┏━━【目次】━━━━
┠■はじめに~ゼレンスキー大統領がおくればせながら、ウクライナ軍による反転攻勢が始まったことを認める! 4日に始まったウクライナ軍の反転攻勢は、ロシア軍の固い守りに阻まれ多くの損失を出すも、「レオパルト2」「ブラッドレー戦闘車」「フランス製シーザー自走榴弾砲」などNATO仕様の兵器が投入され、戦闘レベルがシフトアップ! プーチン大統領は「ウクライナ軍にはまだ攻撃的な潜在力がある」と慎重姿勢!
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┠■IWJは緊急事態が続いています! 5月のご寄付額は182万3000円でした! 5月の月間目標額の47%、207万7000円の不足でした! IWJは創業以来、最大の経済的危機に直面しています! 第13期の累積赤字は毎月増え続け、8月から5月まで10ヶ月間の累積の不足額は、1868万2900円となりました! 6月こそは少なくとも月間目標額390万円を達成し、また累積の不足額を少しでも減らせますよう、緊急のご支援・ご寄付・カンパのほど、どうぞよろしくお願いします!
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┠■【中継番組表】
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┠■独裁者プーチン個人さえ取り除けばロシアを抑え込める、という低俗なプロパガンダへの、今でも有効な反論! ロシアには、プーチンの比ではない、わからず屋の過激派が山ほど存在する!<岩上安身『あらかじめ裏切られた革命』復刻連載(その66)>第四部 自由という災厄「第十二章『ジリノフスキー現象』を読み解く ―― 一九九三年十二月 ――」(Part5)
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┠■<今週の新記事振り返り>
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┠■<今週の日刊IWJガイド振り返り>
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┠■【編集雑記 梅雨真っ只中、どうぞご自愛ください】
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■はじめに~ゼレンスキー大統領がおくればせながら、ウクライナ軍による反転攻勢が始まったことを認める! 4日に始まったウクライナ軍の反転攻勢は、ロシア軍の固い守りに阻まれ多くの損失を出すも、「レオパルト2」「ブラッドレー戦闘車」「フランス製シーザー自走榴弾砲」などNATO仕様の兵器が投入され、戦闘レベルがシフトアップ! プーチン大統領は「ウクライナ軍にはまだ攻撃的な潜在力がある」と慎重姿勢!
おはようございます。IWJ編集部です。
ゼレンスキー大統領が10日、おくればせながら、ウクライナ軍による反転攻勢が始まったことを認めました。『BBC』など各メディアが報じています。
※Ukraine counter-offensive actions have begun, Zelensky says(BBC、2023年6月10日)
https://www.bbc.com/news/world-europe-65866880
日本でも、昨夜『日経新聞』が速報をネット上で出すと、他の日本のマスメディアも、今朝にかけて、順次、同様の内容を伝えています。
『日経』の内容は、米国の軍事シンクタンクである戦争研究所が発表した内容を、後追いした記事です。
※ゼレンスキー大統領、反転攻勢開始認める(日経新聞、2023年6月10日)
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGR101RI0Q3A610C2000000/
戦争研究所は、日本では、たびたび大手メディアや「知識人」のネタ元にされますが、押さえておかなければいけないポイントがあります。戦争研究所は、実はネオコンの巣窟である、という点です。
当然、「ロシア憎悪」のバイアスが入っています。読む場合、引用する場合は、その点に十分留意する必要があります。安易に、エクスキューズもなく、戦争研究所の発表のみを、あたかも真実であるかの如く、垂れ流している大手メディアが、多過ぎます。この点は、注意喚起しておきたいと思います。
10日付『AP通信』によると、予告なしにキエフを訪れたカナダのトルドー首相とゼレンスキー大統領は、会談を行い、その後の共同記者会見で、カナダがウクライナを支援すると表明しただけでなく、ウクライナ軍による反攻が進行中だと明らかにしました。
「ロシア軍に対する反攻・防衛行動が進行中である」
「ロシア軍が最前線で激しい戦闘を繰り広げている中、トップの司令官達は『前向きな』考え方(“positive” mindset)をしている」
上記のゼレンスキー大統領の発言は、プーチン大統領が9日、「ウクライナ軍による反攻が始まっている」が、「ウクライナ軍は『大きな損失』を被っている」と発言したことに対するコメントを求められ、回答したものです。
ゼレンスキー大統領は、「ウクライナでは反攻、防衛行動が行われている。ウクライナ軍がどの段階、フェーズにあるのかは話さない」と、反転攻勢の作戦内容や作戦の段階については発言を避けました。
『AP通信』によると、ゼレンスキー大統領は「私は毎日、さまざまな方向の指揮官と連絡を取り合っている」と述べ、ウクライナのトップ軍人のうち5人の名前を引用したということです。この共同記者会見の動画はウクライナ政府の公式ホームページにも存在せず、ゼレンスキー大統領が、消息不明とされるザルジニー総司令官の名前をあげたかどうか、IWJは確認できていません。
