2025年5月26日、「『いのち脅かす』大阪・関西万博が開催中! 地盤沈下や液状化、そして夏には落雷事故のリスクもある『維新』の祭典は、今も有毒ガスが噴出するゴミ捨て場が会場! 岩上安身によるインタビュー第1191回ゲスト 一級建築士・建築エコノミスト 森山高至氏 第1回」を初配信した。
森山氏は、2025年4月に新著『ファスト化する日本建築』(扶桑社新書)を上梓した。同書で森山氏は、建築業界にも「早い・安い・簡単」という「ファスト化」が広がった結果、多くの深刻な問題が起きていることを指摘している。
そして同書で森山氏は、大阪・関西万博についても、軟弱地盤の問題をはじめ、建築家の視点から、さまざまな問題点に警告を発している。
岩上安身は2017年と2018年に、築地市場の豊洲移転問題について、森山氏にインタビューを行った。
5月26日に初配信した、岩上安身による森山高至氏インタビューの第1回目では、主に大阪・関西万博の会場である、大阪湾の人工島・夢洲(ゆめしま)の土壌問題について、話をうかがった。
夢洲は、大阪市が1977年に、建設残土や一般ゴミの処分場として、埋め立てを開始した。
ゴミ処分場の環境問題について、森山氏は、これまでほとんど報じられていない問題点を指摘した。
「あそこ(夢洲)は、産業廃棄物をまだ捨てていて、『もういっぱいになったから、土地にしましょう』というのではなくて、まだまだ捨てられる余地があったんです。なのに、万博会場にするからというので、途中で捨てるのを止めちゃったんです。(中略)
昔は家庭ごみとかもあったと思うんですけど、途中から法律も整備されましたから、何でもかんでも捨てているわけじゃないんです。
浚渫土とか、建設残土とかも、捨てているんですけれども、環境系の人が一番問題視しているのは、PCB(ポリ塩化ビフェニル)が埋めてあるんですよ。
PCBというのは、かつては『魔法の油』って言われて、燃えない油だから、日本の産業界のいろんなところでいっぱい使われていた(熱に強く、絶縁性が高いことから、変圧器・コンデンサなどの電気機器や、塗料、接着剤などに使用されていた)ものなんだけど、ある時これが、生物に害があるとわかって(日本では1974年に製造・輸入が禁止された)、分解しない(化学的安定性が非常に高く、環境中で分解されにくい)からどうしようといって、埋めてあるものなんです。
出てこなきゃいいですけれども、これが出てくると、それを摂取した生物には、また問題が出る(食物連鎖を通じて生物体内に蓄積されると、神経毒性が高く、肝障害、発がん性、胎児への影響などが確認されている)」。
また、もともと廃棄物処分場であり、しかも地盤が固まりきっていない夢洲では、今後も30年近くにもわたって、地盤が沈下して、固まっていく過程で、地中からメタンガスや硫化水素などが噴出し続け、地上に構造物を建てれば、地盤沈下や液状化によって、建物がゆがんだり、崩れたりするリスクも指摘されている。
地盤沈下について、森山氏は、次のように、一般にはあまり知られていない事実を明らかにした。
「関空(関西国際空港)も埋立地なんですよ。関空もやっぱり沈み続けていて、沈下量はだんだん小さくはなってるんですけれども、まだ毎年沈んでいるんです。
だから、関空の第2ターミナルだったかな? 新しくつくったターミナルの根元って、鉄骨のボルトがむき出しで、鉄板が重ねてあるんですよ。
それは、沈むたびに調整しているんです。高さ調整を、毎年やっているんです。そうできるような建築にしてあるんです(2025年にリニューアルされた関空の第1ターミナルビルでは、地盤沈下による建物の傾きを修正するため、柱の下にフィラープレートという鉄板を挿入するジャッキアップ工法が採用されている)」。
夢洲は、関空よりも「若い(埋め立て後の年月が浅い)土地」だと述べた森山氏は、「何かを建てるなら、そういう工夫が必要」だと指摘した。
夢洲は、万博終了後に、IR(カジノを含む統合型リゾート)が誘致されることが決まっており、夢島ではすでに、万博会場の外で、IRの工事が始まっている。
これについて森山氏は、現在、始まっている工事は、「地盤改良の工事だと思います」との見方を示し、次のように語った。
