原子力規制委員会は、9月10日に開催した定例会議において、鹿児島県川内原発1,2号機の安全対策について、新規性基準への適合審査の審査書案を承認した。これにより、審査書案は正式に審査書となった。
これに対して、原子力規制を監視する市民の会をはじめとした川内原発の再稼働に反対する市民らは、同日午後、参議院議員会館にて緊急集会を開き、「審議は形だけで不十分である」として抗議した。
主催は、国際環境NGOグリーンピース・ジャパン・原子力規制を監視する市民の会・福島老朽原発を考える会・FoE Japanの4団体。
- 川内原発の審査書案を受けて~地元の声 薩摩川内市より馬場園征子氏(川内つゆくさ会)、鹿児島市より松永三重子氏(川内つゆくさ会)
- 川内原発・審査書のこれだけの不備
- 火山審査:運用期間中の大規模噴火リスク、前兆現象を補足できるか
- 避難問題:そもそも対象とせず
- 汚染水:事故が起こった際の汚染水の漏出を考慮せず
- プロセス:専門家を入れずに審査。パブコメは形だけ
- 今後に向けて~保安規定と工事計画認可、地元同意など 阪上武氏(原子力規制を監視する市民の会)、鈴木かずえ氏(グリーン・ピース・ジャパン)、満田夏花氏(FoE Japan)
- 参加者、国会議員の発言など
- 日時 2014年9月10日(水) 13:00~
- 場所 参議院議員会館(東京都千代田区)
「川内は捨石にされるのか」
集会の冒頭、鹿児島県から上京してこの日の委員会を傍聴した馬場園征子さんと松永三重子さんは、それぞれ傍聴の感想を述べた。 松永さんは、パブリックコメントの内容が審査書にほとんど反映されずに形だけの会議で承認され、「川内は捨石にされるのか」と感じたと報告した。
火山検討チームは火山学者の問題提起を無視。
「原子力規制を監視する市民の会」の阪上武氏は、今回の審査の問題点として、火山の影響と汚染水対策について説明した。
火山の影響について、阪上は、規制委員会により立ち上げられた火山検討チームにおいて、火山噴火予知連絡会の藤井敏嗣会長が重要な問題提起を行うものの、検討チームにより無視されたことを報告。
審査書の火山影響評価では、火山噴火は予知可能であることについて、たった1つの論文に拠っていたのに対し、藤井氏の問題提起は、その論文は1つの火山についてのみ書かれたものであり、また、必ずしもマグマを検知して噴火を予知できるとは限らないと論文筆者に確認したというものだという。
この問題提起に対し、検討チーム座長の島崎邦彦原子力規制委員長代理が、「そこまで遡っての検討はしない」と回答し、これを無視したと阪上氏は報告。「これでは何のために火山学者を招いたのか、この言葉は許せない」と阪上氏は怒りを込めて報告した。
「安全神話への逆戻りだ」
川内原発についての汚染水対策は、事故発生の際、上から水をかけて叩き落とすというものだと阪上氏は説明。
ところが、福島原発事故では格納器から漏れた汚染水が、地下水と混じり、土壌および海洋汚染へとつながった。それを踏まえ、「川内でも地下水は発生していて、同様な問題は発生しないのか」というパブコメの指摘があった。これに対し、規制委は格納器からは漏れることはないと回答。それでは「安全神話への逆戻りだ」と阪上氏は強く批判し、明らかに新規制基準に違反していると主張した。
「広く公開で議論するのは大切なこと」