川内原発再稼働に疑問続出「火山リスク」「老朽化」「ヨウ素剤配布」「孤立集落の避難」 ~「九電まかせ」にするかのような規制庁担当者の無責任な姿勢に市民ら憤然 2015.6.29

記事公開日:2015.7.10取材地: テキスト動画
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(IWJテキストスタッフ・富田)

※7月10日テキストを追加しました!

 九州電力の川内原発1号機(鹿児島県薩摩川内市)の、2015年8月中旬の再稼働が濃厚になってきた。現在、最後に残る国の手続きの設備検査が着々と進行中である。

 川内原発が再稼働すれば、福島原発事故後に作られた新しい規制基準の下で、最初の運転例となる。しかし、再稼働の決定要因である、福島原発事故の教訓を生かしたとされる、原子力規制委員会(以下、原子力規制委)の「新規制基準」に対する評価には、幅がある。

 福井地裁が2015年4月に、高浜原発3、4号機の再稼働を禁止する住民らの仮処分の申し立てを認めた折には、「規制基準が緩やかすぎる」との指摘があった。だが、政府は「世界でもっとも厳しい安全基準に適合している、と原子力規制委が認めた原発は、その判断を尊重し、再稼働を進めていく」と表明している。では、当の原子力規制委の言い分はどうか。

 「新規制基準に適合している、ということを認めているのであって、安全性を担保しているものではない」──。

 彼らのコメントは常にこのようなものだが、それは、「原発の安全性に責任は持てない」との言明にほかならず、新規制基準を勝手に買いかぶっている、理系分野に疎い原発推進派の国会議員らを、どこかで軽んじているような印象すら受ける。

 2015年6月29日、東京都内で行われた複数の市民団体による政府交渉では、「新規制基準の過大評価は厳禁」と思わざるを得ない発言が、原子力規制委の事務局(原子力規制庁)担当者の口から飛び出した。川内原発の立地環境から重視されるべき「火山リスク」への対応で、原子力規制委が噴火の可能性を低く見積もっていることなどが示されたのである。

 新規制基準がらみだけではない。川内原発1号機は、老朽化の目安とされる運転開始から30年目をすでに過ぎているのに、法的対策が終わらないまま再稼働しそうな情勢なのである。また、事故が起きた時の住民の被曝対策や、すでに国が承認している避難計画にも問題が横たわっており、政府は現状認識すら十分でないことが浮き彫りになった。

 政府側の担当者らに向かって、何人もの市民から怒声が飛び、原子力規制委の姿勢を「九電まかせだ」と指弾する声も上がった。一方で、「原発事故は、地元住民と自治体で対処できる台風とはわけが違う」「絶望の中にも、希望を抱いている」といった、国としての対応を望む叫びも聞かれた。

記事目次

■ハイライト

  • 事前集会/火山モニタリングについて/高経年化技術評価について/原子力防災について
  • 日時 2015年6月29日(月) 13:00~
  • 場所 参議院議員会館(東京都千代田区)

高経年化対策の点で、法が守られていない

 政府交渉の前に開かれた集会では、政府への質問事項のポイント確認が行われた。

 まず、高経年化対策について担当した男性市民は、このように指摘する。

 「川内原発1号機は2014年7月の時点で30年目を迎えているが、高経年化に関する審査が終わっていない。このまま再稼働したら一大事だ」

 法律では、原発は運転開始から30年目までに、高経年化対策(技術評価とそれに基づく長期保全計画の策定)を行わねばならない、と定められている。これは、福島原発事故後に作られた新規制基準とは、別次元の話である。

 長期保全計画を、その後の保安規定に反映させる変更申請には、原子力規制委の審査と認可が必要だが、川内原発1号機は、その審査が中途の状態で30年目を超えてしまっているのだ。

