バイデン新政権始動! 強硬な対中国政策と「同盟再強化」は東アジアでの戦争発火へつながるのか?~岩上安身による第1030回 ゲスト 元外務省情報局長 孫崎享氏 連続インタビュー第2回 2021.2.16

記事公開日:2021.2.21取材地: テキスト動画独自
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(文・六反田千恵)

特集 元外務省情報局長 孫崎享氏

※2021年5月4日 フル公開としました。

 2021年2月16日、バイデン新政権誕生を受けた、岩上安身による、元外務省情報局長・孫崎享氏の連続インタビュー第2回が行われた。

 ミャンマーのクーデターに関連し、同国の港湾開発の中国からの多額債務への懸念が取り沙汰される中、「中国に最重要なのはパイプライン維持」だから「『債務の罠』で港湾を奪うとは思えない」と、外交の機微を熟知する孫崎氏ならではの視点で分析した。

 また、同国のクーデターを米バイデン政権が非難する際に掲げる「民主化」は、その国の政権が「米国に都合が悪い時」の「戦略的スローガン」と指摘。自ら駐留したウズベキスタンを例に、国の状況で「民主化」の意味は違うと述べた。

 孫崎氏は「経済的に安定すれば民主化する」と言う。かつてそう考えた日本の外務省は、米国と対立したという。ウズベキスタンに協力した日本の影響力が大きくなり「アメリカが慌てた」こと、当時の「『円』を国際通貨にする構想」を米国が嫌った経緯などを明かした。

 また、中国での出版やネットの発言の増大など、個人の自由増大を指摘。日本が、「表現の自由」でも中国に追い越されつつある懸念に触れた。その他、米国や中国など、リアルタイムで急激に変化する国際情勢について、広く深く語っていただいた。

▲元外務省情報局長・孫崎享氏(IWJ撮影)

<会員向け動画 特別公開中>

■ハイライト

■全編動画

  • 日時 2021年2月16日(火)18:30~
  • 場所 IWJ事務所(東京都港区)

「中国に最重要なのはミャンマーのパイプライン維持だから、『債務の罠』で港湾を奪うとは思えない」と外交の機微を熟知する孫崎氏の見立て!

 米国でバイデン新政権が誕生したことを受けて、岩上安身による、元外務省情報局長孫崎享氏の連続インタビューが始まった。2021年2月16日は第2回となった。

 冒頭、第1回インタビューで話題になった、ミャンマーのクーデターについてさらに掘り下げが行われた。第1回は、中国とミャンマーの関係、特にチャオピュー港湾計画が中国にとって持つ重要な意味について、岩上から問題提起をした。

 今回は、孫崎氏の方から「債務の罠」について新たな議論があった。孫崎氏は「中国がミャンマーを『債務の罠』にかけて、港湾を奪おうとしているとは思えない。中国がその港湾やパイプラインの使用料を支払うと、ミャンマーが豊かになって負債も返済できる。中国にとって最も重要なことは、このパイプラインを維持すること。良好な関係が維持できれば、パイプラインも維持できる」と主張する。

 中国にとって極めて重要な意味を持つからこそ、当事国と良好な関係を維持するだろうという見立ては、さすがに外交の機微を熟知する孫崎氏ならではの視点である。

▲チャオピュー港の中国石油輸送事業(画像:Wikipedia、Tetsuya Kitahata)

「民主化」は、米国による他国介入の戦略的スローガン! 介入でその国の生活はみんな悪化! 混乱が米国の利益になるから介入する!

 そして、ミャンマーで発砲まで起きたクーデター問題について、米国バイデン政権が民主主義を掲げて非難している事態についてお話しいただいた。

 孫崎氏は、「民主化」は、米国が他国に介入するときに繰り返し使ってきた戦略的なスローガンである、という。

孫崎氏「ある時突然に『民主化』を提示するんですよ。その国の政権がアメリカにとって都合が悪い時に、民主化を提示するんです。そして、その国の安定を壊していくんです。

 問題は、アメリカが介入して、民主化運動をやったときに、その国の人々の生活が良くなったかということ。みんな悪くなっているんです。

 その国が混乱した方がアメリカの利益になるから、介入しているんですね」

▲就任式で宣誓するバイデン米大統領(画像:Wikipedia、就任式合同委員会)

国の状況で「民主化」の意味は違う!! ウズベキスタンで「表現の自由」をやったらテロが起こる!

