2011年3月12日福島第一原発水素爆発直後、河合弘之弁護士「身が震えるような恐怖」、海渡雄一弁護士「原子炉が正常な状態であるとは思いにくい」〜岩上安身によるNPO法人原子力資料情報室連続緊急インタビュー完全文字起こし(その1) 2021.3.21

記事公開日:2021.3.21 テキスト
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(IWJ編集部、文責・岩上安身)

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 2011年3月12日午後3時36分、福島第一原発1号機の建屋壁が爆発によって崩壊した。

それから数時間後、政府、原子力保安院、東京電力の情報開示が必ずしも十分とは言えない中、原子炉の設計に関わった元技術者を交え、NPO法人「原子力資料情報室」による緊急記者会見が3月12日夜8時から開かれることになった。

 会見に先立って、岩上安身は、原子力発電所運転差止弁護団の河合弘之氏(弁護士、団長)、海渡雄一氏(弁護士)、只野靖氏(弁護士)と、東芝の元原子炉格納容器設計者である後藤政志氏らへインタビューを行った。

 時系列に沿ってふり返ってみよう。

 3月11日午後2時46分ごろ発生した「東北地方太平洋沖地震」(マグニチュード8.8)によって、福島第一原子力発電所で日本が初めて経験する史上最大級のシビアアクシデントが起こった。地震に続いて津波が福島第一原発を襲い、午後3時37分、福島第一原発は全電源を喪失した。

午後4時36分、東電は福島第一原子力発電所において原災法15条に該当する事態になったことを政府に報告した。

東電の報告を受け、政府は午後7時3分「原子力緊急事態宣言」を発出した。10年以上を経た2021年3月現在、いまだ「原子力緊急事態宣言」は解除されていない。

 午後9時23分、菅直人総理は1号機の水位が下がっていること、注水が困難であることなどの情勢から、当初、福島第一原発の半径3km内に避難指示を、3-10km内に屋内避難指示を出した。

この時点で、すでに1号機は「空焚き」状態になり、メルトダウンが始まっていたことが後日判明している。当時、現場では計器の狂いなどから1号機格納容器にはまだ水が残っていると誤った判断をしていた。

 深夜11時すぎ、計器の復旧が進み、1号機格納容器の圧力が通常の6倍に上がっていたことが判明する。これを受けて吉田昌郎・福島第一原発所長(当時の肩書き。2013年7月9日、食道癌のため死去)が、12日午前0時6分に1号機のベントの準備を指示した。しかし、1号機周辺の放射線量が非常に高いため、ベント作業は困難を極めた。

 12日午前3時、海江田万里経産大臣と東京電力が「ベント実施」を緊急記者会見で発表した。東京電力の緊急記者会見のあと、枝野幸男官房長官(当時)が「福島第一原発で格納容器の圧力が異常に上昇しており、東電から放射能を含む蒸気を放出する必要があるという報告を受けた」と発表した。

 午前5時半、菅直人総理が班目春樹原子力安全委員会委員長に「爆発の危険性はないのか」と問い、班目委員長は「ゼロではないです」と答えた。

 午前6時、菅直人総理(当時)が、なかなかベントが進まない状況を憂い、避難範囲を10kmに拡大すると述べ、ヘリコプターで福島第一原発に向けて出発し、7時すぎに現地到着。菅直人総理「なぜベントしないのか!」、吉田所長「決死隊でやっています」など、激しいやりとりがあったとされている。

午前9時50分、枝野官房長官(当時)が「放射性物質を含む空気の一部、外部への放出が行われますが、管理された中での放出でございます」と、記者会見で述べた。

 午後2時過ぎ、ベント開始。1号機、2号機から煙が放出されているのが確認された。放射性物質を人為的に放出するベントが日本で初めて行われた。

午後3時ごろには 1号機格納容器内の気圧が7.5気圧から5.8気圧に低下。これで注水を続けて燃料棒を冷却し続けることができれば、格納容器の破壊を免れると思った、その次の瞬間だった。

