米国の元国防次官補で軍事アナリストのセス・クロプシー氏が、香港を拠点とする英語メディア『アジア・タイムズ』に2022年9月1日付けで「ロシアはウクライナを超えて、どのように対立をエスカレートさせるのか~インド太平洋におけるロシアの脅威は、米国と同盟国が認識し、抵抗する必要がある」と題した論文を寄稿した。
- How Russia may escalate conflict beyond Ukraine(ASIA TIMES、2022年9月1日)
ウクライナ紛争について、「西側の評価では、ロシア海軍の力が過小評価されている」というクロプシー氏は、「ロシアの地上軍が受けたダメージと、ウクライナでの作戦が要求する資源の増大を考慮すると、ロシアの海軍はクレムリンに残された最も有効な戦力だ」と論じ、ロシア軍がインド太平洋地域で米国と同盟国に「圧力をかける能力がある」と警告している。
クロプシー氏は、ロシア軍が「台湾有事」の際に参戦すれば、中国側が圧倒的に有利になると懸念を示す一方、極東でロシア軍に圧力をかければ、ウクライナ紛争におけるロシア軍の戦力を東西に分散させ、対ウクライナ戦線におけるロシア軍を弱体化させることができると論じている。
この『アジア・タイムズ』のセス・クロプシー氏の論文を、9月5日付けロシア『RIAノーボスチ』が取り上げ、「ウクライナで苦戦するワシントンは、極東に第二戦線を開こうとしている」と批判した。
その上で『RIAノーボスチ』は、「しかし、そこ(極東)でも(ワシントンは)無様に負けることは間違いない」と息巻いている。
- Американцы хотят открыть второй украинский фронт(РИА Новости、2022年9月5日)
すなわち、米露ともに、「台湾有事」の際にロシア軍が参戦することによる影響を、おのおのに都合よく解釈しているのだ。
しかし、両国のうぬぼれと度が過ぎた闘争心が高じた結果、極東での戦争は世界大戦並みの規模となってしまいかねない。そんな大戦争へのエスカレートに、日本と日本の自衛隊は、このままでは、何の主体性も示さぬまま、薄ぼんやりと、なりゆきまかせで動員させられてしまうだろう。極東戦線に巻き込まれた際の日本人・日本社会のリスクには、ロシアはもちろん、米国も無関心である。私たちのすぐそばにまで、「世界大戦」という「巨大な怪物」が忍び足で迫りつつあることに、無関心でいてはならない。
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