※以下、実況ツイートをリライトし再構成したものを掲載します
日米不平等の頑強としての地位協定と、寝返った仲井真氏
吉元氏「駐日米大使だったウォルター・モンデール氏の証言で、在沖米軍を撤退させないように日本政府が米側に求めていたことがわかった。また、真剣に沖縄からの基地撤退を考えていたことも明らかになった。そして、日本の政治の中で、沖縄の基地をなんとかしようという動きもあった。しかしながら、民主党政権時代、防衛大臣が官僚と結託して、鳩山さんをつぶした、と沖縄は見ている。
沖縄は『基地を沖縄から出せ』と言っているだけ。『米国へ帰れ』とは言っていない。『日本の本土へ移して欲しい』と言っている」
岩上「アメリカ兵が沖縄で不祥事を起こしたとき、日本が主権を行使できないのは日米地位協定のためだ」
吉元氏「それは沖縄が悩んでいることですよ。それでは主権国家とはいえないですよ。
いかに日米地位協定が不平等条約であるかということが、本土であれば明白になるから(基地の本土移設がかなわない)。『沖縄に基地をおいてくれ』という天皇メッセージがあるんです。本土の講演会で話しても、歴史的事実として受け止められるだけ。今、日米同盟をアピールするために、集団的自衛権まで持ち出してきている」
岩上「イスラム国との問題も、日本が自ら巻き込まれようとしている。軍事国家への動きについてどう思いますか?」
吉元氏「憲法九条の形骸化がねらいでしょう。来年の通常国会に出てくる自衛隊法が本質的に憲法の改正につながっていく」
岩上「辺野古埋め立てを最終的に承認した仲井真知事、その決断が許されるかを問う選挙だと思う。他の3人の候補にはインタビューした。仲井真さんは取材拒否をして、逃げた。繰り返し言うが、『IWJは考え方の違うメディアだから』といって拒否をした」
吉元氏「沖縄にかかる過重な負担をどうするのか。『軽くして』という要求はするべきだ、と彼(仲井真知事)は言ってはいる。しかし、普天間の機能停止を要求したり、とすり替えた議論をしている。官邸の枠内で考えていますよね」
岩上「(仲井真知事は)官邸の代理人として、国との約束が上位にある」
吉元氏「その通り。仲井真知事は、官僚時代の経験を活かして政府から金を引き出してきたという功績はあるが」
基地返還への取り組み―――大田昌秀県政時代から続く試行錯誤
吉元氏「ソ連が崩壊して、いつまでも軍事基地が沖縄にあっていいわけないだろうと、1998年、大田昌秀・琉球大学教授を説得して県知事選に立候補してもらった。
20年間で沖縄の基地をゼロにするというのが『基地返還アクションプログラム』。あの計画のとおりであれば、2015年にはなくなっていた。冷戦の終焉は、基地のない沖縄をめざそうという県民の動きを潰していく大きなきっかけになってしまった。そして沖縄革新県政をつぶすことにもなった。大田県政は2期目で終わる。その後16年間、基地容認が続く。でも(仲井真氏の立候補に際し)、それでは(選挙に)当選しないよ、ということで普天間県外を唱えておきながら、裏切った」
岩上「仲井真氏はウチナンチュだろうけど、中身はヤマトンチュのような人だと思う」
吉元氏「知事がやりたかったんだろうと思う。でも(結果的に)基地の受け入れを決めて、実現しようとしているわけだ。
辺野古沿岸海域は、自然環境の厳正な保護をする必要のある区域。『ランク1』として指定されている。屋久島と一緒に自然遺産に登録させようという計画もあった。
学者は『指一本触れてはいけない』と言っている。このことを議会で決めておきながら、結局ボーリングが始まった」
岩上「仲井真氏は、はじめ普天間基地の県外移設を唱えておきながら転んだ。選挙戦略のために、腹の中にない県外移設を主張したが、ぎりぎりで寝返った。
一方で鳩山さんは県外移設に関して本気だった。仲井真氏と鳩山氏の2人は全く違うと思うが、どうですか」
吉元氏「そう思う。仲井真氏は非常に喜んで『いい正月が迎えられる』とさえ表現した。
県民は『何を考えているんだ、お前さんは』と思っただろう。大田県政時代は国から4800億円を引き出していたが、その後3000億まで減っていく。そして、3000億に少し上乗せして『いい正月』と言って大喜びなのだから。見せかけでしかない。仲井真氏は県民よりも国の政策に乗ったという話。41の市町村長が署名捺印して、東京の安倍首相に渡したあと、埋め立ての命令が出た。
沖縄の国会議員はすべて県外移設をとなえて当選した。しかし自民党幹事長のもとですべてひっくりかえされた。最後にひっくり返されたのが仲井真知事。もはや土台が変わったのだから、(仲井真氏は)次の選挙も安泰だろうと考えたのだろう。仲井真対翁長。
