「われわれの姿勢にブレが生じれば、市民運動家らとの間に齟齬を来たすだろう」~第4回 原子力市民委員会 2013.7.25

記事公開日:2013.7.25取材地: テキスト動画
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(IWJテキストスタッフ・富田/奥松)

 「福島原発事故を受け避難中の被災者たちは、『帰還圧力』が自分たちにかかることを恐れている。われわれは政府に対し、楔を打ち込むべきだ」──。

 2013年7月25日(木)15時から、東京都千代田区の主婦会館で第4回原子力市民委員会が開かれ、出席した満田夏花氏(FoE Japan 理事)は「被曝線量基準」を巡り、こう主張した。

■ハイライト

 脱原発社会の構築を目指す、舩橋晴俊氏(法政大学社会学部教授)が座長を務める原子力市民委員会では、この9月に予定されている「中間報告書」発表に向け、4つの部会がそれぞれ議論を重ねている。この日の会合では、各部会の代表者による進捗状況の報告があった。

 第1部会の報告は、細川弘明氏(京都精華大学人文学部教授)が担当。一昨年に起きた福島第一原発事故に伴う、1. 被曝線量基準値の設定、2. 損害賠償のあり方、3. 除染や環境汚染、4. 漁業に与える長期的影響──をテーマに議論を続けている、と報告した。中でも、被曝線量基準値の設定については、「これが決まらない限り、原発事故子ども・被災者支援法の基本方針も固まらない」とし、重大なテーマに位置づけられている旨を強調した。

 これを受け、第1部会のメンバーである満田夏花氏は「前回の部会では、年間1ミリシーベルトという被曝線量基準は、いわば社会的約束事として存在しているため、市民委員会はそこを目指して提言するべき、という発言があった」とした上で、次のように力説。「市民側の切なる願いは、この1ミリシーベルトの基準が遵守されることにある。被曝線量をどう線引きするかは、帰還や損害賠償に直接関わってくるだけに、われわれは一致団結して、1ミリシーベルトのラインを死守する立場を表明しなければならない」。

 さらに、満田氏は「その点でわれわれがブレてしまえば、市民運動家らとの間に齟齬が生じるだろう」とも語り、「今、避難中の被災者たちは、5ミリシーベルト程度で線引きされてしまい、ある種の『帰還圧力』が自分たちにかかることを恐れている。市民委員会は、それを阻止するための楔を、政府に対し打ち込むべきだ」と主張した。

 第2部会が扱っているテーマは、事故炉や事故廃棄物の処理について。吉岡斉氏(九州大学副学長)は「廃炉に向けた工程表作成のための議論では、被曝・国民負担の最小化が原則である」と指摘。「コスト面での国民負担は最小化されるべきだが、被曝の最小化と矛盾するケースでは、被曝の最小化が優先されることになる」と語った。

 使用済み核燃料のリスク低減もテーマとされており、これに対する姿勢として、「全国の核燃料プールと六ヶ所再処理工場の付設プールに貯蔵されている使用済核燃料、それぞれ約1万4000トンと3000トンについて、より安全な貯蔵法と、それを実現するための政策を提案する」とした。ほぼ同じテーマは、「福島原発サイトの『後始末』」との呼び方で、第4部会でも議論されており、同部会のメンバーから「『後始末』の作業が遺漏や無理のない形で行われること、市民の負担が最小限になるように管理されることを重視している」との説明があった。

 第3部会で重点的に議論されているテーマは、1. 原子力損害賠償制度など現行の法制度、2. 原発ゼロに向けた電力需給など、3. 国民の合意プロセス──の3つ。松原弘道氏(環境エネルギー政策研究所主席研究員)は、1. に関し、「『原子力損害賠償法』は、昨年に見直されるはずだったが棚上げ状態だ。『原子力損害賠償支援機構法』が2011年に施行された時、附則で賠償法の見直しが明記されているにもかかわらず、だ。市民委員会は、この点を問題視していく」と表明。賠償法の問題点として、原子炉メーカーや燃料などのサプライヤーが責任を負わないことや、損害賠償措置が一事業所につき1200億円と少額であることなどを挙げた。そして、「被害者を保護するために、賠償額や期間に限度を設けないことを提言していく」と述べた。

 第3部会は、原発ゼロに向けた工程表づくりを担っており、原発ゼロ実現の時期について、国民的議論を重ねていく旨が示されると、それに対して、第4部会の海渡雄一氏(弁護士)は「第4部会は、今の再稼動の審査基準は緩く、再稼動は認められないという結論を導き出そうとしている」とした上で、次のような意見を述べた。「委員会としての提言を中途半端なものにしないためにも、提言では『原発ゼロの即時実現』を明記することが必要。即時ゼロの実施には、国民に負担を強いる面があるが、それでも『日本人全員でその負担を引き受けていこう』と、市民委員会は積極的に呼び掛けるべきだ」。

 第4部会では、原発規制基準の問題点が議論されている。議論の成果は、市民委員会が6月19日に内閣府や原子力規制委員会に提出した「緊急提言」に、すでにかなり反映されているが、井野博光氏(東京大学名誉教授)は、「旧安全指針から新規制基準への歴史的経緯、諸外国との比較という項目は、緊急提言には含まれていない」と述べ、提言提出後の進展ぶりを強調した。また、原子力規制の透明・公開というテーマに関しては、「いわゆる原子力村の密室体質が残るのならば、いかなる規則をつくっても無意味だ」とも語った。

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