「皆、前向き(positive)だ。これをプーチンに伝えてくれ」
ゼレンスキー大統領は「前向き(positive)だ」としか述べていませんが、それはまだ反転攻勢が必ずしもうまくいっていないせいかもしれません。
※Zelenskyy says ‘counteroffensive, defensive actions’ taking place in Ukraine(AP、2023年6月10日)
https://apnews.com/article/russia-ukraine-nuclear-plant-reactor-dam-flooding-a961ad87eff34fa0bc7cfbb7223cb422
先述した通り、米国の軍事シンクタンクである戦争研究所(ISW、Institute For The Study of War)は、ネオコンの巣窟ですが、戦況について、評価にバイアスがかかっていたとしても、詳細な情報を、素早く出すことは事実です。読む側に、読解力、リテラシーさえあれば、読むことに意味があります。
6月9日の評価を以下のように報告しています。長文になりますので、「重要なポイント」から、ウクライナ軍の反転攻勢に関連する部分をご紹介します。
・ウクライナ軍は6月9日も前線の少なくとも4つの地域で反撃作戦を継続し、バフムト周辺と西ドネツクでさらに前進した。4つの地域とは、クレミンナ地域、バフムート近郊、ドネツク・ザポリージャ州境に近いドネツク州西部、西部ザポリージャ州。
・ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は6月9日、ウクライナの反撃が最近始まったことを認め、ウクライナ軍にはまだ攻撃的な潜在力があると指摘したが、これはウクライナの反撃を軽視しようとするこれまでのクレムリンの取り組みとは異なるものだ。
・それとは対照的に、ロシア発の情報の多くは、6月9日にロシア軍が西側提供のウクライナ軍装備品をさらに損傷した後、ウクライナの反撃は失敗したと主張したが、その判断は時期尚早である。ロシア軍が破壊したと主張するウクライナ軍車両の数は、大幅に水増しされている。
・ウクライナ当局者は、ウクライナ軍が反撃作戦中に装備品の損失を受けることが予想されていることを直接認めた。ウクライナ軍が最近装備品の損失を被った最前線の地域では、ウクライナ軍が重要な西側装備品を使用していると報告されている。
・ウクライナ南部の地域を担当するロシアの指揮系統は不明瞭で、重複している可能性が高い。
・ロシア軍は6月8日から9日の夜、ウクライナ全土でミサイルと無人機による攻撃を実施した。
・複数の独立筋は、6月6日に内部爆発によりカホフカ水力発電所(KHPP)ダムが破壊された可能性が高いという追加の証拠を報告した。ノルウェーの地震監視センターNORSARは、地震データは6月6日の現地時間午前2時54分に爆発が起きたことを示していると報告した。
・ロシア軍とウクライナ軍はクレミンナ南部で限定的かつ局所的な地上攻撃を実施した。
・ロシア軍はバフムト近郊とアヴディウカ-ドネツク市線で地上攻撃を続けた。
・ウクライナ軍はドネツク州とザポリージャ州の行政境界およびザポリージャ州西部で限定的な地上攻撃を続けた。
・ウクライナの報告書は、ロシア当局がクリミア北部からの避難を準備している可能性があると述べている。
※Russian Offensive Campaign Assessment, June 9, 2023(ISW、2023年6月9日)
https://www.understandingwar.org/backgrounder/russian-offensive-campaign-assessment-june-9-2023
9日付『TASS』は、プーチン大統領は、「ロシア軍人の勇気、ロシア製兵器の品質、適切な指揮組織のために、ウクライナ軍は前線での作戦で成功を収めることができなかった」と述べた、と報じています。
「敵はいかなる分野でも成功を収めることができなかった。それはすべて我が国兵士の勇気と英雄的行動、適切な軍隊の組織と管理、そしてロシアの兵器、特に先進兵器の優れた効率のおかげだ」(TASS、9日)
※Ukrainian troops had no success due to courage of Russian servicemen – Putin(TASS、2023年6月10日)
https://tass.com/politics/1630333
振り返ると、ロシア国防省のイーゴリ・コナシェンコフ報道官は5日、ウクライナ軍が4日午前から南ドネツクにある前線の5つの区域で大規模な攻撃を開始したと発表しています。
「6月4日午前、敵は他の軍事部隊や下部部隊の支援を受け、ウクライナ軍戦略予備軍から第23機械化旅団と第31機械化旅団を戦闘に投入し、南ドネツク方面の前線にある5つの区域で大規模な攻撃を開始した」(スプートニク、5日)
コナシェンコフ報道官は「敵は目的を達成できず、成功しなかった」と述べています。
ロシア国防省によると、この戦闘で、ウクライナ軍は人員250人以上、戦車16両、歩兵戦闘車3両、装甲戦闘車21両の損害を被った、とのことです。
※ロシア国防省 ウクライナ軍が大規模攻勢を開始するも失敗に終わったと発表(スプートニク、2023年6月5日)
https://sputniknews.jp/20230605/16193469.html
『CNN』は6日未確認情報として、ロシア国防省が6日、ドネツク州南部での戦闘で、「レオパルト」8両を含む戦車28両と装甲戦闘車109両を破壊と発表したと報じました。
