「原発ゼロ社会」の実現を目指す市民や有識者らで作る「原子力市民委員会」(座長・舩橋晴俊 法政大教授)が、上智大学で意見交換会を開催した。同会は、政府に脱原発のための具体的な政策提言を行う「脱原子力政策大綱」の2014年春の完成を目指している。
「原子力市民委員会」は、福島第一原発事故の対策を提言する「福島原発事故部会」、使用済み核燃料や核廃棄物の処理に関する提言を行う「核廃棄物部会」、原発ゼロ社会に向けたエネルギー政策を提言する「原発ゼロ行程部会」、原子力規制のあり方を提言する「原子力規制部会」の4つのワーキンググループが意見集約のための作業を行っている。国内外の一般市民の声を盛り込むことを目的に、こうした意見交換会を今後も継続的に開催するとしている。
この日、会場からは、「原発の廃炉に向け、いかにして社会的合意形成を進めるのか」という質問があがった。「核廃棄物部会」のコーディネーターを務める原子力資料情報室共同代表の伴英幸氏は「現在の原子力政策には一般市民の声が反映されていない。市民と産業界など、あらゆるステークホルダーが意見交換をして最適化を探ることが必要だ」と語った。
まず「原子力利用を推進することによつて、将来におけるエネルギー資源を確保」することを目的とした原子力基本法をどうするか。「脱原子力基本法」のみならず福島第一をはじめとして現在の世界人類に対する脅威、将来人類への負の遺産となってしまった放射能の取扱に関する「放射能基本法」の制定が必要ではないか。原子力市民委員会に「基本法部会」を設置して、議員立法へとつなげてほしい。
また、福島の「俊鶻丸」として日本の科学者を結集し、福島第一の実情を現地、現場調査を含め徹底調査する「フクイチ科学調査団」の結成を呼びかけてほしい。もう一刻の猶予もない。できれば同時に「廃炉技術者集団」「廃炉自主管理労組」をつくって現地、現場の活動を始めたい。
原子力委員会、原子力規制委員会に対抗するというよりも、それらに取って代わり、この危機への対応を通して、日本国を市民によるネットワーク社会へと組み替えていきたい。元首と軍隊がなく、自然災害と放射能がある国として、しかし、それらに適切に対処することによって国際社会において名誉ある地位を占めたいと思う。