2025年3月18日午前9時20分頃より、東京都新宿区の防衛省にて、中谷元防衛大臣の閣議後の定例記者会見が行われた。
会見冒頭の中谷大臣からの報告事項はなく、そのまま各社記者と中谷大臣との質疑応答となった。
IWJ記者は、ウクライナ紛争について、次のように質問した。
IWJ記者「ウクライナ戦争について、3月11日、パリでウクライナ支援に関する軍参謀総長等会議が開かれ、日本の防衛駐在官もオブザーバー参加したとのことです。
ロシアのプーチン大統領は、『長期的な平和につながる停戦を望むが、米国とウクライナが合意したような30日間の一時的な停戦には賛成しない』と明言しています。
中谷大臣は14日、『ウクライナにおける公正かつ永続的な平和の実現に向けて取り組んでいく』とおっしゃっていますが、それは、プーチン大統領が言う、長期的な平和につながる停戦を意味しているのでしょうか」
この質問に対し、中谷大臣は次のように答弁した。
中谷大臣「今日でしょうか、米国とロシアの和平に向けたウクライナの会談が行われるということで、この結果を注視しておりますけれども、停戦が実現をした場合について、予断をもってお答えする段階にはありませんが、防衛省・自衛隊としましては、引き続き非常に困難に直面をしているウクライナの方々を支えて、そしてウクライナにおける一日も早い、公正かつ永続的な平和の実現に向けまして、国際社会、また関係省庁とも連携をしながら、適切に対応してまいりたいと考えています」
IWJ記者は続けて、次のように質問した。
IWJ記者「今、日本がウクライナ有志連合としてロシアと戦うことになれば、極東で核保有国であるロシア、北朝鮮、そして中国と対立することになります。
防衛大臣として、この3方面で(自衛隊が)対峙できるとお考えなのでしょうか?」
中谷大臣「いずれにしましても、今、和平の交渉が行われておりまして、どういう結論になるのか、まだはっきりしたことはわかりませんので、そういった点につきましても、仮定の質問については、お答えはできないということです」
「ウクライナにおける公正かつ永続的な平和の実現」という言い方は、中谷防衛大臣だけでなく、岩屋外務大臣も、答弁で多用する常套句である。
2024年12月24日の定例会見において、岩屋毅外務大臣は、IWJ記者の質問に対して、「私どもとしては、もちろん早く平和が回復されるというか、停戦が行われることに越したことはないと思っているんですけれども、しかし、それは、あくまでもウクライナに、『公正かつ永続的な平和』が実現されるということが前提だと思っております」と答弁をしている。
複数の国が関与する国際政治の場で、すべての国々の価値観が統一されることはまず、望み薄であるし、確定された「公正」についても「正解」はひとつではない。「永続的な平和」という言葉も、美しい言葉ではあるが、実際のところ、現状では「希望的観測」でしかない。
こうした主体性も目的意識もない、あいまいな条件設定をみると、むしろ、政府・防衛省はウクライナ戦争の停戦を回避したいのではないか、とさえ思えてくる。
しかも、ロシアとウクライナ相手に停戦交渉している米国は、有志連合を形成する欧州を除外しているというのに、その欧州中心の有志連合に、国民的議論を経ることなく、自衛隊が参加していることは、日本の国益にとって何のプラスになるのか、と思わずにいられない。
会見の詳細については、全編動画を、ぜひ御覧いただきたい。