 2011年3月12日午後3時36分、福島第一原発1号機の建屋が爆発、コンクリートの建屋壁が吹き飛んだ。

この爆発の原因を巡って、建屋、原子炉の格納容器と圧力容器、それぞれがどこまで破壊されたのか、情報が混乱した。午後6時25分、福島第一原発から半径20km圏内への避難指示が出された。

 岩上安身は爆発の直後、会見の準備をするNPO法人原子力資料情報室の一室に駆けつけた。岩上のインタビューに答えて、実名と素顔を初めて明らかにした東芝の元原子炉格納容器設計者・後藤政志氏は、格納容器は「もう保証できない状態」と発言、「メルトダウンの可能性もある」と述べた。

 以下、岩上のインタビューによる全文文字起こしである。

記事目次

NPO法人原子力資料情報室・河合弘之氏「現実にこうなると身が震えるような恐怖を感じます」

 まず、NPO法人原子力資料情報室の河合弘之弁護士と、海渡雄一弁護士が岩上安身のインタビューに応じた。

▲岩上安身のインタビューに答える河合弘之弁護士(IWJ撮影)

河合氏「弁護士の河合と申します」

海渡氏「海渡です」

河合氏「私は浜岡原発の差し止め訴訟の弁護団長をやっております。その関係で」

岩上「先生も浜岡原発で?」

海渡氏「はい。浜岡原発は静岡県の御前崎にあります」

岩上「東海大地震が起きたら大変な影響が出るだろうと。今回のこの件でも大変なことが起きているのではないかと。

 今、テレビの情報だけでなくネット情報も含めて、リアルタイムで情報が刻々と入ってきています。特に福島第一原発の1号機が熱暴走だけではなく、溶融を起こして爆発が起こったと。爆発の映像も先ほど流れました。どんな状態だと? 危険な状態だと思うんですが、ご覧になっていますか?」

河合氏「情報が本当にきちんと出てこなくて、本当に現場が混乱してるんだろうなと思います。保安院も官房も政府も正確にとらえてないんじゃないかと。隠してるというよりも正確にとらえていない。だとすれば、本当に怖いなと」

岩上「緊急会見も、内閣官房長官が開いているんですが、我々のようなジャーナリストは、これだけ重要な緊急会見なのに入れないんです。締め出している」

河合氏「それはけしからん。僕は隠しているとは思いたくないので、あのすごい爆発が起きてから1時間半経っても、『爆発的事象』とか、和らげるような表現をしているんですね。

 大変なことが起きてるんだけども、なるべくなるべく少なめにみせたいという姿勢が見えてですね。それによって少なめに受け取った人たちが、避難を遅らせた時に、被害、死亡者数に増減がでてくると思うんだけど。そういうことについて責任を持つのかな?と思う」

海渡氏「当初から、避難範囲は炉心から3kmといっていて。炉心が冷却できなくなっているという認識が出て、今さっきようやく20kmという発表がありましたけれども。それでも十分と言えるかどうか。それだけ避難できるかという現実的な問題もあって。原発事故が起こった時の凄まじさというのを、我々もまざまざと感じています。

 いずれにしても後手後手に回っている感は…。昨日の段階で20km圏まではとか、判断して欲しかったと思います」

河合氏「今日起きてることは、私たちがもう、あらゆる原発裁判でずっと言い続けてきたこと。だけど、電力会社や政府、裁判所からそんな大袈裟な、と。そんなことは大丈夫だよ、と。もう2重3重4重の障壁があって、そんなことにはならないんだよ、と。

 我々は、いや、そんなことはない。こういう危険性があるんだと言ったことが、次々と実現していってしまっている。我々は警告はしていましたけれど、現実にこうなると身が震えるような恐怖を感じます」

(…会員ページにつづく)

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