【IWJ号外】穀物協定の停止と、オデッサ攻撃は表裏一体のロシア戦略!? 米国の独立ネットメディア『デュラン』のクリストフォロウ氏とメルクーリス氏が、穀物協定について掘り下げたトークを公開! 2023.7.27

記事公開日:2023.7.27 テキスト
このエントリーをはてなブックマークに追加

(文・IWJ編集部)

 IWJ代表の岩上安身です。

 7月17日、黒海穀物輸出協定をロシアが延長しないと表明し、昨年の7月以来1年間にわたって継続・延長されてきた穀物協定が失効しました。

 ロシアは即日、ウクライナ最大の港湾であるオデッサに攻撃を仕掛け、この海域を通行するウクライナの船舶は全て攻撃の対象になると宣言しました。翌日、ウクライナも、同じようにロシアの船舶全てを攻撃対象にすると宣言しています。

 日本を含む西側諸国もマスメディアは一斉に、「ロシアが世界を飢餓に陥れる」、「ロシアがウクライナの穀物拠点を集中攻撃した」、「ロシアのオデッサ攻撃で6万トンの穀物が失われた」などと非難しました。

 しかし、なぜロシアは黒海穀物協定に合意したのか。そして、なぜ離脱したのか。そもそも黒海穀物協定の条件とはなんだったのか。そうした、基本的な事柄を、今回きちんと報道しているマスメディアはほとんど見かけません。

 IWJは、独立ネットメディア『デュラン』で、アレックス・クリストフォロウ氏と、アレクザンダー・メルクーリス氏が、今回のロシアの穀物協定の離脱とオデッサ攻撃は、ロシアが1年かけて練り上げてきた戦略であると解説する対談に注目しました。

 この解説を聞くと、ロシアと、ウクライナ及び西側諸国は、武力による戦いだけでなく、高度な外交交渉を行い、そのゲームは知的な「頭脳戦」の様相を帯び、そして「頭脳戦」でロシアがこのラウンドのポイントを取ったことがわかります。同時に、オデッサをミサイルで空爆して破壊したことで、ウクライナが防空体制について自慢してきたプロパガンダが、怪しいものであることも明らかとなりました。

 『デュラン』は、アレックス・クリストフォロウ(Alex Christoforu)氏と、アレクザンダー・メルクーリス(Alexander Mercouris)氏による、会員制のニュースメディアのコミュニティ・プラットフォームです。米国の独立メディアのひとつ、と言ってよいでしょう。

 クリストフォロウ氏とメルクーリス氏が登壇する『デュラン』については、米大統領選に出馬表明したロバート・F・ケネディ・ジュニア氏が、米国のネオコンについて語った回を、「全てのアメリカ人が聞くべき」と高く評価しています。

 ケネディJr氏が絶賛した『デュラン』のネオコン分析について、IWJでは日刊ガイド7月18日号で取り上げていますので、ぜひ、御覧ください。

 クリストフォロウ氏とメルクーリス氏は、今回のロシアの穀物協定の離脱は、西側諸国とウクライナが決してその条件を守らないことを見越したロシア側の熟慮された戦略であり、ロシアはこれによって中国やインド、アフリカなどのグローバルサウスの支持を取り付けながら、事実上の黒海封鎖を可能にした、と分析しています。

 また、米国をはじめとする西側諸国とウクライナ側は、クリミア橋の爆破など、クリミアへテロ攻撃を仕掛けて穀物協定の停止を招き、結果としてウクライナは60億ドルの輸出収入を失うことになるだろうと述べています。

 両氏は、穀物協定の停止によって本当に困ることになるのは、欧州諸国であり、アフリカ諸国ではない、と指摘しています。ウクライナからの安い穀物の恩恵に預かっていたのは、ほとんどが欧州諸国であり、ウクライナからは、「最貧国」やアフリカ諸国にはほとんど輸出されていなかったからです。

 IWJは、両氏の番組を全文仮訳しました。ぜひお読みください。

― – ― – ― – ― – ― – ― – ― – ― – ― – ― – ― – ― – ― – ―

アレックス・クリストフォロウ(Alex Christoforu)
アレクザンダー・メルクーリス(Alexander Mercouris)

クリストフォロウ「アレクサンダー、穀物協定について話そう。我々はまだ穀物協定についてのビデオを撮っていない。しかし、多くのことが起こった。どこから始めようか?

