【IWJジャーナル号外】ジェニファー・カヴァナー氏「米軍が第1列島線から撤退すべき理由」(後編)高市総理は「米国の軍事力なしでは裏付けられないような外交政策」で中国を挑発していると警鐘! 2026.10.27

記事公開日:2026.10.27 テキスト
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(文・IWJ編集部)

 IWJ代表の岩上安身です。

 「米軍は第2列島線まで撤収すべき」と論じるジェニファー・カヴァナー氏が、10月19日、再びグレン・ディーセン教授のインタビューに出演しました。番組のタイトルは「ジェニファー・カヴァナー:なぜ米軍は第1列島線から撤退すべきなのか」です。

  • Jennifer Kavanagh: Why the U.S. Should Pull Back From the First Island Chain(Glenn Diesen、2026年10月19日)
    https://youtu.be/I3uiRv_HsGI

 概要については、(前編)を御覧ください。今回の、ディーセン教授によるカヴァナー氏へのインタビューには、東アジア情勢と日本、特に高市総理の動きに対する興味深い指摘が多く含まれています。ほぼ全文を仮訳でお送りしますので、ぜひ(前編)とあわせて御覧ください。

 カヴァナー氏の論文「アジアに向けた『第2列島線』戦略」は、『IWJジャーナル』でもご紹介しました。ぜひ、あわせてお読みください。

 また、『IWJジャーナル』では、8月2日、グレン・ディーセン教授のインタビューに出演した際の、東アジア情勢に関連する部分をご紹介しています。

  • 「米軍は第2列島線まで撤収すべき」と論じるジェニファー・カヴァナー氏が、「日本のような国が、中国との軍事的競争をモデルとしている限り、決して安全を確保することはできない」と明言! 東アジア情勢で最も懸念されるリスクは、悪化し続ける日中関係と指摘!(IWJジャーナル、2026年10月13日)
    会員版 https://iwj.co.jp/wj/member.old/nikkan-20261013#idx-3
    非会員版 https://iwj.co.jp/info/whatsnew/guide/55778#idx-3

ジェニファー・カヴァナー:米国が第1列島線から撤退すべき理由(後編)
グレン・ディーセン
2026年10月19日

(続き)

ディーセン教授「経済的利益についてお話しされていましたね。つまり、私達は往々にして安全保障や防衛という観点だけで語り、通常は利他主義的な言葉に包んでしまうものです。しかし、こうした軍事的な関与の背後には、経済的利益も存在しています。

 具体的にはどのようなものなのでしょうか? 主に海運、つまり航路の支配が目的なのでしょうか?」

カヴァナー氏「ええ、つまり、米国が東アジア市場へのアクセスを確保することに利害関係を持っているという点には同意します。ただ、私はそれを少し違った表現で説明したいですね。米国には、他国に貿易条件を押し付けられるような状況に決して陥らないようにすることへの利害関係がある、と私は言いたいのです。

 それから、中国の地域覇権について考えるとき、私達が本当に懸念しているのは何なのでしょうか? これについて語る際、一部の人々は、中国が物理的に米国の市場へのアクセスを遮断すること、つまり物理的に米国が港に到達するのを阻止することを想定していると思います。しかし、東アジアにおいてはそのような事態が起こる可能性はそれほど高くないと私は考えています。

 というのも、現在の中国は、もし望めば南シナ海や台湾海峡への米国のアクセスを遮断できるでしょう。しかし、中国には米国がそれらの市場にアクセスできる状態にしておくことに利害関係があるため、そうしようとはしないのです。

 しかし、仮に中国がそうしたとしても、米国にとって壊滅的な事態にはならないと思います。米国は他の代替航路を利用できるからです。東アジアの海域には、多くの要衝や航行の選択肢が存在します。

 ですから、中国が米国による東アジアのすべての市場へのアクセスを物理的に遮断できる可能性は、私から見れば、あり得ないと思います。(中略)

 より大きなリスクは、もし米国が過度に後退した場合、中国の経済的・政治的影響力が強大であるため、実質的に日本や韓国に対して、関税やその他の種類の制限措置を用いて、米国がこれらの市場で貿易を行うことを阻止するよう強要してしまうことだと思います。