沖縄の基地問題は異常な、人権の問題。この状況を自国政府に言ってもダメだから、国連という場が私たちの新たな運動対象になり始めている。糸数慶子さんが国連の人権の会議に出たりしている」
基地返還後の悲願「東アジア交易の中心としての沖縄へ」
岩上「11月16日に決着がつく。翁長さんが勝てばいいが、負けたら……」
吉元氏「そのときは新たな県民運動が起こります。普天間県外移設は80%を超えた県民が望んでいる。(翁長氏が勝ち、交渉が進めば)海兵隊が出て行く。沖縄本土から、嘉手納基地、ホワイトビーチ、陸軍基地以外が全部出て行くんです。すごいですよ。ガラッと空くんです。
私たちが当初描いていた2015年までの基地返還と組み合わせた『国際都市形成構想』。経済特別区。2015年12月、ASEAN10カ国が共同体に移行する。そこに加わるため、日中韓が本格的に交渉に入る。FTA(自由貿易協定)のもと、13カ国の経済圏が一緒になる。そこにオーストラリア、ニュージーランド、インドが手を挙げて16カ国。世界の人口の4割強。これからの世界の発展の場となると見ている。
そのど真ん中が沖縄。海兵隊全部出せば、那覇軍港が空く、兵站基地が空く。そこに沖縄を中継地とする貿易の人、モノ、情報のセンターを作ろうと、大田県政の時に目指していた。沖縄が日本全体の中心となる。そういう場に作り変えていく」
岩上「ハブのような役割を担うわけですね。これまでは物流のインフラが整っていなかったけれど、LCCが使えるようになってきて、沖縄の輸送が軌道に乗る。追い風になっていると聞いている。
日本がどう発展するか、それを描く人がいたとしても、官僚に潰される。官僚はどこ見ているか。アメリカ。日米安保のもとで、奴隷のように従っている」
吉元氏「安保があくまで必要なら、自前の国家づくりとしての安全保障の仕組みを描くこと。基地を撤退させていくなかで、アメリカとの関係をつくるべき。それが見えない。だから沖縄は切り捨ての対象となる。問題はそれ。絵を描く人がいない」
岩上「描く人がいないということもあるし、描いたって稚拙、ということもある。描こうとする人がいたとしても鳩山氏、小沢氏みたいに潰される。日米安保体制が日本の戦後の国体のようになっている」
吉元氏「小さな政党がたくさんできたが、いくら作ったとしても、選挙でお互いに潰し合っている。結果、自民党の議席が増えた。どうしたらいいか。自民党の権力を弱らせなければ。そのために議員を少なくしなければ。統一戦線を作らなければ。
復帰前、アメリカと対決し、労働組合が主導し、統一戦線の場を政党にはたらきかけて、統一候補の名のもとに、議員選挙をして勝ってきた。それをオールジャパンでもう一回やったらいいんです」
岩上「しかし現実には、ばらばら」
吉元氏「組長選挙をしっかりしないと。まず市町村で勝つこと。我々はそこからはじめた。それで沖縄は生き延びてきた。
これからどうするか。保守対革新、そういうのを抜きにしよう。今日の東アジア、そのなかで、どういう政治、経済が行われているのか、そこにもう一度目を向けたい。もう軍事力で気に食わない国をつぶすという時代ではない。
東アジアを見た場合、どの国と、どの国が戦争の準備をしているんですか」
岩上「日本はしてますね」
吉元氏「日本だけ? 日本は『中国もしている』と言っていますよ。でも中国は、戦争を宣言してやったことが一度もない。
沖縄から見れば……日本は、ちまちましていると思いますよ。沖縄は自分で絵を描こうと90年代からやってきた。そして今、実現する段階に来た。今回、噂の彼(翁長氏)が当選したら、そういう仕組みに切り替えていくと思う」
岩上「翁長氏は保守で、仲井真氏の腹心でもあった。辺野古推進をやってきた。そういう人が割れて、辺野古反対となった。私もインタビューをして、気迫は伝わってきたが、多くの人にとって、不安なのだろう」
吉元氏「保守と革新が争って、権力を獲得したとして、沖縄がどういった意味をもちますか。2つ目に、争っている中身はなんですか。基地問題ですか、経済問題ですか、それとも、地域社会における命と生活の問題ですか。沖縄の場合は基地問題です。
基地問題で統一できるなら、右、左をなくそうというのが、今回の知事選挙。翁長氏はかつて自民党の中心だったし、いまもって全部頭をきりかえたとは思わないが、少なくとも普天間基地県外、このことの意味。わたしたちも話をしてよくわかった。そこで一致させる意味がある。日米政府はそれを許容しないから。県民ぐるみで実現してみよう。これが従来とはまったく違った枠組み。それが可能か、ということはある。(翁長氏が当選してから)裏切ったら、どうなるか? リコール。
