきじゃないかなと思います」
ワクチンの4回目接種について、角田副会長はBA.1よりは劣るかもしれないが、BA.2に対しても効果があるという見解を示した。
緊急事態条項導入の是非について、尾崎会長は「適用しない方がいい」としつつも今後、さらなる悪性感染症が出現することを考慮すると、議論には値するという認識を示した。