ウクライナ紛争は「帝国の残骸」である米国の崩壊の始まり!「帝国の解体」を公約に掲げたロバート・ケネディJr.氏は「時代遅れの老大国アメリカ」を自覚している米史上初の候補!〜岩上安身によるインタビュー第1125回 ゲスト ジャーナリスト・高野孟氏 2023.7.3

記事公開日:2023.7.4取材地: テキスト動画独自
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(文・IWJ編集部)

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 岩上安身は7月3日、ジャーナリストの高野孟(たかの はじめ)氏にインタビューを行った。

 インタビューは冒頭から、ウクライナ紛争をめぐり、日本を含む西側諸国全部がメディアコントロールされている、という話題で、高野氏と岩上安身が一致した見解を示した。

 「こんなの(状況)は見たことがない」と述べた岩上安身に対し、高野氏は、次のように語った。

 「冷戦時代には、両陣営でそういうことがまかり通って、アメリカの言いなり、『反共』と言われたらそれで引っ張られていく。あっち(東側諸国)はあっちで、同じことをやっているという、不毛な時代があったわけです。

 冷戦が終わって、イデオロギーとか価値観とか、そういう抽象的な話で全部まとめて喧嘩腰になるといったことは、なくなってきたと思っていたんだけど、結局これは、アメリカのノスタルジアだと思うんですね。昔が忘れられないと、あの良かった時代が。自分が盟主として輝いていた。誰も文句を言わなかった、あの時代が懐かしいと。

 冷戦が終わって、本当は戻れるわけがないんですけど、それしか自分の生きる道が見えていないんですね。

 私は、(米国が)一種の認知障害に陥っていると思っていてですね、それを、ヨーロッパはじめ、日本ももちろん、口に出して言えない。(仏の大統領の)マクロンぐらいはちょっと嫌味を言いますけど。

 あまりにも、ある意味、アメリカが気の毒で。『あなた、ちょっと、アウト・オブ・デイト(時代遅れ)になってません?』って言わなきゃいけないんですけど、それが言えない。(中略)

 中国やロシア、サウジはじめ中東、非同盟の国々はもちろん、みんなそう思っているんですよ。『もうその時代は終わったでしょう』と。

 だけど、あまりにも激しいアメリカのノスタルジア病に、遠慮しちゃうというか、飲まれちゃうということが起こっていますね」。

 さらに、岩上安身がウクライナ紛争について、「ロシアの侵攻以前に、ドンバス地方で起こったウクライナ政府と軍による民族浄化などについて、誰も触れない」と指摘し、IWJで発言し始めたら、「新米右派だけではなく、中道・リベラルの無理解がひどい」と述べると、高野氏は、次のように応じた。

 「その通りなんです。

 結局そこは、マスコミの書いている記者もそうだと思いますけど、中道・リベラル的な政治家も含めて、一言で言ったら、歴史を知らないんです。ウクライナ侵攻が起こって、そこから報道が始まっているんです。

 プーチンが、(侵攻の)前日と前々日の演説で、繰り返し繰り返し、『我々は8年待ったんだ』って、何度も言ったわけですよ。その意味を解説しないと、マスコミとしては、役割を果たせないと思います。

 8年っていうのは、まさにマイダン・クーデターの起きた2014年からの8年間。ミンスク合意が実現しようと。ロシアだけじゃなく、フランスもドイツも強くコミットして、何とかしようと、直前までやっていたわけですよ。マクロンなんて、キエフとモスクワの間でシャトル外交までやって。

 それに期待して、プーチンは待ってたわけだけど、とうとう我慢しきれなかった、という文脈を、長い長い演説で、きちんと説明しているわけですよ。

 だけど、それは世界中(とりわけ西側諸国で)、ほとんど無視。報じない」。

 高野氏は、ロバート・ケネディJr.氏が、2024年の米大統領戦の民主党予備選に出馬表明した際、出馬表明演説で「大統領になったら、800もある海外米軍基地を閉鎖して部隊を帰国させ、帝国解体の作業を始める」と宣言したことを受けて、自身が編集長を務める『インサイダー』で5月15日、支持を表明した。

 「バイデンとトランプの大統領選だけは見たくない」と述べた高野氏は、「ちょっと認知のあやしい老大国アメリカを、世界中でどうやってうまく、暴れないようにするか、介護するかということが、実は今、世界の平和の中心課題」だと指摘し、「そのことを自覚している候補者が、初めて出てきた」と語った。

