新国立競技場、新設よりも改修を──伊東豊雄氏の改修案発表を受けてシンポジウムが開催される 2014.5.12

記事公開日:2014.8.28取材地: テキスト動画
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(IWJ・松井信篤)

特集 新国立競技場問題
※ 本記事は、2014年5月15日にアップした記事を再掲したものです

 新国立競技場の建設のため、現在の国立競技場の解体工事が7月から始まる予定である。5月末には、「SAYONARA国立」というイベントが行われる。新国立競技場のデザインは、昨年11月に行われた国際コンペで、イラク出身の建築家ザハ・ハディド氏の案が選ばれた。

 しかし、この案に対して、多くの専門家や知識人から様々な問題が指摘されている。5月12日(月)、昨年プリツカー賞を受賞した建築家の伊東豊雄氏、人類学者の中沢新一氏、建築エコノミストの森山高至氏、建築史家で京都工芸繊維大学教授の松隈洋氏がシンポジウムを開催した。

■ハイライト

  • 18:00~19:00 記者会見 / 19:30~21:30 シンポジウム
  • 登壇 中沢新一氏(人類学者、明治大学野性の科学研究所所長)、伊東豊雄氏(建築家、RIBAゴールドメダル、プリツカー賞受賞者)、森山高至氏(建築エコノミスト)、松隈洋氏(建築史家、京都工芸繊維大学教授)

改修案の提案

 中沢氏は、現在の国立競技場を改修することが、最もリーズナブルだという理由からのみならず、「将来の世代に対して私達が何を創り残しておくかという責任」の観点からも、「最も正しい道だ」と断言する。そして、改修案が実現すれば、2020年東京オリンピックがこれからの建築や文化についてのひとつの思想を提示する最もよい場所になると主張した。

 ザハ・ハディド氏の新国立競技場案は、景観が損なわれることや、莫大な建設費と維持費が掛かるということが指摘されている。伊東氏は、コンペから一年半が経過しているのに最終案が一般には全く知らされておらず、市民の意見が反映されるようなプロセスがないことに危惧した。

 伊東氏は国立競技場改修案を発表した。伊東氏が提案した改修案は、既存メインスタンドの一部を撤去してレーンの改修を行い、メインスタンドを8万人規模に増やすものだ。ほかに、既存部分の耐震改修や、スタンド西側の屋根の新設が含まれている。コストの試算は出していないとしながらも、本体工事はハディド氏の案の半分ぐらいでできる印象だと語った。?

 森山氏からは、レアル・マドリッドのホームスタジアムや2006年トリノオリンピックの会場など、世界のスタジアムの改修事例が紹介された。今、築50から100年の建築を歴史的建造物として生まれ変わらせるのが、世界的潮流だという。

 2011年3月に、すでに、久米設計による国立競技場の改修計画があった。その内容は、設計に1年、工事に2年掛かるというもので、工事費は770億円だったという。森山氏は、現国立競技場の改修を通じて、築50年以上の建築物の耐震診断の技術的評価などの制度を確立するよい機会だと主張した。

明治神宮はどうなるのか

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