「このまま再稼働反対の世論の盛り上がりがなければ、7月4日の最終本会議で、県知事が再稼働を承認することになるかもしれない」ーー。
この日、鹿児島から参加した、「反原発・かごしまネット」の杉原洋氏は、伊藤裕一郎・鹿児島県知事や岩切秀雄・薩摩川内市長らが、再稼働を歓迎していることに強い危機感を示し、藁にもすがる想いを口にした。
原子力規制委員会による、新規制基準の適合性審査が最優先で進められている鹿児島県の九州電力川内原発だが、終盤にきて火山問題で揺れている。4月30日、「反原発・かごしまネット」を始めとする市民団体が集会を開き、火山の影響評価について、原子力規制庁を問いただした。
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敷地内に火砕流=原発立地不適合
原子力規制委員会が昨年策定した新規制基準には、原発への影響を考慮すべき自然現象の1つとして、地震の他に、火山の影響を盛り込まれている。
「原子力発電所の運用期間中に、火山活動が想定され、それによる設計対応不可能な火山事象が原子力発電所に影響を及ぼす可能性が十分小さいと評価できない場合には、原子力発電所の立地は不適切となる」
例えば、火山の噴火により流れ込む火砕流が、原発敷地内に到達するような可能性が低くなければ、立地不適切、つまり、廃炉を迫られる可能性も浮上するのだ。
1年はかかる燃料棒の移動
鹿児島県薩摩川内市に位置する川内原発は、「阿蘇」「加久藤・小林」「姶良(桜島)」「阿多」「鬼界」という、巨大噴火の後を示すカルデラを持つ、5つの火山に囲まれている。
約3万年前に大噴火を起こしたとされる、姶良カルデラからの火砕流は、当時、南九州一体を覆うほど広範囲に及んだという。九州電力はこれまで、火砕流の痕跡は近くまで来ているものの、原発敷地内には到達していないと主張してきたが、一転、規制委の指摘を認め、到達したことを認めた。
100km/hで流れる、500℃の火砕流
火砕流が敷地内に到達すれば、どんな事態を招くのか?
火砕流の温度は多くの場合、500℃を超え、速度は一般的に毎時50〜100kmとされる。敷地に流れ込んできた場合、原子炉施設を防御することは不可能だ。壊滅的な被害を避けるためには、噴火の予兆を事前に捉え、燃料棒を外部に移動させる必要がある。しかし、燃料棒を全て移動させるには、1年以上かかると見込まれており、九電はモニタリングによって、火山活動の状況を観測し、前兆を捉えることで、時間内に対処が可能だと主張する。
有識者会合は再稼働の後!?
モニタリングによって捉えた前兆がどれだけ正確なのか、という問題もさることながら、何を基準に巨大噴火に至る前兆と判断するのか、という問題もあるーー。
原子力規制委員会の島崎邦彦委員長代理は、直近の適合性審査会合の場で、規制委としても、有識者会合を設置し、巨大噴火の予知について議論を進める方針を示した。
しかし、これについて、規制庁の牧野裕也氏は、有識者会合の設置は、適合性審査と直接的に関係がないと回答。審査後、事業者が行うモニタリング結果について、事業者の評価が適切かどうかを判断する際のものだと主張し、再稼働後になる可能性を示唆した。
呆れかえる地元の男性