高野孟氏「『台湾有事は日本有事だから防衛費倍増』という『嘘の連鎖』を断ち切ることが必要。岸田は安倍の背後霊に後ろから抱きつかれ、この路線から逃れられない」~2.16「台湾有事切迫」論の嘘に惑わされるな 2.16院内集会 ―講演:高野孟氏 2023.2.16

記事公開日:2023.2.17取材地: テキスト動画
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(取材、文・浜本信貴)

 2023年2月16日、午後6時より、東京都千代田区永田町の衆議院第一議員会館にて、「戦争をさせない1000人委員会」、および「立憲フォーラム」の主催により、院内集会「『台湾有事切迫』論の嘘に惑わされるな」が開催され、ジャーナリストの高野孟氏の講演が行われた。

 講演冒頭、高野氏は「この『台湾有事切迫論』というものが、にわかに浮上してまいりましたのは、一言で言うと、アメリカの軍人の『予算欲しさの戯れ言』から始まっている。それを真に受けるバカバカしさということに尽きると思います」とバッサリと切って捨て、『台湾有事切迫論』の背景について、次のように説明した。

 高野氏「ご承知だと思いますけれども、フィリップ・デビッドソンという、前のハワイに司令部がありますインド太平洋軍司令官。東半球全体の一番偉い軍人ということになりますけれども。

 この方が退任する寸前の2021年3月に、米上院の軍事委員会公聴会に登場いたしまして、全体としては、これは予算獲得のためのアピールで、文書化された業務報告っていうのでしょうか。

 インド太平洋軍がどんなに頑張っているかについては、文書化されて、公表もされておりますけど、長々長々とこのお願いをしてですね、そして、その後に議員との質疑応答ということがあって、その中で、これは新聞でも報道されましたけれども、大きく報道されることになるわけです。

 けれども、中国の台湾への軍事侵攻について、『この10年以内、実際には、今後6年のうちに、その脅威が現実のものとなると私は思う』というふうに言って、その理由は、実は、この証言では言ってないのですね、何も。(中略)

 このセリフだけが一人歩きのようにして、大きく報道されてですね、その前段の業務報告から質疑応答までやると何時間にもなるような長い場面ですけども、その中の、このたった1行(の発言)だけが新聞沙汰になるということになったわけです」

 そして、高野氏は、以下のように結論付けた。

 高野氏「これは本当に国際政治ということについて何も知らない軍人にありがちな、かなり重症の『政治音痴』ということがまず前提としてあると思います。

 その中で、中国についてはとりわけ無知。習近平政権についての一知半解と言いますか、誰かの話を小耳に挟んだ程度ということで、もちろん、中国にも行ったこともないと思いますし、いとも簡単に中国脅威論というものをプレイ・アップする(大きく扱う)というようなことだと思います。

 繰り返しますが、なぜ『6年のうち』なのかということについては、その場で議員も誰も問いただしていない。それから、この報道の直後のメディアは、日本のメディアも含めて、大騒ぎという感じで報道したのですけど、なぜ6年以内なのかということは、ここでは言ってないわけです。

 後になって、だんだんわかってきたその理由、それは、簡単に申しますと、習近平の四選達成には戦争が必要だということに尽きるわけであります。(中略)

 けれども、そこから多分、自民党外交部会に話が通じて、この自民党外交部会の部会長というのは、こともあろうに、これはまた極端な政治音痴、国際政治音痴の佐藤正久(参議院議員)というヒゲの隊長ですね。なぜ、こんな人が外交部会をやっているのか? 自民党は大丈夫か?

 それで、もうそれが起こると、台湾有事は必ず起こると。

 『必ず日本有事なのだから防衛力増強なのだ』という一つ の路線がここで採択されるんですね。岸田もそれから自由になり得ていない。つまり、この『台湾有事は日本有事』というこのデマをですね、反論して、それを撤回するだけの能力は岸田にはないということですね。

 そして、自民党の中で唯一と言っていいのかもしれないけれども、そのことについて、衆議院予算委員会で直接疑問を述べているのは、昨日(2月16日)の石破茂(自民党・衆議員)さんですね。

 石破さんが『ウクライナ危機だから台湾も危機だとか、台湾有事は日本有事だとか、あまりそういうことについて言葉を弄ぶべきではない』ということを、昨日、岸田さんの面前で言いました。

 これは、まさに私の認識と一緒です。ウクライナ危機を横滑りさせ台湾危機に重ね合わせていく、危機感を売る、そしてその台湾危機は直ちに日本有事だということになる、そうすると 防衛費中身抜きでも、とにかく防衛費をまず増やすんだという話につながっていく、ということであろうかと思います。

 繰り返しますけれども、台湾危機切迫しており、それを、台湾有事は日本有事だから防衛費倍増というこの嘘の連鎖というものを断ち切っていくということが今どうしても必要だと思います。岸田は安倍の背後霊に後ろから抱きつかれていてですねこの路線から逃れられない」

 このあと、高野氏と参加者との質疑応答となった。

 ウクライナ紛争について、以下のような質問があった。

 参加者「本論と違うかもしれませんが、去年ですね、あの、ロシアからドイツへと送っているノルトストリームのパイプラインがですね、爆破されましたけども、先般、アメリカのシーモア・ハーシュ記者が、あれやったのアメリカだということを暴露したんですけども、これについて、ちょっとコメントを…。高野先生のお考えを…」

 高野氏「それが本当だという証拠を私が持っているわけではもちろんありませんけれども、シーモア・ハーシュさんっていうのは、私も尊敬する、昔からの仕事を、大変立派な仕事をしている世界第1級のジャーナリストであるという認識を持っておりますので、彼が言うぐらいだから本当だろうという感じは持っております。

 そのアメリカの陰謀というのは相当広範囲にわたっていて、いろんな仕掛けが裏で行われており、そして、それはまあ何だと言えば、やっぱり軍産複合体がその戦争を続けさせて、そして、もう今、アメリカのほとんどの通常兵器の在庫が払底して、NATOもだんだんなくなってきて、砲弾の増産体制に入ってますよね。

 拡張していこう、東欧をどんどん取り込んでいこうというNATOの東方拡大というものをアメリカ議会に働きかけたのはアメリカの兵器産業です。兵器産業の副社長クラスが集まって『NATO拡大委員会』というものを作ってロビー活動をやったのが始まりです。

 旧東欧諸国が次々とソ連製の兵器を捨てて、NATO仕様の、アメリカの最新兵器を買うというマーケット開発、そして、それが行きつくところまで行って、ウクライナに届いてしまったということが、そもそものプーチンが非常に危機感を持ってこれに対処しなければならなくなった大元の原因です。

 だから、そこからやっぱり振り返ってみないといけないのではないかって気がいたします。大変な、今、兵器市場があそこに生まれている。それで兵器メーカーとしては、ウクライナはいずれ終わるだろう。次のマーケットは日本だとこういう風になっているのだと思いますね。その準備が始まっている」(後略)

 続きはぜひ全編動画をご視聴ください。

■全編動画

  • 日時 2023年2月16日(木)18:00~
  • 場所 衆議院第一議員会館多目的ホール(東京都千代田区)
  • 詳細 戦争をさせない1000人委員会 サイト内告知
  • 主催 戦争をさせない1000人委員会、立憲フォーラム

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