「元々は、『IR業者が何もかも面倒を見てくれるんですよ』と、『大阪府、大阪市は家賃をもらうだけですよ』と、松井さん(元大阪維新の会代表の松井一郎元大阪市長)達も言っていたけど、今は逆に、『(地盤に問題があるなら)行かねえぞ』と業者側に脅されながら、『あれもやれ、これやれ』と、(地盤改良工事を)やらされている状態なのでしょう」。
さらに森山氏は、同じ埋立地でも、東京の豊洲と大阪の夢洲の違いを、次のように解説した。
「豊洲市場の土地は、土壌処理を最大限やってるんですよ。土地に対してできることは、全部やっているんです。
お金もめちゃめちゃかけているし。
それでも、やっぱりちょっと、地下水が上がってるよねって話にもなっている。
あそこは、もともと(東京ガスの)ガスの製造工場だったから、どちらかというと、化学的な、ケミカルな物質が出るんです、六価クロムとか。
だから、それを吸って、即座に被害が出るようなもの(メタンガスや硫化水素)は、あんまり出ない。(土壌処理を)ガンガンやってあるし。
だけど夢洲での万博は、短期イベントだから、そんなことを何もやってないわけですよ。だって短期のイベントで、あとは更地に戻すでしょ。
だからそんなお金もかけてないし、こういうこと(昨年3月に起きたガス爆発事故)が起こるのは、しょうがないですよ。
だから、メタンガスはバンバン抜かなきゃいけないんです。何か所も」。
森山氏は、「夢洲も、ガス抜きをやっているんだと思うけど、万博会場ということもあって、あまりガス抜きパイプを表に見せたくないんじゃないか」と述べ、「火気厳禁にした方が早い」と指摘した。
しかし、喫煙できる場所を2ヶ所にしぼっても、実際には守らず、喫煙所ではない場所でタバコを吸い、ポイ捨てをする人々の姿が目撃され、写真等も撮られて、SNSなどで拡散されている。会場内のどこであれ、危険な行為である。
一方、SNSでは、「(大屋根)リング上で、羽虫が固まりになって飛んでくる」「蚊柱みたいなものが、たくさん見られた」「肌にまとわりつき、口や鼻にも入ってくるくらいで、手で振り払って進まなければならないほど」といった声があがり始めている。
これについて森山氏は、「おそらくユスリカでしょう」と述べ、「水が溜まっていると、その溜まり水の中に幼虫がいて、水中の有機物を食べるので、それが大量発生しちゃうんですよ」と語った。
森山氏によると、大阪湾を含む瀬戸内海は、環境基準が厳しく、「瀬戸内海法」(1973年制定。正式名称は瀬戸内海環境保全特別措置法)によって、排水が厳しく規制されているため、大屋根リング内側の「ウォータープラザ」と呼ばれる水域の水は、循環していないとのことである。つまり、ため池状態になっているというわけだ。
本来ならば、浄化して、外に水を流し、新たな水を入れて、循環させるようにすべきなのだが、そうしたことは行われていない。
森山氏は、「ここ(「ウォータープラザ」)にあるのは、(埋立地の)廃棄物で汚れた水ですから」と述べ、次のように解説した。
「ドブになってるわけで、そこは結局、太陽光が当たると、いわゆる赤潮じゃないけれども、プランクトンが発生して、アオコが発生して、だんだん水が汚れてきます。
汚れた水というのは、そこには栄養分があるわけだから、こういう虫がどんどん育つ。もう、どんどん悪循環でしょう」。
森山氏は、「これ(虫)は、これからますます増えるのは、間違いない」と述べ、「対策方法は、もう水を外に出して干すか、殺虫剤というか、幼虫が成虫にならないように阻害するような、ドブ川とか溜池で水中に投入する薬品があるんですけれども、それをやるかですよね」と語った。
森山氏は、「これも結局、『映え』なんです」と述べ、「安芸の宮島みたいに、この木の柱が、水面から立っていて、それが水面に映ったらかっこいいぞということで、(勢いで)作っちゃったんです。そこから虫が出るとかは、何も考えてない」と、厳しく批判した。
さらに森山氏は、いずれ、ユスリカを食べるコウモリがやってくるようになるだろう、虫を餌にする魚を入れても、水温や水かさが少なければ死んでしまい、その時にはハエがわくだろうと述べた。
露天でも食事をしなければならない来場客にとっては、不衛生になる。
なお、森山氏へのインタビューは、このあと、2回、3回と続くので、ぜひご注目いただきたい!