 しかし、もしそれが懸念事項であるならば、その解決策は軍事力の増強ではありません。解決策は、これらの市場における米国の経済的影響力を維持し、特に日本や韓国において、中国がそのような結果を招きかねないほどの政治的・経済的支配力を獲得することを防ぐような、米国の経済戦略にあるのです。

 つまり、この地域で米国が軍事的に何をすべきかを考える際、 確かに、航路に対する脅威への備えは重要です。海上輸送を保護する能力がまったくないような状況には陥りたくないでしょう。しかし、米国が従来目指してきたような、いつでもどこでも、海上の共有水域を普遍的かつ、誰にも争われることのない形で支配することまでは必要ありません。

 必要なのは、護送船団の護衛や、米国の商業船舶が利用できるよう特定の航路を確保するといった、制御の『窓』を作り出す能力です。私は、それが達成可能な目標だと主張したいと思います。ですから、私が報告書で推奨している、第2列島線に沿った駐留は、その第一歩となるでしょう。

 つまり、脅威が発生した場合、特定の重要な航路やアクセスポイントを保護するための作戦を開始できるだけの十分な戦力をそこに維持し、その後、その作戦を補完するために、十分な追加のローテーション要員と軍事資産、つまり艦船や航空機を確保できるようにする、ということです。

 これらはいずれも機動性が高く、少なくとも航空機は、その作戦を補完するために非常に迅速に移動させることができますから。しかし、より重要な結論や提言としては、米国には経済戦略が必要だということです。そして、トランプ氏が最初の任期中に、TPPに参加しないことを決めて以来、米国には実質的にそれがない状態が続いています。

 ご存知のように、バイデン政権にはIPEF(インド太平洋経済枠組み)がありましたが、あれは冗談のようなもので、アジア諸国からも嘲笑されていました。

 それがなくなった今、私達には何も残っていません。つまり、肝心なのは経済戦略なのです。

 この報告書で私が受けた批判のひとつは、軍事的存在を縮小すれば経済力を失うというものでした。これは、何らかの形で米軍の駐留が経済的なアクセスを確保しているという前提にもとづいています。しかし、その主張を裏付ける証拠はまったくありません。

 10年以上前、ランド研究所に在籍していた頃、米国の経済成果と米軍の駐留との間に何らかの関連性がないか調べてみたんですが、データにはまったく相関関係が見られませんでした。ですから、軍事的存在を縮小すれば、経済的なアクセス権を失うという主張には納得できません。

 もしかすると、これらの国々に武器を販売する能力を多少失うかもしれませんが、米国の外交政策が、防衛関連企業の利益にもとづいて決定されるべきだとは思いません。

ディーセン教授「とはいえ、ここ数十年の間に、米国の軍事的な考え方に大きな変化がありました。というのも、経済的アクセスを得るには軍事的存在が必要だという前提が、ずっとあったからです。

 伝統的に、米国は、かつての英国と同様、常に、自国が主導的な役割を果たさない力の均衡を確立することに目を向けてきました。つまり、 ご存知の通り、この『オフショア・バランサー』戦略では、英国、そして米国は、戦争に遅れて参戦するのです。なぜなら、主な関心事は、戦争の終結時に新たな勢力均衡が確立され、東アジアにおける中国の支配のような、いかなる勢力も支配力を主張できないようにすることにあるからです。

 でも同時に、過度な存在感を示さないようにする。そうしないと、他のユーラシアの列強が、代わりに米国を牽制し始めるからです。つまり、全体としての論理は、米国が後退すればその力を温存でき、その代わりにユーラシアの列強同士が互いに牽制し合うというものです。

 ただ思うのですが、もし中国が突然、韓国や日本を脅かし始めたとしても、この論理は通用するのでしょうか? 現時点では、インドも、中国と良好な関係を築いていますし。ロシアもまた、中国を最も重要なパートナーと見なしています。この地域の他の多くの国々も同様です。

 しかし、もし中国が近隣諸国に対する支配を求め始めたら、その親しい友国の多くが中国に背を向け、そうなれば、やはり均衡が生まれるでしょう。自然な勢力均衡が回復するはずです。

