「『対米従属』ではなく、自主的、主体的に、ウクライナとロシアの和平実現を後押しする外交へと転換する必要があるのではないか?」IWJ記者の質問に対し、テンプレート化した答弁で返す中谷大臣は日本の「国益」を本当に、真摯に考えているのか?~10.11中谷元 防衛大臣 定例記者会見 2024.10.11

記事公開日:2024.10.11取材地: テキスト動画
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(取材、文・浜本信貴)

 2024年10月11日、午前11時より、東京都新宿区の防衛省にて、中谷元・防衛大臣の定例記者会見が行われた。

 会見冒頭、中谷大臣より、10月16日(水)から10月21日(月)の日程で、ベルギーとイタリアを訪問する旨の報告があった。

 中谷大臣は、ベルギー・ブリュッセルでは、NATO(北大西洋条約機構)国防相会合に日本の防衛大臣として初めて出席する。

 また、イタリア・ナポリでは、本年のG7(主要7ヶ国)の議長国であるイタリアの主催により、初めて開催される「G7国防相会議」に出席する予定だ。

 また、次期戦闘機に関する「日英伊防衛相会合」も実施される予定となっている。

 中谷大臣は「本訪問を通じまして、欧州大西洋とインド太平洋の安全保障が不可分であることや、インド太平洋地域の情勢について、力強く発信をするとともに、次期戦闘機につきましては、日英伊3ヶ国の協力強化のコミットメントを改めて確認をし、法の支配にもとづく自由で開かれた国際秩序の維持強化に向けた同志国との強い結束を確認してまいりたい」と抱負を述べた。

 続いて、各社記者と中谷大臣との質疑応答となった。

 IWJ記者は、ウクライナ情勢および日本の外交方針の転換の必要性について、10月8日(火)に行われた外務大臣定例会見にて、岩屋毅外務大臣へ行ったものと同様の質問を中谷大臣にも投げかけた。

 また、この質問については、もうひとつの背景がある。

 10月7日(月)、「れいわ新選組 次期衆議院議員選挙 公認候補予定者発表会見」が行われ、そこで、比例・東京ブロック単独の候補予定者として登壇した伊勢崎賢治氏(東京外語大学名誉教授)が、IWJ記者の質問に回答するかたちで、次のように語った。

伊勢崎氏「先程、ウクライナ戦争の開戦直後に、早期、できるだけ早い対話と交渉と、停戦に持ち込むために、国連というものに最後の頼みを託すと、そういう趣旨の表明を出されたのは、党首としては、山本(太郎)代表が唯一であります。

 しかし、党首じゃありませんが、有力な政治家の中で、実は僕と一緒に、同じような発言をまとめた人があります。

 二人います。そのお二人が、今の首相と防衛大臣です。はい。これは僕の著作にも書きました。まったく同じ趣旨で、つまり、日本の国益、そのお二人は、日本の国益を本当に真摯に考える。

 当時は、ですよ。今は役職に就きましたから、それはまた別の話です」

 このたびの質問は、中谷氏が防衛大臣就任後も、日本の国益を真摯に考え続けているのか、その試金石となるものと言える内容であった。IWJ記者は以下のとおり質問した。

IWJ記者「ウクライナ紛争で、岸田政権は、一方的にロシアを『悪』として、ウクライナに肩入れする、硬直した外交を展開して来ました。

 ロシアによる侵攻までの8年間、ウクライナ国内の東部ドンバスで、ロシア系住民への差別政策や、民間人殺傷などの民族浄化があった事実を、日本政府はまったく認めませんでした。

 岸田政権の対露制裁と、ウクライナへの63億ドル(9015億円)もの支援で、日本はロシアから敵視されています。

 その一方、米大統領選でトランプ政権になれば、米国のウクライナ政策の変更が予想されます。

 NATOの対応も一様ではない現在、日本は、『対米従属』ではなく、自主的、主体的に、両国の和平実現を後押しする外交へと転換する必要があると思われます。

 本来、この質問は、外務省マターだと思うのですが、外務省の外交政策は防衛省の政策にも大きな影響を及ぼすものであると考えますので、中谷大臣の考えをぜひお聞かせください」

 中谷大臣はこの質問に以下のとおりの答弁を行った。

中谷大臣「ウクライナの状況につきましては、国連の常任理事国であるロシアが、白昼堂々、隣国の独立国を力によって現状を変更するという行為。これは許されない行為だと思っております。

 国際秩序の根幹を揺るがす行為であるということで、こういった力による一方的な現状変更というのは、どこであっても許されないと考えておりますので、このことにつきまして、この認識のもとに、国際社会全体の平和と安全のために、ロシアの侵略をやめさせ、1日も早く、公正かつ永続的な平和をウクライナに実現すべく、この問題に取り組んできました。

 しかし、残念ながら事態が長期化をしておりますが、これが一刻も早く解決をしていくように、我が国としてはウクライナを引き続き支援をしていかなければならないと考えています。

 したがいまして、このロシアによるウクライナ侵攻、欧州のみならず、アジアを含む国際社会の根幹を揺るがす暴挙でありまして、このような行為は断じて認められない。

 そして、今後の支援の内容等については、予断を持ってお答えすることは困難でありますが、我が国としては、引き続き国際社会と連携しながら最大限の支援を行ってまいりたいと考えております」

 この中谷大臣の答弁の内容と、先ほど紹介した10月8日の定例記者会見での岩屋外務大臣の答弁内容を比較してみると、多少の表現の違いや、文章の多寡といった違いはあるものの、ほぼ同一のものと言っていいものだということがわかる。

 国民の「知る権利」を担保する記者からの「国益」に関する質問に、テンプレート化した答弁で返すという安易かつ不誠実な姿勢は、「日本の国益を真摯に考える」ものとは真逆のものだ。伊勢崎氏が言ったように、「立場」についたら、持論を変えてしまうのか。

 中谷大臣には、NATO国防相会合に日本の防衛大臣として初めて出席することを喧伝する前に、日本の「国益」についてもう一度真摯に考えていただきたいものである。

 会見内容の詳細については、全編動画を御覧ください。

■切り抜き動画(IWJ記者による質問)

■全編動画

  • 日時 2024年10月11日(金)11:00〜
  • 場所 防衛省内会見室(東京都千代田区)

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