※ロシア、戦車28両と装甲戦闘車109両を破壊と発表 ドネツク州戦況(CNN、2023年6月6日)
https://www.cnn.co.jp/world/35204814.html
8日、セルゲイ・ショイグ国防相は、ウクライナ軍は6月8日の深夜に、ロシア軍のザポリージャ方面の防御の突破を試みたが、ロシア軍がこれを撃退したと発表しています。『スプートニク』が8日報じました。
ウクライナ軍第47機械化旅団は、兵員1500人と装甲車150台で4回にわたる攻撃を行った、とのことです。
ショイグ国防相は、ロシア側はすぐにこれを発見し、「砲撃、空爆、対戦車兵器による先制攻撃を仕掛け、2時間に及ぶ戦闘の結果、ウクライナ軍は戦車30両、歩兵戦闘車11台、最多で350人の人員を失った」と述べています。
※ロシア軍 ザポロジェ方面でウクライナ軍の攻撃を撃退=ショイグ露国防相(スプートニク、2023年6月8日)
https://sputniknews.jp/20230608/16229832.html
さて、では、戦果を水増しすると戦争研究所に言われたロシアのメディアは、どう報じているでしょうか。
9日付『TASS』は、プーチン大統領は、「ロシア軍人の勇気、ロシア製兵器の品質、適切な指揮組織のために、ウクライナ軍は前線での作戦で成功を収めることができなかった」と述べた、と報じています。
「ウクライナの反撃が始まったと絶対の確信を持って言える。戦略備蓄の使用がそれを示している」(RT、9日)
プーチン大統領は、ウクライナ軍は多くの死傷者を出したものの、依然として攻撃力を維持していると述べ、ロシアの司令官が「状況を現実的に評価」し、それに応じて行動することを期待していると述べた、ということです。
プーチン大統領の発言は、上述したISWの報告にある通り、ウクライナ軍による反転攻勢はこれまでとは次元の異なる戦闘であり、ロシア軍にとっても容易な戦いではない、ということを示唆しています。
※Putin comments on Ukrainian counteroffensive(RT、2023年6月9日)
https://www.rt.com/russia/577790-putin-ukrainian-counteroffensive/
10日付『RT』は、コナシェンコフ報道官が、ロシア軍は、キエフ軍による前進の試みを撃退することに成功し、ドイツ製「レオパルト2」4両を含むウクライナ戦車9両を破壊したと発表したと報じました。
コナシェンコフ報道官は、ドネツク人民共和国南部、バフムート(アルチョモフスク)に近い、ザポリージャ地域で、ウクライナの大規模部隊が2度の攻撃をかけ、ロシア軍がこれを撃退したと述べています。
コナシェンコフ報道官によると、ウクライナ軍は戦車9両のほか、米国供給のブラッドレー戦闘車5台、装甲車14台、フランス製シーザー自走榴弾砲1台を含む11台の装甲兵員輸送車を失い、ウクライナ軍の人的損失は最大300名に達しています。
※Four more Ukrainian Leopard 2 tanks destroyed – Moscow(RT、2023年6月10日)
https://www.rt.com/russia/577827-leopard-tank-bradley-ukraine/
10日までの時点では、ウクライナ軍はロシア軍の固い守りに阻まれて、ショイグ国防相やコナシェンコフ報道官の発表が事実だとすれば、かなりの損失を出しています。
戦争研究所は、ロシアが戦果を水増しすると指摘するならば、この具体的なロシアの発表に対して、ウクライナ側の、具体性を欠いた発表とをつきあわせ、客観的な真実の数字はどうなのか、調べて出してもらいたいと思います。
しかし、ロシア側が発表したウクライナ軍の装備を見ても、「レオパルト2」、「ブラッドレー戦闘車」など、これまでにウクライナ軍が多用してきた「ハイマース」などとは、次元の異なる武器で反転攻勢をかけていることがわかります。
戦争研究所の報告にも「これはウクライナの反撃を軽視しようとするこれまでのクレムリンの取り組みとは異なる」とあるように、プーチン大統領の戦況に対する慎重な姿勢にも、戦闘の次元が変わったことへの認識が現れています。
■IWJは緊急事態が続いています! 5月のご寄付額は182万3000円でした! 5月の月間目標額の47%、207万7000円の不足でした! IWJは創業以来、最大の経済的危機に直面しています! 第13期の累積赤字は毎月増え続け、8月から5月まで10ヶ月間の累積の不足額は、1868万2900円となりました! 6月こそは少なくとも月間目標額390万円を達成し、また累積の不足額を少しでも減らせますよう、緊急のご支援・ご寄付・カンパのほど、どうぞよろしくお願いします!
いつもIWJをご支援いただきまして、誠にありがとうございます。
6月に入り、昨年8月1日から始まったIWJの第13期も、残り2ヶ月となりました。
5月のご寄付額の集計が確定致しましたので、ご報告いたします。5月のご寄付額は31日間で、122件、182万3000円でした。月間目標額の47%にあたるご寄付をいただきましたが、残念ながら月間目標額に届かず、月間目標額の53%、207万7000円の不足となりました!
厳しい経済状況の中、ご寄付をお寄せくださった皆さま、誠にありがとうございました!
しかしながら、今期第13期5月末までの累積の不足額は、1868万2900円となりました。この累積の不足額を少しでも削れるように、引き続き、どうぞご支援をお願いします!
6月は9日までの9日間で、44件、86万円のご寄付をいただきました。ありがとうございます!
ぜひ、皆さま、今月6月こそは、まずは月間目標額を達成できますよう、どうぞ緊急のご支援をお願いいたします!