 男性市民は、「われわれは政府への質問で、事務手続きの上で行われるべき対策が、蔑ろにされている点を突く」と訴えた。

 高経年化対策が未達成のまま、川内原発1号機が30年目を迎えたことについては、2014年7月2日に開かれた原子力規制委員会でも取り上げられている。男性市民は、「その際、坂内俊洋氏(原子力規制部安全規制調整官)は『2013年12月に申請を受け付けた状況が、この法令上の要求を満たしている』としているが、提出しさえすれば、法令を守ったことになるのか」と疑問を口にした。

毎日新聞のスクープでわかった孤立集落問題

 原子力防災・避難計画については、FoE Japanの満田夏花氏が説明し、安定ヨウ素剤の配布と孤立集落への対応の2つが主たる質問事項になるとした。

 ヨウ素剤の事前配布は、原子力災害対策指針では、原発から5~30キロ圏内(UPZ)の住民は対象外とされている。

 「ヨウ素剤は、その圏内の各所に備蓄されているわけだが、どこで配布され、どのように服用するのかが確認できていない。今日は政府の担当者を相手に、いちき串木野市を例にして追及したい」

 30キロ圏外についてはヨウ素剤備蓄の必要性すらない、とされているが、満田氏は、福島原発事故の際は、風向きによって高濃度の放射性物質が関東地方など広範囲に飛散したことを紹介。「今のところ、政府は原発事故との因果関係を認めていないが、子どもたちの甲状腺がん発症が30キロ圏外でも多発している」と訴え、30キロ圏外にヨウ素剤を配布しない理由は見当たらない、と力を込めた。

 2015年5月25日付の毎日新聞のスクープ記事によれば、全国の原発30キロ圏内の市町村に、大地震発生に伴う土砂崩れなどで孤立する恐れのある集落が約2300あり、合計で約20万人が住んでいるという。

 満田氏は川内原発の場合、孤立する恐れのある集落は16あり、そのうち15にはヘリコプターの着陸スペースがない、と指摘。「複合災害が発生した場合、孤立した住民らはどうやって避難するのか」と懸念を示した。

 半径160キロ圏内に、噴火したら火砕流の到達距離が長くなる「カルデラ」を複数抱える川内原発の火山モニタリングについては、原子力規制を監視する市民の会の阪上武氏が、巨大噴火の兆候を検知してから核燃料の搬出先を検討し、核燃料を取り出す、との九電の方針を、原子力規制委が認めている点について疑問をぶつけていく、と宣言した。

 阪上氏は、原子力規制委は「巨大噴火の予測は困難である」との火山学者らの指摘に真摯に耳を傾けるべきだと主張し、原子力規制委の「巨大噴火予知は可能」とする基本スタンスを強く否定。建っている場所が、過去に巨大噴火による火砕流到達が明らかになっている地点である以上、川内原発には「立地不適格」の烙印が押されてしかるべきだと主張した。

原子力規制委の立場は「巨大噴火の可能性は極小」

 その後、14時30分にスタートした政府側との交渉では、まず、九電が原子力規制委に提出した文書で、「川内原発では最大で15センチの降灰があっても、ディーゼル発電機のフィルターが詰まるまで約26時間の運転が可能であり、安全性に問題はない」としていることが疑問視された。根拠となっているアイスランドの噴火事例は、わずか0.5センチの降灰であるという、九電の見方を覆す指摘が、ある技術者によってなされたためである。

(…会員ページにつづく)

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「川内原発再稼働に疑問続出「火山リスク」「老朽化」「ヨウ素剤配布」「孤立集落の避難」 ~「九電まかせ」にするかのような規制庁担当者の無責任な姿勢に市民ら憤然」への1件のフィードバック

  1. @55kurosukeさん(ツイッターのご意見) より:

    川内原発再稼働に疑問続出「火山リスク」「老朽化」「ヨウ素剤配布」「孤立集落の避難」 ~「九電まかせ」にするかのような規制庁担当者の無責任な姿勢に市民ら憤然 http://iwj.co.jp/wj/open/archives/251030 … @iwakamiyasumi
    机上の空論、無責任、新たな原発事故が間近に迫る。
    https://twitter.com/55kurosuke/status/619805234060095488

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