大阪・関西万博失敗の原因は、簡単に空き地(夢洲)を活用しようとした、短期的利益の追求! 開催の動機そのものが、IRの誘致にしかなく、ファスト化していること!! 岩上安身によるインタビュー第1205回ゲスト 一級建築士・建築エコノミスト森山高至氏(第3回)後編 2025.8.22

記事公開日:2025.9.10取材地: テキスト動画独自
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(文・IWJ編集部)


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 2025年9月11日、「岩上安身によるインタビュー第1205回ゲスト 一級建築士・建築エコノミスト森山高至氏(第3回)後編」を初配信した。

 インタビューの後編は、森山氏の新著『ファスト化する日本建築』(扶桑社新書、2025年4月)から、「戦後・日本の住宅建築における『ファスト化』に至る経緯と要因」というテーマでの検証から始まった。

 この章では、首都圏への一極集中で、地価が高騰し、バブル期の地上げによって廉価な賃貸住宅が喪失したことや、金融商品としての住宅投資、少子高齢化と職人不足による建設費の高騰といった問題から、日本の林業の衰退による環境維持能力や治水能力の低下といった問題についてまで、森山氏に詳しく解説していただいた。

 続いて、森山氏も1章を執筆した『大阪・関西万博「失敗」の本質』(ちくま新書、2024年8月)から、「夢洲(ゆめしま)でIRを本気でやろうとしているのか非常に疑問である」というテーマで、森山氏の指摘を振り返った。

 森山氏は、「もともと、IRでこんなことをやると言って発表された」というポンチ絵をパワポで示し、「全然、今、こんなことじゃないでしょ」と、次のように指摘した。

 「巨大なビルを作って、こんなモノレールみたいなのを走らせるみたいな、こんな絵が発表されていたんですよ。地下鉄の駅も、こんなターミナルを作ってとか。

 だから、これだけの大都市にするという前提で、言ってたわけでしょう。

 気持ちだけでもいいじゃないですか。『こんな大都市にするんだ!』『どうやって?』ってことだけれども、こんな絵すら、もうないんですよ、今は」。

 続いて森山氏は、ゴミの埋立地である夢洲の「土地と水の汚染問題」について、以下のように指摘した。

 「結局これは、ずっとゴミを捨て続けてきているんだけども、廃棄物の法律が厳しく変わる前から埋めていますから、当時はOKだったものも埋まってるんですよ。

 それと、非常に危険なPCB(ポリ塩化ビフェニル)が置いてあるエリアがあるから、本当は、慎重に扱わなきゃいけない場所であるということです。地盤が弱い、ということだけじゃなくて」。

 さらに森山氏は、夢洲の地盤が、土地の強さを表す「N値」がゼロであることを指摘し、次のように述べた。

 「N値がゼロということは、(建築物を建てる際に、固い地盤支持層まで届く)杭を打つしかない。(中略)

 (ところが)万博のパビリオンの募集要項に書いてあることなんだけど、とりあえず『杭を打てよ』、で、『(万博終了後は)この杭を抜けよ』って書いてあるんです。

 でも杭を抜くのはすごくたいへんで、すごくお金もかかるので、こんな一時的な建築物で、杭を打って、なおかつ抜くというのは、本当にナンセンス。だからみんな、杭を打たなくなっちゃったんです。木造リングの一部だけ、杭を打っているけど。

 で、杭を打たない方法は何かっていうと、土を掘って、その掘った部分で、船のように浮かせろよという。

 だけど、この深さを、『2.5メートルしか掘るな』と言っているんですよ。3メートルしか、盛土していないから。

 でも、2.5メートルしか掘れないということは、地下室にもならないから、何のための基礎なのか。

 結局、どうしてるかというと、発泡スチロールを埋めて作っているんですけど」。

 森山氏は、万博パビリオンのほとんどが採用した、発泡スチロールを使った工法について、「地下水が上がってくると浮いちゃうから、建物の設計は、バランス取るのがたいへん難しい設計になってしまう」と指摘した。

 このほか、万博会場の建設には、建築労働者の労働時間規制の問題や、夢洲への流通ルートの問題、橋の強度の問題など、多くの問題があったことを解説した。

 続いて森山氏は、大阪・関西万博について、「イベント後の都市の発展性をまったく見通せていない」と指摘し、「今回の国政イベント(※万博)の失敗の原因は、簡単に空き地活用と考えた短期的利益の追求が、IRの誘致にしかなく、開催の動機そのものがファスト化していること」だとして、次のように批判した。

 「(維新の政治家が)任期中に答えを出したい、みたいな考えが問題だと。

 政治家というのは、任期中にできないこと言わなきゃ。50年後にこうなる、100年後にこうなるということを考えなきゃいけないのに、そういうことをやってないっていう話ですよ。(中略)

 利権のレベルが低すぎるという話。だから、都市が発展しない。

 だって、任期中に決まる話というのは、結局、建設屋からの献金ぐらいで終わっちゃうじゃないですか。しかも、大手ゼネコンじゃないんだよ。大阪だけでやってるような、ちっちゃな中小ゼネコンの献金で終わっちゃうわけでしょう。そんなの利権でも何でもないですよ」。

 このあと、インタビューは、「夢洲は、都市の孤島である」「夢洲への投資が、都市計画としてどう間違っているのか」「夢洲の万博会場とひらかたパーク(※明治時代に前身が開業した遊園地)を比較してみます」「万博の正解・IRの正解」といった内容で、森山氏にお話をうかがった。

■ハイライト

  • 日時 2025年8月22日(金)午後3時~
  • 場所 IWJ事務所(東京都港区)

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