また、現状の会員数をお知らせします。
会員総数は5月末時点での会員総数は2648人(前年同日比:1113人減)でした。会員の方々の会費と、ご寄付が、IWJの運営の二本柱です。ご寄付も、連日お伝えしているように、目標額を下回っていますが、会費も減少しています。経営は本当に赤字です。
厳しい運営状況が続きます。
どうぞ、皆さま、IWJを知人・ご友人、地域の皆さまへIWJの存在をお知らせいただき、独立系メディアの意義とコポーレート・メディアの情報操作の恐ろしさについて、広めてください。
IWJの内部留保も底を尽き、キャッシュフローが不足したため、私、岩上安身が、個人的な私財から、IWJにつなぎ融資をいたしました。
私がこれまでにIWJに貸し付けて、まだ未返済の残高は約600万円。これにつなぎ融資1000万円と合計すると、IWJへの私の貸し付け残高は約1600万円にのぼります。
私の貯えなどたかがしれていますから、この先も同様の危機が続けば、私個人の貯えが尽きた時、その時点でIWJは倒れてしまいます。
皆さまにおかれましても、コロナ禍での経済的な打撃、そしてこのところの物価上昇に悩まされていることとお察しいたします。
しかし、ご寄付が急減してしまうと、たちまちIWJは活動していけなくなってしまいます。IWJの運営は会員の方々の会費とご寄付・カンパの両輪によって成り立っていますが、それが成り立たなくなってしまいます。
ウクライナ紛争に続き、「台湾有事」を口実とする米国の「代理戦争」が、東アジアで画策されている今、私、岩上安身とIWJは、破滅的な戦争を回避すべく、ウクライナ紛争報道で明らかになった、偏向マスメディアの不誠実な「情報操作」に代わるべく、少しでも正確な情報を皆さまにお届けできるよう走り続けたいと存じます。
その結果として、日本が戦争突入という悲劇に見舞われないように、無謀な戦争を断固阻止するために、今後も全力で頑張ってゆきたいと思います。
2月、ピューリッツァー賞を受賞した経歴をもつ、米国屈指の独立調査報道ジャーナリストであるシーモア・ハーシュ氏が、米国が、ノルウェーと協力し、ドイツとロシアを直接つなぐ天然ガスパイプライン・ノルドストリームを爆破したという驚愕のスクープを出しました。日本の新聞・テレビなどのメインストリーム・メディアは、一切このスクープを報じませんでした。
IWJは、全文の仮訳を進め、全4回を号外でお送りしました。
※【IWJ号外】ドイツとロシアを結ぶ天然ガスパイプライン・ノルドストリームを爆破したのは、米国だった! ピューリッツァー賞を受賞した米国の最も著名な独立調査報道ジャーナリスト、シーモア・ハーシュ氏が大スクープ!(その1~4)
https://iwj.co.jp/wj/open/archives/tag/%e3%82%b7%e3%83%bc%e3%83%a2%e3%82%a2%e3%83%bb%e3%83%8f%e3%83%bc%e3%82%b7%e3%83%a5
私は、ロシア軍がウクライナに侵攻して1年となる2月24日の岸田総理会見で、ハーシュ氏のスクープについて岸田総理に直接、質問しました。
私が「日本政府は、このノルドストリーム爆破疑惑について、独自に検証や調査を行なっているのでしょうか?」と質問したのに対し、岸田総理は、「米政府は完全なるフィクションであるという評価をしております」「ノルウェー外務省もナンセンスと言っています」「多くの国においてこうした記事に関しては、否定的な評価がされている」とはぐらかし、日本政府・日本国総理としての独自の判断を示しませんでした。
※【IWJ代表:岩上安身質問】ノルドストリーム爆破疑惑について、日本は独自に検証や調査を行なっているのか?岸田内閣総理大臣記者会見-令和5年2月24日(Movie IWJ)
https://www.youtube.com/watch?v=9uUrTxr_Mss
※はじめに~岩上安身が岸田総理に対して会見で質問!~(日刊IWJガイド、2023年2月25日)
会員版 https://iwj.co.jp/wj/member.old/nikkan-20230225#idx-1
非会員版 https://iwj.co.jp/info/whatsnew/guide/51926#idx-1
このウクライナ紛争は、ロシアを弱体化させるための米国主導の戦争です。
ハーシュ氏のスクープが事実であれば、米国は、同盟国のドイツが多額の出資をしたノルドストリーム・パイプラインを爆破し、ドイツとロシアの仲を引き裂き、ウクライナを戦場にして、欧州とロシアの友好的な関係を完全に破壊し、ロシア産の格安の天然ガスが入らなくなって窮地に陥った欧州に、米国産の高値の天然ガスと石油を売りつけて市場を奪い取ったということになります。
つまり、米国は「敵国」のロシアだけでなく、米国の重要な同盟国であるはずのドイツにも大損害を与えた疑いがあるのです。これが真実であるならば、同盟国への重大な背信であり、裏切りです。犠牲を払わされたドイツと同じく、同盟国とは言いながら、ジュニア・パートナー(主権のない従属国)扱いされている日本も、同じ目にあわされる可能性があります。
IWJでは、独自のIWJ検証レポートによって、ドイツとロシアを直接結ぶノルドストリームの建設を米国政府・議会が何度も妨害してきた事実、そして、完成はしたもののウクライナ紛争の勃発と対露制裁によって使用できなくなり、さらに爆破テロに見舞われるまでの経緯を、お伝えしています
※IWJ検証レポート!「米国が狙った独露間の天然ガスパイプラインノルドストリームの阻止!!」~2022.4.27
(その1)https://iwj.co.jp/wj/open/archives/505188
(その2)https://iwj.co.jp/wj/open/archives/508187
お読みいただければわかりますが、この経緯を知ると、ウクライナ紛争以前から、米国はノルドストリームの完成と開通を何としても阻みたいと思っていたという事実が明らかになります。
岸田文雄総理は、1月早々、昨年末に閣議決定した「改定版安保3文書」を携えて訪米、バイデン大統領と会談し、日本の軍拡をバイデン大統領から賞賛されて鼻高々でした。
国会での議論と承認がなされなくても、米国からの要請があれば、「安保3文書」を閣議決定し、軍拡のアクセルを踏んでしまう岸田政権は、日本の主権を米国に丸投げしたも同然です。米国を守るために日本が身代わりに犠牲となり、日本はウクライナのように、米中の「代理戦争」の戦場とされてしまいます。
上記の4月24日の岸田総理会見で、私は、「米国は誠実な同盟国なのかどうか、疑いの出ている中、日本の安全保障を米国に丸ごと委ねていていいのか」「有事の際の自衛隊の指揮権まで米国に渡してしまっていいのか」と問いました。
岸田総理は「自衛隊及び米軍は、各々独自の独立した指揮系統に従って行動をする、これはいうまでもないこと」などと、自衛隊の指揮権はあたかも米軍から独立して存在しているかのように述べました。
しかし、この総理の発言は、事実と異なります。従来の幕僚長を事実上廃止し、新たに米軍との「統合司令部」を設置する「安保3文書」の改定は、自衛隊を米軍の司令下におく「2軍」にしてしまうものです。
自衛隊が米軍と司令部を統合してしまい、自身で状況判断するための目と耳(情報衛星他)をもたず、独自に判断する頭(内閣に直結し、米国から独立した司令部)をもたない、そんな日本が、安全保障において、米軍から独立した主権をもつ、といくら岸田総理が口先だけで言っても、自衛隊のおかれたリアルな現実を国民に説明していることにはなりません。
3月28日、「安保3文書」の改定を踏まえ、防衛費を大幅増額した2023年度予算案は、政府案どおり成立しました。
※令和5年度予算(財務省)
https://www.mof.go.jp/policy/budget/budger_workflow/budget/fy2023/fy2023.html
日本は、このまま米国追従を続け、米国の単独一極覇権を支えるために、日本自らは世界最悪の財政危機に直面しているというのに、米国の要請に従って、軍拡という重い財政負担を背負うのはあまりに愚かではないでしょうか!?
