2025年12月5日午後4時30分頃より、東京都千代田区の外務省にて、茂木敏充外務大臣の定例会見が行われた。
会見冒頭、茂木大臣からの報告事項はなく、そのまま各社記者と茂木大臣との質疑応答となった。
IWJ記者は、前回(11月28日)の定例会見での質疑に続き、以下の通り質問した。
IWJ記者「重ねて、日中関係について質問します。
11月28日の大臣会見にて、茂木大臣は、『我が国の台湾に対する基本的な立場は、1972年の日中共同声明の通りである』とおっしゃいました。
これは、台湾との国交を断絶した上で、中国を正式な政府として承認し、『一つの中国』という考えを尊重し、戦争状態を終わらせて、中国との国交を回復したという日中共同声明のスタンスを、日本政府が今も維持していることを明言されたものと思われます。
大臣はまた、『台湾をめぐる問題は、対話により平和的に解決されることを期待する』ともおっしゃいました。この『期待』という言葉であれば、軍事介入を示唆したなどと受け取られず、共同声明とも矛盾しません。
茂木大臣のこの見解は、非常に賢明なものであり、この見解の方向性で閣内を一致させ、高市総理の『存立危機事態』発言を訂正し、事態の収拾を図ることで、速やかに日中関係正常化を実現すべきだと考えますが、茂木大臣の御意見をお聞かせください」
この質問に対し、茂木大臣は以下の通り回答した。
茂木大臣「私の発言について評価していただいたことについて、感謝申し上げます。
その上で、御質問、いくつかの点で、政府とは異なる認識、これにもとづいたものでありまして、改めて政府の立場、これを申し上げたいと思います。
まず、『存立危機事態』の認定に係る政府の考え、これは、いかなる事態が『存立危機事態』に該当するかについて、『実際に発生した事態の個別具体的な状況に即して、政府がすべての情報を総合して、判断する』というものであります。
こうした説明は、平和安全法制成立時の安倍総理以来、政府として、繰り返し述べてきているところでありまして、政府の立場は一貫したものだと思っています。
また、先日申し上げた通り、我が国政府の台湾に対する基本的な立場は、1972年の日中共同声明の通りであります。
そして、台湾をめぐる問題、これが対話により、平和的に解決されるということを期待すると。これは、我が国の従来からの、私の個人的な見解ではなくて、我が国の従来からの一貫した立場であると、こんなふうに考えております。
その上で、日本側は、日中間の対話について常にオープンでありまして、課題と懸案と、こういったものは隣国でありますから、これは中国に限らず、韓国であってもそうでありますが、そういったものがあるからこそ、やはり、しっかり議論する、対話を重ねることによって、この課題や懸案というものを少しでも減らす。
一方で、協力できる分野というのもあるわけでありますから、理解と協力を広げていくと。
こういったことが、重要だと考えています」
「存立危機事態」の認定に対する上記の茂木外務大臣の回答は、高市総理の発言とは、はなはだしく乖離している。
高市総理は、国会での答弁でも、従来からの政府の統一見解である「実際に発生した事態の個別具体的な状況に即して、政府がすべての情報を総合して、判断する」と言いながら、その一方で、「北京政府が戦艦を使って、武力の行使も伴うものであれば、これはどう考えても存立危機事態になりうるケースだと私は考える」と断言し、野党からの発言撤回要請にも応じなかったのだから、「政府の立場」と矛盾していることは明らかである。
11月28日に、経団連の筒井義信会長が、中国の呉江浩(ごこうこう)駐日大使と東京都内で面会し、来年1月に予定されている経済代表団の北京訪問の受け入れを要請した。
また、12月1日には、超党派の日中友好議連幹部が、同じく都内で呉大使と面会し、2025年中の訪中を目指す意向を伝え、日中両国の緊張緩和に向け、議員間の交流継続の重要性を訴えた。
これに対して、12月2日、中国外交部(外務省)の林剣(りんけん)報道官は、定例会見にて、上記2団体の訪中の受け入れについての明言を避けつつも、「関連報道に留意している。日本国内の有識者達が、高市総理の台湾関連の誤った発言の悪影響と深刻な結果に、深く憂慮していることにも留意している。日本の関連団体が、日本国内で積極的な役割を果たすことを望む」と述べた上で、高市総理の「存立危機事態」発言について、改めて撤回を要求した。
会見の詳細については、全編動画を御覧いただきたい。


































