1月24日に召集される今度の通常国会で、日本・トルコ原子力協定の批准手続きが進められようとしている。この協定は、トルコへの原発輸出を可能にするものだ。しかし、十分な説明がなされておらず、実現可能性調査の妥当性の確認ができないという問題をはらんでいる。そのような状況の中、多額の税金を使って原発輸出の準備が進められている。この件に関し、FoEJapan主催で1月22日(水)に緊急院内セミナーが開かれた。
(IWJ・松井信篤)
1月24日に召集される今度の通常国会で、日本・トルコ原子力協定の批准手続きが進められようとしている。この協定は、トルコへの原発輸出を可能にするものだ。しかし、十分な説明がなされておらず、実現可能性調査の妥当性の確認ができないという問題をはらんでいる。そのような状況の中、多額の税金を使って原発輸出の準備が進められている。この件に関し、FoEJapan主催で1月22日(水)に緊急院内セミナーが開かれた。
■ハイライト
冒頭で、FoE Japan理事の満田夏花氏がベトナムとトルコへの原発輸出の現状を説明した。ベトナムの場合は、日本が25億円を使って実現可能性調査を行った。その一部である20億円は、低炭素発電産業国際展開調査事業の補助金の形で支出されているが、5億円分については震災復興予算が流用されているという。
なお、この補助金についての「実績報告書」は黒塗りの状態でしか開示されておらず、さらには調査の結果が記載されるべき報告書本体が存在しない。つまり、調査報告書が開示されていないため、調査の妥当性を検証することはできないという状況である。また、地質調査は、日本原電から三菱重工とも関係が深い「ダイヤコンサルタント」に発注されている。
2010年10月、当時の菅首相がベトナムを訪問し、ニントゥアン第二原発への原発輸出の約束を取りつけた。この原発建設について、プラント技術者である川井康郎氏は、立地評価の判断基準や福島原発事故の教訓をどのように活かしたか不明だと問題点を指摘した。さらに、使用済み核燃料や放射性廃棄物処理に関わる項目も分かっていない。復興予算を流用した5億円については、「5億円をかけた調査とは思えない」と述べた。また、川井氏は、ベトナムで原発建設を進めた場合の事故時のリスク、事業と財務上のリスク、またベトナムの民主主義助成に悪影響を与えかねないという問題点を指摘した。
「環境・持続社会」研究センターの田辺有輝氏は、トルコへの原発輸出の問題点について報告した。2013年5月に安倍首相がトルコを訪問し、黒海沿岸のシノップ地区への原発建設計画が決まった。その後、日本原電が地層調査を受注、三菱重工と仏アレバ社の合弁会社ATMEA社が開発した炉の採用が決定された。田辺氏は、日本原電が地層調査を受注したことについて、なぜ日本原電が選定されたのか不透明であると述べる。
トルコでは1900年以降、マグニチュード6以上の地震が72回起きており、原発の耐震性が懸念されている。また、トルコでは過去50年間に3回の軍事クーデターが発生しており、テロも頻発している。こうした状況は、長期的な管理が必要となる放射性廃棄物を排出する原発にとっては大きな問題であると田辺氏は指摘した。
原発建設が予定されているシノップ市は、チェルノブイリ事故の際に被害を受けた地域だ。原発建設についてシノップ市長は反対を表明、シノップ市の2871名は日本の国会議員に対する要請書を提出した。