重大な警告が2015年早々、発せられた。鹿児島の桜島で大規模な噴火の可能性があるというのだ。
鹿児島地方気象台は1月6日、鹿児島県・桜島で、「噴火に伴い、大きな噴石や火砕流が発生する可能性がある」と発表した。2015年に入り、桜島の山体が膨張しているのが継続的に確認されたという。
膨張の原因は、活動を活発化させるマグマと、それにより発生した大量の火山ガスだとみており、噴煙が火口から上空約5千メートルに達した2013年8月の爆発的噴火と同規模か、それ以上の噴火が起きる可能性があるという。
2013年の噴火では、大量の火山灰が鹿児島市などに降り、火口周辺では噴石が飛び散るなどしたという。現在、火口は火山灰など砕石物によってふさがれており、気象台は「噴火が起きれば、火口から約2キロの範囲では噴石や火砕流に注意が必要」としている。
日本は今年、未曾有の自然災害の猛威にさらされるのだろうか。
「今の噴火が、姶良カルデラの巨大噴火の前兆だったとしてもおかしくない」
「桜島の噴火」と聞いて、まず思い浮かべるのが「川内原発」の存在だ。
川内原発は原子力規制委の新規制基準に基づいた適合性審査に合格し、もっとも再稼働に近い原発であると目されている。桜島、姶良(あいら)カルデラなどの火山リスクが指摘されながらも、規制委は、川内原発の運用期間中に超巨大噴火が起きる可能性は「十分小さい」と説明し、さらには「モニタリングで予知できる」などとも主張している。
こうした規制委の見解に対し、多くの火山学者が異を唱えている。火山学者で静岡大学教授の小山真人氏もその一人だ。
「今の桜島の噴火が、姶良カルデラの巨大噴火の前兆だったとしてもおかしくないですよね。そうではないという証拠は、今の火山学では誰も証明はできません」
小山氏は、今から3ヶ月前の2014年9月29日、多数の犠牲者を出した御嶽山の噴火の際に、IWJの緊急インタビューに応じてこう語った。小山氏は、毎日のように小規模噴火を繰り返す桜島(鹿児島県)の噴火が、姶良カルデラの巨大噴火の前兆である可能性は否定できないと指摘していた。もしそうであれば、我々は、巨大噴火のサインを目のあたりにしながらも何の手だてもうたずに漫然とやり過ごしていることになる。
今年に入って早々、鹿児島地方気象台が、桜島の大噴火を警戒するよう呼びかけたことは、3ヶ月前の小山氏の警告が的中したことを意味するのではないか。
もし、その噴火の予知が的中し、巨大噴火が起きた場合、懸念されるのは、川内原発への影響である。川内原発は、火山が巨大噴火を起こした際の対策について、十分に備えがあるとは言いがたい。
核燃料の搬出については、田中俊一委員長も「通常の輸送は、5年程度は冷やしてから※」行うと認めている。
火山の予知は難しい。事実上、不可能であるとすら言われる。仮に巨大噴火の予兆をつかむことができたとしても、原発を安全に停止させたり、大事故につながらないような対策をうてるかどうかは、また別の話である。事業者は即座に原子炉を停止し、核燃料を原子炉から取り出して、火砕流が届かない安全な場所に搬出する必要がある。それらのプロセスを踏むには、原子力規制委の田中委員長によれば、5年は費やさなければならないという。
燃料の冷却には5年もかかる。取り出すのはそれからなので、言いかえるなら、巨大地震の予知が可能だとしても、噴火の5年前に察知するのでなければ間にあわないのだ。
規制委や九電は、モニタリングを続け、異常を察知した段階で、「空振り覚悟で」原発を停止し、核燃料の搬出作業に着手する、としている。しかし、核燃料の搬出は間に合うのか、搬出先はどこを想定しているのか、といった疑問に対し、規制委は根拠を示すこともなく、「間に合う」と、ただ言い張っているのである。
小山教授は規制委や事業者のこうした主張を「夢物語だ」と断じる。
火山の「基礎」の部分から火山学の限界までうかがった小山真人氏インタビューを、1月8日20時に会員限定で再配信予定。ぜひ、この機会にご視聴いただきたい。
※小山真人氏のインタビューの元記事はこちら