【IWJ号外】ノルドストリーム爆破のスクープで世界中の注目を集めた伝説の調査報道ジャーナリスト、シーモア・ハーシュ氏が「プーチンの立場がかなり強くなった」と「プリゴジンの乱」を分析! 2023.7.1

記事公開日:2023.7.1 テキスト
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(文・IWJ編集部)

 IWJ代表の岩上安身です。

 ノルドストリーム爆破のスクープで世界中の注目を集めた米国の伝説の調査報道ジャーナリスト、シーモア・ハーシュ氏が、「プリゴジンの乱」を徹底分析しました!

 ハーシュ氏は、独自に持っている米国情報機関内部の情報源の証言を開示し、「最も重要なことは、プーチンの立場がかなり強くなったということだ」と指摘しています。

 6月24日に始まり一日で収束したワグネル創設者、エフゲニー・プリゴジン氏の乱について、日本メディアを含む、多くの西側メディアが、ロシアの分裂・弱体化とウクライナ紛争におけるロシアの敗北の願いを込めた、バイアスのかかった記事を配信し続けました。

 こうしたプロパガンダの代表的なものに、6月28日配信の『ウォールストリート・ジャーナル』(以下『WSJ』)の記事「ワグネル反乱で露呈、プーチン体制のリスク」があります。

 28日付『WSJ』は、「ロシアのウラジーミル・プーチン大統領の戦略は、ある大きな前提にもとづいている。それは、長く犠牲の大きい戦争では、自身の独裁政権の方が西側の民主主義政権より長く持ちこたえられる可能性があるというものだ」と冒頭から、「ロシア独裁政権」対「西側民主主義」という図式で、さっそく読者に対して「洗脳」を施していきます。

 こうした都合のいい認識から出てくる結論は「プーチン氏の権威は、反乱を制圧できなかったことによって傷ついた」なのです。これは、西側プロパガンダ・メディアの一つのパターンとなっています。

 IWJでは、「プリゴジンの乱」のさなかに、西側メディアがそれまでプーチンを「独裁者」と罵倒していた。「プリゴジンの乱」を力づくで鎮圧しないとなると、今度はプーチンを「優柔不断」と非難し始めた矛盾について、指摘してきました。「優柔不断な独裁者」など、語義矛盾もいいところです。

  • 【本日のニュースの3連撃! 第1弾 FNNプライムオンライン、26日ほか】プーチン大統領がプリゴジン氏をベラルーシで暗殺する!? 日本のメインストリームメディアが報じる「プーチンは裏切り者を許さない」は本当か!?
  •  そして、再び、米国の願望がメディアの口から語られます。再び、『WSJ』から引用します。

     「アナリストらによれば、プリゴジン氏が表舞台から去ったとしても、戦争が長引けばロシアのエリート層の誰かが新たな反抗を計画する可能性が高いという。次の反発がどこで起きるのかは誰にも分からないとしてもだ」

     IWJは、こうした報道の皮を被ったプロパガンダをめくり上げるために、あえて、ロシア・メディアも多用し、ロシア内部からの声にも耳を傾けながら、可能な限り、公平に、「プリゴジンの乱」の真実を、「ニュースの連撃!」などでお伝えしてきました。

     真実に近い報道を行おうとするジャーナリズムは、IWJだけではありません。国家権力と企業権力の複合体と癒着せず、汚染されていない西側メディアやジャーナリストも、少数ながら存在します。

     その代表的な一人が、ノルドストリーム爆破のスクープで世界中の注目を集めた米国の伝説の調査報道ジャーナリスト、シーモア・ハーシュ氏です。

     シーモア・ハーシュ氏は、29日に自身のホームページ公開した記事において、「プリゴジンの乱」を、米国情報機関の独自情報源から得た情報を開示し、的確かつ客観的に、「党派性」を交えることなく分析しています。

     ハーシュ氏は、プリゴジンの乱が本物の「反乱」でなかったがゆえに、むしろプーチン大統領の力を強めることになると、多くの西側メディアとは真逆の結論を導き出しています。これはIWJの見通しと重なります。

     IWJは、ハーシュ氏の記事を全文仮訳しました。

     なお、ハーシュのホームページの仕様が変わり、今回は記事全文が読めるようになっていますので、全文の仮訳とさせていただきました。この仕様変化は一時的なものか、永続的なものか、今のところ不明です。

     ハーシュ氏の活動も、IWJと同様、会費(サブスク)によって、まかなわれていますので、ぜひ、IWJにご支援いただくとともに、ハーシュ氏のサブスクにも入って、彼の取材・執筆活動を支援していただけるよう、お願いします。(IWJはハーシュ氏と交流がなく、ご支援のお願いは、ハーシュ氏側から依頼されたものではありません)

     以下からハーシュ氏の記事「プリゴジンの愚行 ロシアの『反乱』は反乱でなかったがゆえにプーチンの力を強化する」の全文仮訳となります。

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    「プリゴジンの愚行 ロシアの『反乱』は反乱でなかったがゆえにプーチンの力を強化する。

     バイデン政権は先週末、輝かしい数日を過ごした。ウクライナで進行中の惨事は見出しから外れ、『ニューヨーク・タイムズ』の見出しにあるように、傭兵ワグナー・グループのチーフ、エフゲニー・プリゴジンの『反乱』に取って代わられた。

     焦点は、ウクライナの反攻の失敗から、プーチン支配に対するプリゴジンの挑戦へと移った。『ニューヨーク・タイムズ』のある見出しは、『反乱は切実な問題を提起する:プーチンは権力を失う可能性があるのか』である。『ワシントン・ポスト』のコラムニスト、デービッド・イグナティウスはこんな評価を下した。『プーチンは土曜日に奈落の底を覗き込んだ――そして、瞬きをした』。

     アントニー・ブリンケン国務長官は、数週間前にウクライナでの停戦を求めないという公約を誇らしげに語った政権の戦時担当官であるが、『CBS』の『フェイス・ザ・ネイション』に出演し、彼なりの現実を語った。

     『16カ月前、ロシア軍はウクライナを独立国として地図から消し去ろうと考えていた。今、彼らは週末に、プーチン自身が作った傭兵からロシアの首都モスクワを守らなければならなくなった。… それはプーチンの権威に対する直接的な挑戦だった。…これは本当の亀裂を示している』。

     ブリンケンは、インタビュアーのマーガレット・ブレナンから訊ねられるまでもなく、また、これを言わなければ、番組に出演した理由もないとわかっていたかのように、狂気のワグネルのリーダーの亡命は、ウクライナ軍にとって好都合であると示唆した。ブリンケンが話している間にも、ロシア軍によるウクライナ軍の徹底的な粉砕は続いていた。

     『プーチンにとっても、ロシア当局にとっても、プリゴジンの亡命は本当に気がかりで、ウクライナ軍の反攻に対処するときに、ある意味、自分たちの背後を気にしなければならなくなるので、ウクライナ軍は現地で有効に戦うチャンスが広がるだろう』。

     この時点で、ブリンケンはジョー・バイデンの代弁者だったのだろうか?

     私たちは、これが、責任者が信じていることだと理解していいのだろうか?

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