ノルドストリームの爆破事件については、その後、新たな進展がありました。
米『ワシントン・ポスト』が6月6日、「米国はノルドストリーム・パイプラインを攻撃するウクライナの詳細な計画の情報を(事前に)持っていた」とするスクープを出しました。同日、『ニューヨーク・タイムズ』が後追い記事を出しています。
『ワシントン・ポスト』は、ノルドストリームを爆破したのは、ウクライナ軍の総司令官であるザルジニー将軍直属のウクライナ軍の一部であり、米政府はその爆破計画を事前に知っていたと報じたのです。
しかし、ザルジニー将軍は現在消息不明、頭部を負傷して職務に復帰するのは困難などと伝えられ、このスクープ記事にコメントできる状況にありません。
しかも、『ワシントン・ポスト』によれば、ノルドストリーム爆破計画は、ゼレンスキー大統領には知らされていなかったというのです。
つまり、この両紙にリークしたそれぞれの情報源は、他人事のように「米政府は事前にウクライナの爆破計画について知っていた」とすることで、ウクライナ側に責任をすべて負わせ、シーモア・ハーシュ氏が暴露した「米国主犯説」を否定し、かつ、米国の望むままに紛争をエスカレートするゼレンスキー大統領を温存するもので、「主犯」役扱いのザルジニー将軍は消息不明で弁明もできません。この点は、まさしく「死人(負傷者?)に口なし」です。まことに米国に都合のよいストーリーになっています。
ただし、仮にこの説が真実に近いとすると、米国は主犯ではなくても、無関係だった、無実だ、とは言えなくなります。
事前に爆破計画を知っていながら、米政府はこの情報を秘匿し、ウクライナにテロをやめるように働きかけず、黙認したことになります。
実際に爆破が起きた後は、誰が主犯か知っているというのに、米国政府は、「ロシアが自作自演の爆破を行なった」という、自国の資本を投じたロシアにとって何のメリットもない、まったくの濡れ衣を着せるデマ宣伝を続けたのです。
これは西側政府や西側各国のマスメディア、御用知識人等々に大きな影響を与え、馬鹿馬鹿しいロシア自作自演説を喧伝する記事や番組、コメントなどが今に至るまで、溢れかえりました。
『ワシントン・ポスト』のスクープは、ザルジニー将軍による爆破計画や実施の詳細も曖昧で、情報源は「あるウクライナ人」といった調子で、雲をつかむような内容でした。
いずれにしても、この両紙のスクープによって、ハーシュ氏が彼の記事に書いた米国の犯行加担の疑惑が消えたわけではなく、ウクライナの犯行という疑惑も変えたわけではありません。両国の共犯という可能性もあり得るからです。
IWJは検証記事を号外で出しています。どうぞこちらもお読みください。
※【IWJ号外】米『ワシントン・ポスト』が、「米国はノルドストリーム・パイプラインを攻撃するウクライナの詳細な計画の情報を持っていた」とスクープ! IWJはスクープ記事を全文仮訳! 2023.6.8
https://iwj.co.jp/wj/open/archives/516462
※『ワシントン・ポスト』の報道を受けて『ニューヨーク・タイムズ』が援護射撃?!「ペンタゴン・ペーパーズ」の再現か!? 姑息な情報操作の連鎖か!? いずれにしてもノルドストリームを爆破して、ロシアの自作自演という嘘をついてきたのは米国かウクライナのどちらか、あるいはその両方。米国とNATO諸国政府が爆破計画を事前に知っていたことは否定できず!(日刊IWJガイド、2023年6月8日)
会員版 https://iwj.co.jp/wj/member.old/nikkan-20230608#idx-4
非会員版 https://iwj.co.jp/info/whatsnew/guide/52371#idx-4
そもそも日本が依存している米国は、誠実な、信頼に値する同盟国といえるのでしょうか!?
