岩上安身は7月3日、ジャーナリストの高野孟(たかの はじめ)氏にインタビューを行った。
インタビューは冒頭から、ウクライナ紛争をめぐり、日本を含む西側諸国全部がメディアコントロールされている、という話題で、高野氏と岩上安身が一致した見解を示した。
「こんなの(状況)は見たことがない」と述べた岩上安身に対し、高野氏は、次のように語った。
「冷戦時代には、両陣営でそういうことがまかり通って、アメリカの言いなり、『反共』と言われたらそれで引っ張られていく。あっち(東側諸国)はあっちで、同じことをやっているという、不毛な時代があったわけです。
冷戦が終わって、イデオロギーとか価値観とか、そういう抽象的な話で全部まとめて喧嘩腰になるといったことは、なくなってきたと思っていたんだけど、結局これは、アメリカのノスタルジアだと思うんですね。昔が忘れられないと、あの良かった時代が。自分が盟主として輝いていた。誰も文句を言わなかった、あの時代が懐かしいと。
冷戦が終わって、本当は戻れるわけがないんですけど、それしか自分の生きる道が見えていないんですね。
私は、(米国が)一種の認知障害に陥っていると思っていてですね、それを、ヨーロッパはじめ、日本ももちろん、口に出して言えない。(仏の大統領の)マクロンぐらいはちょっと嫌味を言いますけど。
あまりにも、ある意味、アメリカが気の毒で。『あなた、ちょっと、アウト・オブ・デイト(時代遅れ)になってません?』って言わなきゃいけないんですけど、それが言えない。(中略)
中国やロシア、サウジはじめ中東、非同盟の国々はもちろん、みんなそう思っているんですよ。『もうその時代は終わったでしょう』と。
だけど、あまりにも激しいアメリカのノスタルジア病に、遠慮しちゃうというか、飲まれちゃうということが起こっていますね」。
さらに、岩上安身がウクライナ紛争について、「ロシアの侵攻以前に、ドンバス地方で起こったウクライナ政府と軍による民族浄化などについて、誰も触れない」と指摘し、IWJで発言し始めたら、「新米右派だけではなく、中道・リベラルの無理解がひどい」と述べると、高野氏は、次のように応じた。
「その通りなんです。
結局そこは、マスコミの書いている記者もそうだと思いますけど、中道・リベラル的な政治家も含めて、一言で言ったら、歴史を知らないんです。ウクライナ侵攻が起こって、そこから報道が始まっているんです。
プーチンが、(侵攻の)前日と前々日の演説で、繰り返し繰り返し、『我々は8年待ったんだ』って、何度も言ったわけですよ。その意味を解説しないと、マスコミとしては、役割を果たせないと思います。
8年っていうのは、まさにマイダン・クーデターの起きた2014年からの8年間。ミンスク合意が実現しようと。ロシアだけじゃなく、フランスもドイツも強くコミットして、何とかしようと、直前までやっていたわけですよ。マクロンなんて、キエフとモスクワの間でシャトル外交までやって。
それに期待して、プーチンは待ってたわけだけど、とうとう我慢しきれなかった、という文脈を、長い長い演説で、きちんと説明しているわけですよ。
だけど、それは世界中(とりわけ西側諸国で)、ほとんど無視。報じない」。
高野氏は、ロバート・ケネディJr.氏が、2024年の米大統領戦の民主党予備選に出馬表明した際、出馬表明演説で「大統領になったら、800もある海外米軍基地を閉鎖して部隊を帰国させ、帝国解体の作業を始める」と宣言したことを受けて、自身が編集長を務める『インサイダー』で5月15日、支持を表明した。
「バイデンとトランプの大統領選だけは見たくない」と述べた高野氏は、「ちょっと認知のあやしい老大国アメリカを、世界中でどうやってうまく、暴れないようにするか、介護するかということが、実は今、世界の平和の中心課題」だと指摘し、「そのことを自覚している候補者が、初めて出てきた」と語った。
ケネディJr.氏が表明した「帝国解体」について、高野氏は、『滅びゆくアメリカ帝国』(にんげん出版、2006年)や『インサイダー』で自身がずっと論じてきたことと「ほとんど瓜二つ」だと表明している。
これについて高野氏は、次のように詳しく説明した。