1月27日、夜19時過ぎから、岩上安身による元外務省国際情報局長 孫崎享氏インタビュー「東の『台湾有事』危機と西の『ウクライナ有事』危機が同時に迫る!」を生中継した。
昨年から、ウクライナとロシアの間で緊張が高まっていると伝えられてきたが、年が明けて19日、バイデン米大統領が「彼(プーチン大統領)はウクライナに侵攻するだろう」と述べてから、米軍8500人に派遣準備命令が出されるなど、急速に軍事的緊張が高まっている。
孫崎氏は、外務省国際情報室長として、英国のMI6で学び、ロシア、イラク、イラン、ウズベキスタンなどに駐留したご経験をお持ちである。孫崎氏は「最前線ですからね、世界の情報の最前線の人間の情報が入るんです」、その中で他国のインテリジェンスを担う人間達と一緒に仕事をすることで、世界の情報関係者の最前線の水準がわかったと語った。
冒頭、今回のウクライナ危機の本質を理解するために、今日に至る経緯について振り返った。ウクライナでは2014年に首都キエフにおいて「ユーロマイダン」という反政府デモが起こり、親露政権が倒れ、親欧米政権が成立する。その中で、ネオナチ的な民族主義集団による暴行が放置され、ロシア系住民が虐殺された「オデッサの虐殺」も起きた。
親欧米政権成立後、ロシア語の禁止など、ロシア語話者への抑圧が始まる。孫崎氏は、ウクライナにおけるウクライナ語話者とロシア語話者の比率を州ごとに比較しながら、特に多くがロシア語話者であるクリミア(9割、2014年住民投票で「独立」)、ドネツク州、ルガンスク州をどうするかが、ウクライナ危機の核心の一つだと指摘した。
孫崎氏「ロシア人から見ると、ウクライナっていうのは、第2次世界大戦で、ソ連赤軍が多大な犠牲をだして、ナチスドイツから取り返した土地です。赤軍の功績だという気持ちがあるんです」
岩上「独ソ戦は、人類の戦争の歴史の中で最も凄惨をきわめた殲滅戦だったといわれていますね。ソ連が支払った犠牲は2000万人ですから。スターリングランドまでドイツ軍が侵攻したのを、ソ連赤軍がひっくり返していって、ベルリンまで陥落させてヒットラーを自殺に追い込むところまで持っていった」
孫崎氏「(ウクライナの)国土のかなりの部分は、私たちの血でつくった土地だというね。(略)
ドネツクは75%、ルガンスクは70%はロシア人なんです。このロシア人をどう扱うかが、ウクライナ危機の核心にあるんです。ウクライナ語が喋れないとちゃんとした職をもらえない、というような扱いを受けるのであれば、我々(東部のウクライナ語話者の多い州の住民)は、ロシアと一緒になった方がいいんじゃないか、と。ここが一番大きい問題なんですよね。
ここを議論しないと、今回のウクライナ問題はわからない。
これらの州では、義勇軍が出来上がっていて、自分たちでルガンスク人民共和国を名乗り、ドネツク州自治共和国を名乗っている。そこにウクライナ軍が入ってきて戦っているんですよね」
孫崎氏は、ウクライナも、カナダのように英語を第1公用語、フランス語を第2公用語として共存させるのが一番良いと提案した。
もうひとつ、ウクライナ危機を考える上で重要なのが、「NATOの東進」である。プーチン大統領は一貫して「NATOの東方拡大を排除する信頼ある法的に定められた保証」を求めてきた。
孫崎氏「1990年代の初めにソ連が崩壊しました。軍事力も非常に弱って、あともう20年はロシアが我々(NATO加盟国)を攻撃することはあり得ないと。もうNATOは要らないとね。NATOは基本的にはソ連の脅威に(対抗)していたわけですから。