4月12日の日刊IWJガイドの記事(※)も、ぜひあわせてお読みください。米国は、同盟国に対して、当たり前のように盗聴を仕掛けています。ドイツなどは米国政府に抗議しましたが、日本政府は、まったく抗議していません。
※『ニューヨーク・タイムズ』が報じた、ウクライナ紛争をめぐる米国とNATOの戦争機密文書漏洩事件! 漏洩文書に韓国政府内の議論が含まれていたことから、CIAによる韓国国家安保室盗聴が発覚! 謝罪を求めない尹政権に韓国与党も「卑屈極まりない」と批判! 2013年のスノーデン氏による盗聴暴露問題も再燃し、米国のダブルスタンダード、繰り返される同盟国への盗聴に韓国メディアが猛批判を展開! 日本も盗聴されているはずだが、沈黙し続けるのか!?(日刊IWJガイド、2023年4月12日)
会員版 https://iwj.co.jp/wj/member.old/nikkan-20230412#idx-1
非会員版 https://iwj.co.jp/info/whatsnew/guide/52117#idx-1
日本は、米国への依存から脱却をはかり、独立した主権国家として立つべきです。同時に、エネルギーと食料の自給ができず、資源をもつ他の国々からの海上輸送に頼らなければならない「島国」であるという「宿命」を決して忘れず、国外にそもそも「敵」を作らない、多極的な外交姿勢をめざすべきではないでしょうか?
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口座番号 3080612
口座名 株式会社インディペンデント・ウェブ・ジャーナル カンリブ
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岩上安身
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◆中継番組表◆
**2023.6.11 Sun.**
あくまで予定ですので、変更、中止、追加などがある場合があります。また電波状況によっては、安定した中継ができない場合もございますので、ご了承ください。
【IWJ・エリアCh3・大阪】13:30~「沖縄戦から78年『たかう人びとに学ぶ』6.11 集会 ―講演:明有希子氏(元緑ヶ丘保育園父母会副会長)、前泊博盛氏(沖縄国際大学教授)」
視聴URL: https://twitcasting.tv/iwj_areach3
「共同テーブル近畿」主催の集会を中継します。これまでIWJが報じてきた沖縄戦関連の記事は以下のURLから御覧いただけます。
https://iwj.co.jp/wj/open/archives/tag/%E6%B2%96%E7%B8%84%E6%88%A6
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◆中継番組表◆
**2023.6.12 Mon.**
調整中
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■独裁者プーチン個人さえ取り除けばロシアを抑え込める、という低俗なプロパガンダへの、今でも有効な反論! ロシアには、プーチンの比ではない、わからず屋の過激派が山ほど存在する!<岩上安身『あらかじめ裏切られた革命』復刻連載(その66)>第四部 自由という災厄「第十二章『ジリノフスキー現象』を読み解く ―― 一九九三年十二月 ――」(Part5)
岩上安身は、1989年から1994年まで、29歳から35歳まで、足かけ6年かけて、崩壊前夜のソ連から、ソ連崩壊後の「民主ロシア」誕生の裏面まで、現地で取材しました。
現地取材をまとめた著書『あらかじめ裏切られた革命』(1996年、講談社、講談社ノンフィクション賞受賞作)は、当時のソ連・ロシアの実態を記録した貴重な資料ですが、残念ながら絶版となっており、入手困難な状況となっております。
ウクライナ紛争の長期化、そして西欧諸国が世界を支配してきた構造、米国による一極支配構造に揺らぎが見え始めた今こそ、改めて1991年のソ連崩壊前後に戻って、歴史を振り返る必要があると思われます。日刊IWJガイドで、『あらかじめ裏切られた革命』の復刻連載を進めていきます。ぜひお読みください。
下記URLから、初回の復刻連載(その1)をお読みいただけます。
※<岩上安身『あらかじめ裏切られた革命』復刻連載(その1)>序文「ゴーリキーパークの世界精神」(日刊IWJガイド、2022年11月20日)
会員版 https://iwj.co.jp/wj/member.old/nikkan-20221120#idx-4
非会員版 https://iwj.co.jp/info/whatsnew/guide/51557#idx-4
直近の復刻連載は、下記URLからお読みいただけます。
※<岩上安身『あらかじめ裏切られた革命』復刻連載(その64)>第四部 自由という災厄「第十二章 『ジリノフスキー現象』を読み解く ―― 一九九三年十二月 ――」(Part3)
会員版 https://iwj.co.jp/wj/member.old/nikkan-20230529#idx-6
非会員版 https://iwj.co.jp/info/whatsnew/guide/52336#idx-6
※<岩上安身『あらかじめ裏切られた革命』復刻連載(その65)>第四部 自由という災厄「第十二章 『ジリノフスキー現象』を読み解く ―― 一九九三年十二月 ――」(Part4)
会員版 https://iwj.co.jp/wj/member.old/nikkan-20230604#idx-5
非会員版 https://iwj.co.jp/info/whatsnew/guide/52358#idx-5
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◆ロシア自民党の機密文書を読む
ジリノフスキーは「嫌われ者」だが、同時に「人気者」でもある。冗談好きのロシア人は、眉間に皺を寄せてファシストの台頭を憂える一方で、腹の中では「コミカルな狂人」の八方破れのふるまいを、くすくす笑いながら面白がっている節がある。
その証拠に、ジリノフスキーを題材にした笑い噺(アネクドート)がさっそくつくられた。たとえばこんな噺。
ギャングがジリノフスキーを誘拐し、一千万ドルの身代金を要求した。法外な要求をつきつけられたエリツィンは、弱ってギャングに言う。
――我々は、そんな大金を支払うことはできない。
ギャングの答え。
――それなら、ジリノフスキーを釈放するぞ。仕方がないだろう、支払えないあんたが悪いんだ!
もうひとつ、こんな噺も。
――どうして、中央プールは閉鎖されているの?