 私が理解するところでは、ロシアが穀物協定から手を引くというよりも、穀物協定を3ヶ月間期限切れにしてほったらかす。プーチンに言わせれば、ウクライナと西側諸国、つまりEUのグループはともに、ロシアが提示した条件に合意できるまで、さらに3ヶ月間猶予がある、ということではないのか。

 3カ月経てば、穀物協定が再開されるかもしれない。そうでなければ、正式に終了したということだ。私は契約の詳細を簡単に要約しているつもり、それが私の一般的な理解だ。つまり、穀物協定があった……そして穀物協定の後は? ……言葉は悪いが、これは『黒海の封鎖』と呼べるかもしれない。

 私にはわからないが、ロシア国防省がオデッサに入港する船舶について述べたこと(※IWJ注1)を、別の言葉で表現できるかもしれない。そして、このロシア国防省の発表に対する西側諸国の反応がある。

 では、ことの始まりから、今日の状況までを説明していこうか」。

メルクーリス「そうだね、そうしよう。この穀物協定は当初、ロシア、ウクライナ、トルコ、国連の間で合意され、昨年7月2日に開始された。つまり、『オデッサや他のウクライナの港から穀物を運ぶ海運を、ロシア側は妨害しない』という取り決めだった。

 さて、ここが重要な点であり、強調しておきたいのだが、ロシアは特別軍事作戦が開始された時点からこの時点まで、ウクライナの穀物船を妨害していなかったし、ウクライナの港に正式な封鎖を課していなかった。

 当時、ウクライナの船舶はさまざまな理由でオデッサから出港していなかったが、そのひとつの理由は、ロシアの水陸両用上陸作戦を想定して、(ウクライナ軍が)オデッサへのアプローチに大量の機雷を仕掛けたことだったと思う。

 彼ら(ウクライナ)の船は、この機雷原を通過することにあまり乗り気ではなかった。だから、そのときは封鎖されることはなかった。

 しかし、ロシアはこの協定に合意した。ウクライナの船が出港できるようにするために、機雷原が除去されるから。ウクライナは自国の機雷原を除去できる。

 その見返りとして、(ロシアから)いくつかの条件が出された。

 第一に、EUは、ロシアの穀物、肥料、その他の農産物の、EUの港を通した再輸出に対して科している制裁をすべて解除すること。

 EUは、ロシアの港とEUの港からロシアの穀物を輸送する船舶に対する保険制裁を解除し、ロシアのある銀行(ロシア農業銀行)をスウィフト銀行間決済システムに再接続し、ロシアへの支払いを受けられるようにする仕組みを構築する。これが最初の6ヶ月の協定の条件だった。

 何が起こったか。今起きている紛争だけでなく、ウクライナ危機が始まった2014年以来、同じようなことがたびたび起こっている。オレンジ革命まで遡ってもいい。条件は合意された。だが、ウクライナは協定を履行しないし、EUも履行しない。

 6ヶ月が過ぎた。ロシア農業銀行はスイフトに再接続されておらず、ロシア船への迅速な保険も提供されていない。EUの港を経由してロシアの食糧や肥料を手に入れることにはまだ障害がある。しかし、その一方で、ウクライナの船は、オデッサや別のウクライナの港から出航している。今、私が言ったことは議論の余地がない(事実だ)」。

※ここから先は【会員版】となります。会員へのご登録はこちらからお願いいたします。ぜひ、新規の会員となって、あるいは休会している方は再開して、御覧になってください!
https://iwj.co.jp/ec/entry/kiyaku.php

(会員限定・続きを読む :https://iwj.co.jp/wj/member/archives/517712

― – ― – ― – ― – ― – ― – ― – ― – ― – ― – ― – ― – ― – ―

(…会員ページにつづく)

アーカイブの全編は、下記会員ページより御覧になれます。

一般・サポート 新規会員登録

関連記事

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です