 ケネディJr.氏が表明した「帝国解体」について、高野氏は、『滅びゆくアメリカ帝国』(にんげん出版、2006年)や『インサイダー』で自身がずっと論じてきたことと「ほとんど瓜二つ」だと表明している。

 これについて高野氏は、次のように詳しく説明した。

<会員向け動画 特別公開中>

■ハイライト

■全編動画

  • 日時 2023年7月3日(月)11:00~12:00
  • 場所 IWJ事務所(東京都港区)

<ここから特別公開中>

 「9.11テロのあった2001年から5年間、『インサイダー』では、ほとんどテロと、イラク、アフガンでの戦争についてしか書いていないんです。『テロはどこまでひどくても国際犯罪である。それに対して国家間戦争で報いるというのは、とんでもない大間違いだ。アメリカ自身に跳ね返ってくる』という趣旨の原稿を書いた。

 そこを起点にして、2006年に出したのが『滅びゆくアメリカ帝国』だったんです。(中略)

 フランスの皮肉の効いた知識人、エマニュエル・トッドが、『帝国以後』というの(著書)を2003年に出しているんです。その中で『米国は帝国の残骸』であるという、強烈な表現を使っていて、私もまったくその通りだと思う。

 『残骸』という意味は、『アメリカは軍事力をひけらかす以外にやることがなくなってしまって、それしか頭に浮かばなくなっているという状態になっていて、しかもそれは、ロシアやヨーロッパや日本に対して大きな戦争を仕掛ける気概もない。テレビ映りのいい、空爆だけで済むような小さい戦争を、三流の独裁国を相手にして、あちこちで起こして、お芝居をやっている』と。『それは、見るに耐えない残骸である』という趣旨なんです。

 皮肉たっぷりの辛辣な表現でしたが、そういう認識が始まっている状況の中で、これ(ウクライナ紛争)が起きた。これはいよいよ、トッドが予見していた通り、本当の帝国の崩壊が、ここから始まるんだというような趣旨のことを書いたんです」。

 また、インタビューでは、高野氏提供のデータをパワポとフリップにして視聴者に掲示し、「2022年における軍事費上位15カ国の世界軍事費に占める割合」、「10大輸出国による主要武器輸出の世界シェア」で、米国が世界全体の4割を占めていることを示した高野氏は、「世界の戦争による殺戮・殺傷行為の4割は、粗っぽく言えばアメリカの責任だということ」と指摘した。

 高野氏は、「こんな軍事国家は、今まで世界史の中で存在したことがないし、そういう自分自身を、アメリカが持て余しているというのが、今の状況。どこかで戦争をやらなければ、これ自体を維持できない、ということになっちゃっている」と述べた。

 さらに高野氏は、「世界の防衛産業トップ100」で上位を占める米国の防衛産業が、その収入比率のほとんどを民生ではなく防衛事業が占めていることを示し、次のように解説した。

 「これが(米国の)最大の産業といっていいわけで、この産業が生きていくためには戦争がなければいけない。

 1993年にNATOの東方拡大が始まったのも、(世界1位・防衛収入比率96%の)ロッキード・マーチンの副社長がヘッドになって『NATO東方拡大委員会』というのを作った。アメリカ議会にロビーイングした。それが推進力になっているわけですから。

 まず、ポーランドを筆頭に、ソ連圏から解放された東欧諸国に、『ソ連製の武器を捨てて米国製のF35を買いなさい』と。そういうことから始まってきたわけです。それが今、ウクライナまで届いてきている。

 このロッキード・マーチンという名前は、長く記憶に留めた方がいいと思いますよ。この事態(ウクライナ紛争)を引き起こした、ある意味、張本人ということもいえるわけです。

 ケネディJr.の演説の中に、『バイデン政権と軍事産業の癒着』という言葉がありましたが、その筆頭が、このロッキード・マーチンですよね」。

 また、米国の同盟国の中でも、「米軍基地の数」、「駐留する米軍の現役兵力」で、いずれも日本が「ダントツ」で世界一であり、軍事帝国としての米国にひたすら貢献していることを示した高野氏は、「ロバート・ケネディJrが(大統領になって)、本当に『全米軍基地撤退』という公約をやってくれれば、一番メリットがあるのは日本だということです」と語った。

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