――今、プールを使ってヘジリノフスキーの肖像写真を現像しているからさ(独裁者になったときのために、巨大な写真を準備中というギャグ)。
ロシア人は昔から政治家をからかう冗談が好きだが、ジリノフスキーは、久々に現れた格好の素材らしい。ロシアで最も人気のあるユダヤ系コメディアンのハザーノフも、この得がたいキャラクターを素材に数々のギャグをテレビで飛ばしている。それを見て、当のジリノフスキー本人がまた、「自分が大統領になったときに処刑してやる人物のリストを作っているが、その第一番目はハザーノフだ!」と激怒する始末で、それがまたいいお笑いのネタとなる。
一事が万事、こんな調子なので、ジリノフスキーの「放言」を、「良識」ある人であればあるほど、政治的ピエロのたわ言として片づける傾向が強くなる。それはロシア国内だけでなく、西側も同じである。「ヒトラーの再来か、それとも希代の道化師か」。ジリノフスキーに対する評価は、この二つの極をめぐって揺れ動き、その像は容易に定まらない。マスメディアばかりでなく、各国政府もどう対応していいものか、迷うばかりだ。
「日本とドイツヘの原爆投下」という過激発言は、選挙直後にクローズアップされて、すっかり有名になったが、こんな発言は今にはじまったことではない。
二年前の九二年三月、私のインタビューに答えて、「日本が北方領土を要求するなら、逆に北海道を占領してやる。もし米国が介入してきたら、米国とも戦争だ! 核戦争、やってやろうじゃないか!」とまくしたてていたくらいである。今さら驚くにはあたらない(第九章)。
むしろ問題だと思うのは、彼の発言の内容そのものではなく、こうした彼の狂暴にしてしかも滑稽な放言や奇行に対してまともにとりあおうとはせず、「大人」になって一笑に付す、といった日本政府や大マスコミ、一部の知識人の姿勢である。彼らの「余裕」の姿勢の背後には、ジリノフスキー個人と、ジリノフスキー現象とを混同することから生じる、重大な事実誤認があるように思う。
日本のあるテレビ番組で、著名な政治学者がロシアの選挙結果について「心配する必要はない」と断言し、こう解説していた。
「ロシア自民党が第一党になったといったって、あれは比例区だけの話で、地方区では全然、議席をとれていない。最終的に下院で占める議席総数はたいしたことない」
これは、最も典型的で、しかも初歩的な間違いの一例である。地方区で勝てなかったから「心配しなくていい」のではない。地方区で勝てなかったのは、全国各区に候補者を立て、選挙運動を展開するだけの組織力がなかったからである。ロシア自民党は、組織の規模としては実質的にモスクワの本部だけのミニ政党なのであり、地方区に候補者すらまともに立てられない、そんな泡沫政党が、比例区で圧勝してしまったことこそが大問題なのである。
この政治学者ひとりが、ピントはずれなことを言っているわけではない。大新聞の解説記事も大同小異で、「ジリノフスキー現象」を過小評価する傾向にある。
少しは考えてもらいたい。ロシア自民党の武器は、自己顕示欲旺盛な党首のパフォーマンスだけなのである。彼はテレビ演説を通じ、舌先三寸のみで比例区第一位の票を獲得してしまったのだ。もしこれが大統領選だったら、間違いなく今頃、核超大国の指導者の座に、あのプロレスの悪役(ヒール)のような男が君臨していたはずなのだ。過小評価論者には、そのことの重味が理解できていない。
他方、過小評価とは正反対の、ジリノフスキーという個人に対する過大評価も一部には存在する。私はこれにも与(くみ)しない。たしかに、興味深い人物ではあるが、彼には瑕疵(かし)が多過ぎる。選挙の直後から、いわゆる「民主勢力」は、彼のイメージ失墜を狙ってスキャンダルを次々と暴き出し、攻撃を加えている。ゴルバチョフの懐刀としてペレストロイカを指導したアレクサンドル・ヤコブレフが社長に就任してからのオスタンキノ・テレビは、とりわけ熱心だ。
たとえば彼の出自について。反ユダヤ主義的な言辞をふりかざしてはいるものの、実はジリノフスキー自身がユダヤ系ではないかとは、以前からささやかれていたことだった。微妙な問題をはらむこのテーマにも、選挙後ただちにメスが入れられた。
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■<今週の新記事振り返り>
【IWJ号外】対露制裁はまったく効果なし!! ロシアを現地視察してきた元国連兵器査察官のスコット・リッター氏「ロシアは経済的な復活を遂げつつある」、対露制裁は逆に米国の覇権崩壊を加速! 2023.6.3
https://iwj.co.jp/wj/open/archives/516374
「判決で、なぜ夫が追い詰められたのかがわかる資料の開示を期待する」赤木雅子氏~6.2 財務省による森友文書「不開示決定」に対して赤木雅子氏が取り消しを求めた裁判の結審後の記者会見 2023.6.2
https://iwj.co.jp/wj/open/archives/516365
「中国・香港から台湾に国際メディアや研究者、言論人が避難してきて知的コミュニティが台湾に移ってきている感がある」~5.29「香港、台湾、そして中国から見る東アジアの21世紀」―講演:野嶋剛氏(大東文化大学社会学部教授)2023.5.29
https://iwj.co.jp/wj/open/archives/516261
石橋湛山政権が長期化し、自民党内の宿敵・岸信介政権の誕生を阻んだら、日本は全く違った国家になっていた!? ―6.1 超党派石橋湛山研究会<第1回勉強会>―登壇:リチャード・ダイク氏(米日財団理事)2023.6.7
https://iwj.co.jp/wj/open/archives/516414
【IWJ号外】米『ワシントン・ポスト』が、「米国はノルドストリーム・パイプラインを攻撃するウクライナの詳細な計画の情報を持っていた」とスクープ! IWJは記事をスクープを全文仮訳! 2023.6.8
https://iwj.co.jp/wj/open/archives/516462
