2013年6月22日(土)18時より、大阪市中央区のエル・おおさかにおいて、インドとトルコのグリーンピース・メンバーを招いて、「緊急来日集会『倫理なき原発輸出を許さない!~インド、トルコの現地の声~』」が行われた。アスリハン・テューマー氏は「国を超えて、原子力を止めるための連携ができることを確認できた」と話した。
(IWJテキストスタッフ・花山/澤邉)
2013年6月22日(土)18時より、大阪市中央区のエル・おおさかにおいて、インドとトルコのグリーンピース・メンバーを招いて、「緊急来日集会『倫理なき原発輸出を許さない!~インド、トルコの現地の声~』」が行われた。アスリハン・テューマー氏は「国を超えて、原子力を止めるための連携ができることを確認できた」と話した。
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アスリハン・テューマー氏は、福島原発事故以降の原子力開発を取り巻く環境の変化に関して、「技術、安全文化が発展しているはずの日本で事故が起きたため、大きな波紋が広がった。ここで明らかになったことは、安全装置にお金を投入しなければならないということ。それから、メンテナンス期間の長期化、保険費用の上昇、そして賠償システムが厳しくなるということである」と指摘した。
続けて、「福島事故の結果、世界的にどのような影響があったか。いくつもの国が、原子力政策の撤回や段階的廃止を決めた。例えばドイツ、イタリア、スイス、ベルギー、オランダ、ブルガリア。また、別の国は原子力政策の縮小や延期を決めた。その中には中国、インド、米国、カナダ、イギリス、フランス、フィンランドと東欧が入っている。まったく政策を決めていない国は、UAE、ブラジル、南アフリカと韓国である。ただし、原発を増やそう、原子力産業を促進しようと決めた国は1カ国もない」と述べた。
こうした動きがもたらした結果として、「原子力産業を持っている国々は、売り込む相手国がなくなり、原子力を求める市場がない状況に直面した。福島の事故以降、日本でも、国内では市場がないことが明らかになってしまった。こうした状況だが、リトアニアでは日立が原発の優先交渉権を獲得した。しかし、これだけでは日本の原子力産業のための市場は作れないので、大企業の原子力部門が維持できなくなることを恐れ、安倍首相がPRマンとして振る舞うようになった。安倍首相は、トルコでも原子力産業のPRマンとして、三菱の原発を売りつけようとして、5月に福島事故後初めての原子力条約を結んだ」と述べた。
テューマー氏は「トルコの人々が強く感じたのは、日本で原発を止めていこうという話をしている時に、非常に危険な技術を外国に輸出しようとするのは非倫理的であるということだ。トルコでは、原発反対運動が非常に強く、国民の64%が原発に反対だ。これまでに4回、原発が建設されようとしてきたが、すべて阻止している。トルコの環境を大事にしている人たちが、次の世代から、また次の世代へと、絶対に原発を許さない活動を引き継いでいくことは重要である」と述べた。
カルーナ・ライナ氏は「個人的にこの会合は意味深いと思う。なぜかというと、インドで今まで2回、こうした集会を開こうとしたが、インド政府が許さなかった。 こうした対話を今回だけでなく、どんどん続けていきたい」と話を始めた。
まず、インドの安全文化について、「1994年にカイガ原発で格納容器の落下事故が起き、その5年後には同じ発電所で火災が起きている。また、別の発電所では原子炉の修繕でペンキを塗るときに、水の代わりに重水を使う事故も発生している。こうした国に日本は原発を売ろうとしている。さらに、電力会社と規制当局の資格を見ると非常に疑わしい。お互いに人が交流しているだけでなく、資金面でも一緒にお金を使っている状態である。だから規制当局は独立しているといえない」と述べた。
原子力損害賠償法については、「2つのユニークな特徴を持っている。それは被害者が原子力に関わっている会社を追求できることと、事故の責任がある会社が賠償しなければいけないこと。これは当たり前のことであるが、多くの原子力産業、そして原子力産業を持っている国は、この法律に怯えている。原子力産業が実際に何か事故を起こしたときに、責任をとらなけばならない法律がある限り、インドではリスクが高すぎてこうしたビジネスはできない」と説明した。
エネルギーの状況については、「インドでは、再生可能エネルギーのマーケットがどんどん発展している。原子力のキャパシティを増やそうとしているが、再生可能エネルギーのプログラムのほうが速いペースで動いている。だから、原発を作れば貧しい人たちを救えるというインド政府の発言は、理にかなっていない。インドが原子力協定に調印したのは、グローバルプレーヤーになりたいというだけの理由である。本当に、少数の人間のプライドのためにだけ、この条約が調印された」と述べた。
続けて、「インドと日本の市民が一緒になって、この状況に反対すれば絶対に希望がある。日本での原発についての議論は、福島事故を語りながらされるべきである。これは国内の原子力をどうするかだけでなく、原発輸出についてもそうである。日本は大事故が起きても自力で復興するという点で、世界から敬意を集めている。そんな日本で、これからエネルギーをどうしていくのか検討しているときに、原子力を輸出するのは非倫理的である。特にインドのように核不拡散について、何の尊重もしない国に原発を輸出するのは酷いことである。日本は違う価値観をつくることができる国である。それは再生可能エネルギーではないだろうか。私たちも政府にそういうプレッシャーをかけ、変わらなければならないと言うしかない」と述べた。
原発輸出を止めるためのディスカッションにおいて、テューマー氏は「安倍政権の経済の考え方は、トルコの首相と似ていて、1960年代の古い考え方である。彼らが唯一考えられるのは、もっと大きい工場、もっと大きい何か、というだけで、どうすれば人々の間が平等になるかという発想ができない。ただ大きくすればいいということばかりである。経済としても時代遅れだし、人権の面から見ても時代遅れである。何千メガワットも電気を作って、それが普通の人に届かないというやり方よりも、再生可能エネルギーという、分散化でき、直接それが人々の手に入るやり方に切り替えていかなければならない」と述べた。