 しかし、米国が外部に立ち、力を回復しつつある今、すべてのユーラシア諸国による『集団的均衡』の対象となっている状況とは異なり、やはり、それは、まあ、その分析に同意する必要はないでしょうが、かつては物議を醸すような話ではありませんでした。つまり、それがかつての主要な戦略だった、というのが私の言いたいことです。

 しかし、もしこの、いわゆる『撤退』こそが米国が目指すべき道だとすれば、あなたの見通しにおいて、米国の同盟関係の将来はどうなるのでしょうか?」

カヴァナー氏「米国が後退した場合、最も可能性の高い結果は、他の東アジア諸国によるバランス戦略になるという点には同意します。日本と韓国は防衛費を増額し、おそらく、オーストラリアともより緊密に連携して、中国の勢力に対抗しようとするだろうと思います。

 私の見解が間違っていると言う人々もいて、彼らは、日本はむしろ、中国と何らかの妥協点を見出すことが最善の結末だと判断するだろう、とか、あるいは、これらの東アジア諸国は、中国に対抗するには弱すぎるという意見もあります。

 私は、その意見には同意できません。私は、それらの国の能力についてより楽観的な見方をしていますし、また、日本や韓国の関係者へのインタビューからも、彼らの対応は中国とのバランスを図る方向になるだろうということが示唆されています。それが、私がこの件をそれほど物議を醸すものではないと考えたもうひとつつの理由であり、また、私が、 中国の地域覇権というリスクについて、それほど心配していない理由でもあります。

 ご存知のように、スティーブン・ウォルトは『IS』誌の中で、中国が地域覇権を確立しようとする際に直面する課題について論じており、地理的要因や水域の重要性を指摘し、中国が軍事的覇権を築くことがいかに困難であるか、また、他国のナショナリズムや均衡を図ろうとする意欲についても言及しています(※)。ですから、私はその議論には同意します」。

(※)スティーブン・M・ウォルトが2025年春、『インターナショナル・セキュリティ』誌に発表した「覇権の回避:中国への対応をめぐる現実主義者の議論」を指す。
・Stephen M. Walt, Hedging on Hegemony: The Realist Debate over How to Respond to China, International Security, International Security, 2025 Spring, Vol.49, No.4
https://www.belfercenter.org/research-analysis/hedging-hegemony-realist-debate-over-how-respond-china

カヴァナー氏「つまり、私は、米国が、この地域の国々との安全保障上のパートナーシップ──そこには、ある種の取引的な関係や共通の利益をめぐる短期的な協力といった関係を含む──地域諸国との安全保障上のパートナーシップから恩恵を受けられると信じています。

 しかし、現在の形での同盟関係には賛成できません。なぜなら、それらはあまりにも広範すぎる上、米国を、いくつかの理由から逆効果だと私が考えるレベルの支援に縛り付けてしまうからです。

 第1に、米国の安全保障の保証は、根本的に同盟国のインセンティブを歪めてしまうと思います。それは、同盟国が防衛費を十分に支出しないように仕向けてしまいます。なぜなら、米国が後ろ盾として存在することを知っているからです。

 第2に、それは同盟国に、 米国の軍事力なしでは実際には裏付けられないような外交政策を採用させることが多いと思います。高市政権下の日本は、その良い例だと思います。彼女は、中国に対して非常に攻撃的で挑発的な姿勢をとっていますが、もし米国の安全保障の保証が後ろ盾になっていると思っていなければ、彼女がそのような姿勢をとるかどうかは定かではありません。

 ヨーロッパのバルト諸国やポーランドなどでも、同様のことが見られます。イスラエルでも、同様の現象が見られます。ですから私は、安全保障の保証というのは非常に逆効果だと考えています。

 私が望むのは、米国が、こうした安全保障の保証を撤廃し、アジアだけでなく、他の地域も含め、すべての国々──韓国、日本、フィリピン、オーストラリアなど──との関係を見直し、安全保障の保証を含まない、限定的で共通の利益に焦点を当てたパートナーシップを築くことです。

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