東京都下の水道水が危ない! 市民団体が多摩地域住民650名分の血中PFAS濃度調査を最終報告! 全体の半数が米国指針値超え!~6.8「多摩地域のPFAS汚染を明らかにする会」記者会見 ―報告:原田浩二 京都大学准教授ほか 2023.6.8
https://iwj.co.jp/wj/open/archives/516456
「『ロシアとどうやって停戦していくか、一日でも早く休戦できるか』ということを考えろと、ゼレンスキーに言いたい」~6.4 シンポジウム 平和を求め軍拡を許さない女たちの会「安全保障のジレンマ」2023.6.4
https://iwj.co.jp/wj/open/archives/516370
ウクライナ南部ヘルソン州のカホフカ水力発電所ダムの決壊について、「ロシアの侵略がなければ、今回の事態は起こらなかった。ロシアによる侵略の停止とウクライナからの撤退を改めて強く求める」と林大臣~6.9 林芳正 外務大臣 定例会見 2023.6.9
https://iwj.co.jp/wj/open/archives/516483
■<今週の日刊IWJガイド振り返り>
日刊IWJガイド「IWJは創業以来、最大の経済的危機に直面しています! 緊急のご支援・ご寄付・カンパのほど、どうぞよろしくお願いします!」2023.6.4号~No.3916号
会員版 https://iwj.co.jp/wj/member.old/nikkan-20230604
非会員版 https://iwj.co.jp/info/whatsnew/guide/52358
日刊IWJガイド「日本の大手メディアが『反転攻勢の準備が整った』というゼレンスキーの言葉をうのみに一斉報道!! 元ネタをIWJが検証!」2023.6.5号~No.3917号
会員版 https://iwj.co.jp/wj/member.old/nikkan-20230605
非会員版 https://iwj.co.jp/info/whatsnew/guide/52361
日刊IWJガイド「5日午前の日経平均株価が一時3万2000円台へ! バブル崩壊後の最高値!! 都心の不動産価格も高騰! 不況下でバブル再来の異常!?」2023.6.6号~No.3918号
会員版 https://iwj.co.jp/wj/member.old/nikkan-20230606
非会員版 https://iwj.co.jp/info/whatsnew/guide/52364
日刊IWJガイド「ロシア国内での相次ぐテロ攻撃は、ウクライナがロシア国内の親ウクライナ派工作員を養成し、無人機を提供して攻撃を仕掛けさせていた!」2023.6.7号~No.3919号
会員版 https://iwj.co.jp/wj/member.old/nikkan-20230607
非会員版 https://iwj.co.jp/info/whatsnew/guide/52369
日刊IWJガイド「『ワシントン・ポスト』のスクープを『ニューヨーク・タイムズ』が無検証で後追い! カホフカ・ダム爆破テロはロシア? ウクライナ?」2023.6.8号~No.3920号
会員版 https://iwj.co.jp/wj/member.old/nikkan-20230608
非会員版 https://iwj.co.jp/info/whatsnew/guide/52371
日刊IWJガイド「参議院法務委員会で入管法改悪法案が強行採決! 改正案の立法事実は崩壊! その立法事実崩壊の中心人物、柳瀬房子・難民審査参与員とは!?」2023.6.9号~No.3921号
会員版 https://iwj.co.jp/wj/member.old/nikkan-20230609
非会員版 https://iwj.co.jp/info/whatsnew/guide/52374
日刊IWJガイド「カホフカ・ダム破壊について、その犯人をロシアだと決めつける『情報操作』が進行中!」2023.6.10号~No.3922号
会員版 https://iwj.co.jp/wj/member.old/nikkan-20230610
非会員版 https://iwj.co.jp/info/whatsnew/guide/52377
■【編集雑記 梅雨真っ只中、どうぞご自愛ください】
梅雨真っ只中となりました。晴れたり曇ったり、気温も15度前後から30度近くまで乱高下し、身体のだるさやなんとはなしの不調を感じていらっしゃる方も多いことかと思います。どうぞご自愛ください。
昨年亡くなった詩人の清水哲男さんが主宰していた『増殖する俳句歳時記』を読んでいて、美しい一句に出会いました。1978年の句だそうです。
かたつむりたましひ星にもらひけり 成瀬櫻桃子
句の解釈、作者の身辺事情などについては、『増殖する俳句歳時記』をお読みください。
※かたつむりたましひ星にもらひけり(増殖する俳句歳時記、2001年5月22日)
https://www.longtail.co.jp/~fmmitaka/cgi-bin/g_disp.cgi?ids=19970807,19980120,19990528,20010312,20010522,20020613,20041228,20050411&tit=%90%AC%90%A3%9FN%93%8D%8Eq&tit2=%90%AC%90%A3%9FN%93%8D%8Eq%82%CC
気だるい6月ですが、梅酒や梅干しを漬けたり、白い花が可愛らしいドクダミを漬けてドクダミ・チンキをつくるといった楽しい仕事の時期でもあります。店頭に出ている梅はもう黄色く熟していますが、梅シロップやジャムには好適です。昨年漬けたものをいただくと、1年間という時間の堆積を味わうような嬉しい心持ちがします。
それでは、本日も1日、よろしくお願いします。
※日刊IWJガイドのフルバージョン(会員版)は下記URLより御覧ください。
https://iwj.co.jp/wj/member.old/nikkan-20230611
IWJ編集部(岩上安身、六反田千恵)
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