 孫崎氏は、ウズベキスタンに駐留していた時の体験から、それぞれの国の状況によって「民主化」の意味は違うという。

孫崎氏「ウズベキスタンの大使だったときの話です。カリモフ(イスラム・アブドゥガニエヴィチ・カリモフ、ウズベキスタン共和国の初代大統領1991-2016)は、(アメリカに)最も嫌われた大統領でした」

▲ウズベキスタン共和国のカリモフ初代大統領(画像:Wikipedia、www.kremlin.ru)

 孫崎氏によれば、同国のアリエフ外務次官は、「私たちの国における人権問題と、かつて同じソ連邦を形成していたバルト海沿岸の独立国、エストニアなどにおける人権問題はまったく違う問題だ」と語った。

アリエフ氏は「300人の人間がいたとして、『大統領を殺せ』と言う人間が1人いたとして、エストニアでは殺しに行く人はいない。だが、うちの国(ウズベキスタン)で、『大統領を殺せ』と1人が言ったら、少なくとも5人は確実に殺しに行く」と述べたという。

孫崎氏「『エストニアでは、「表現の自由」があっても、テロは起こらない。しかし、うち(ウズベキスタン)で「表現の自由」をやったらテロが起こるんだ』と。ある程度、制約しないと(国家を安定させて維持して)いけない」

岩上「私もウズベキスタンに入ったことがあります。だから、『5人は殺しに行く』っていう、その空気感は分かりますよ」

 孫崎氏は、「経済的に安定すれば、政治的には民主化に行く」と指摘する。ウズベキスタンでも、「カリモフは独裁だったけど、そのとき国は非常に貧しくて、イスラム過激派などのテロリストが入ってきてしまう状況だったんです。しかし、経済的に豊かになれば、テロリストは入っていけない」と語った。

▲ウズベキスタンの首都、タシュケント(画像:Wikipedia、Atilin)

日本の外務省は「豊かになれば民主化する」と考え、米国と対立!! 日本の影響力増大と「『円』を国際通貨にする構想」を米国は嫌った!!

 孫崎氏によれば、「当時、日本の外務省は、(その国が)今は独裁体制であっても、豊かになれば民主化していくという考え方」だったため、米国とも対立していたという。1994年ごろから、ウズベキスタンにとって日本が一番の協力国になり、日本の影響力が大きくなったため、「アメリカが慌てた」というのである。

孫崎「当時は『円構想』があったんです。『円』を国際通貨にしようと。アメリカはそれを嫌ったんですね。それで慌てて、ウズベキスタンにお金を出すようになった」

岩上「当時外務省がそんな考え方をしていたんですか」

孫崎氏「そうです。今は変わってしまいましたけどね」

中国は個人の自由が拡大!! 日本は「表現の自由」でも、中国に追い越されつつある!?

岩上「しかし、経済的に豊かになれば、民主化するというのは、中国のような強権国家の台頭によって崩れたのではないですか?」

孫崎氏「政府がどれくらい一般の人に影響を与えるか、個人がどれだけ政府に影響されずに自由に行動できるか、という問題ですが。

 中国は今、それぞれの個人の自由さが非常に増してきていると感じます。

 日本では出版もだんだんされなくなってきている。出版の機会が少なくなっているんですね。

 一方で中国はもうデジタル化して、どんどんネット上で発言している。どれだけ誰が自由に発言できるかというと、中国の方が発言する機会がはるかに多くなっている。

 日本は表面上は自由ですが、どんどん発言の場所がなくなってきていますよ。現実問題として、個人がものを書いて発言している場は中国の方が多い。中国の知識人と日本の知識人では、中国の知識層から出ている発言量のほうが、確実に多くなってきている」。

 日本のほうが「表現の自由」においても、中国に追い越されつつあるという事態が進行しているのかもしれない。

▲中国・北京(画像:Wikipedia、郭友柏)

 そのほか、トランプ氏弾劾裁判の意味、そして米国社会に拡がる格差がもたらす米国社会の不安定さ、バイデン大統領と習近平氏の初めての電話会談など、また日本の停滞など、今まさに世界で起こりつつある諸問題について、広く深く話していただいた。

 ぜひ、IWJの会員となって、岩上安身による孫崎享氏のインタビューを御覧いただきたい。

▲冒頭オープン【2/16 18時30分~ライブ配信】バイデン新政権始動! 強硬な対中国政策と「同盟再強化」は東アジアでの戦争発火へ(YouTube(32分ごろより本編開始))

 また、岩上安身による孫崎享氏連続インタビューの第1回もぜひあわせて御覧いただきたい。

 岩上安身による孫崎氏へのインタビューは数多くあるが、以下に2020年のインタビューをご紹介する。2019年以前のインタビューは、IWJホームページで「孫崎享」で検索して御覧いただきたい。

※これは日刊IWJガイド2021.02.17号~No.3079号に掲載された記事を加筆・修正したものです。

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