有権者に信頼をおいて一緒に歩いてみようとしなければ。そのことが日米政府が一番きついんです。それをやってみようよと。そういう時期に入った」
無謀な原発政策と右傾化する本土―――新しい「絵を描く」ことのできる政党を
吉元氏「来年の12月、東アジア全体の、私たちの描いた絵が実現するとすれば、東京よりも、沖縄が開かれた拠点になりますよ」
岩上「そうであってほしいと思います。しかし、自民党の改憲草案が通るような国であれば、こんな国ではもう暮らしたくないと(いう人が出てくる)。原発をかかえたまま、戦争を行おうなんて、自滅ですよ。いくらイキがっていても。『そんな国から亡命したい、沖縄国に移りたい』という人だっているくらいです」
吉元氏「1960年前後、沖縄にも原発の話が出たんです。僕らがまっさきに潰しましたけれど。本土の50機近い原発、本当に怖いです。ましてインドに売る、などと」
岩上「日本海側に原発を立てておきながら、中国に喧嘩を売る、なんて」
吉元氏「おそらく翁長氏が負けるということはあり得ないでしょう。それより当選後、県政の体制をどう作っていくのか。中国を横目に見ながら。東京を見てばっかりではダメ。国際的な貿易、交易では沖縄はメイン。直行便が韓国、中国から来るから。東アジアの中で、沖縄はセンターだという意識をもって、全力を入れられる体制が要る。スピードを求められている」
岩上「基地依存経済は幻想にすぎないと」
吉元氏「その通り。軌道交通を早めに入れるというのが沖縄の緊急の課題。同時に安全問題。海兵隊の質が悪くなったというのが、沖縄でもっぱらの噂。軍事基地があるところに全部しわ寄せが来る。
本当は必要のない海兵隊を、日本の政府がおいてくれと要請しているということは、全国に知ってもらいたいこと。
第二次大戦の時もそうだったが、軍隊の本質は国土を守ること。国民はその次でしかない」
岩上「(基地問題の)原点は天皇メッセージ。沖縄に集中させてくれ、という内容だった。自主防衛をしよう、という覚悟がなければ」
吉元氏「だったら(沖縄が)自分でやるから」
岩上「沖縄防衛隊ですかね?」
吉元氏「嘉手納基地は沖縄と東アジア全体が落ち着くまで、残しておけばいいでしょう」
岩上「石破さんも講演会で言っている『米国を巻き込む論』。でもアメリカは巻き込まれませんよね」
吉元氏「露骨ですよ。米軍基地を指一本触らなくていいということですよ。だったら自立させてくれと、当分嘉手納は置いておきますよ。許容範囲ですよ。日本が残そうとしなければ、話は早いですよ。(こんな状況では日本は)独立国家じゃない」
岩上「若い世代に、政治的意識がない人が多い。本土の若者と変わらない。びっくりしますね」
吉元氏「戦後生まれの政治家や、沖縄県民の中にも、若い者の中には(そういう者もいる)。教育の問題だが、日本全体の問題でもある。県民生活の中で、生きるのに忙しかったというのもあるでしょうね。
それでも、若者の中にも、辺野古の座り込みに行くグループもあるんです。が、私たちの言っているような運動の広げ方ではない。そういうあせりがある。本土ではなく、中国とか韓国、シンガポールとか、外に働きに行く人が出ている。これはいい傾向だ。
国と国との戦争でない(新たな国際関係のありかたの)絵を描ける政党がもっと出てほしい。『東アジア共同体研究所』の事務所が沖縄にもあるようだ。『沖縄の意見を聴かないとダメだ、もっとひどいことになる』というところまで、日本を追い込まないと。『俺たちこうしたい』という若者、学者が出てきはじめている」
岩上「島袋さんとかですね。立憲主義による独立というお話は斬新。希望をもてる話です」
吉元氏「『琉球諸島自治政府構想』というのを作ったんです。奄美諸島にも呼ばれて話をしにいった。今スコットランドの話が沖縄に火をつけている。具体的に最後は島袋さんを中心にしたグループへ。
かつて沖縄の中心にいた者、OBの連中をバックアップして、というのが沖縄には大事。ローカル政党がまだ大きいですからね。いわゆる(沖縄)社会党。まだ健在です」
岩上「スコットランドは持てる層が持たざる層から吸い上げていく、それへの強い反発から、下からの革命として拡がったと聞いています」
吉元氏「官邸サイドは沖縄の動きを軽視していますよ。集団自衛権、あれ、真面目につくっているんですよね?」
岩上「すみからすみにまで問題があって、条文中、『絶対』という言葉が唯一登場するくだり『公務員は絶対拷問してはならない』、の『絶対』という言葉を省いてしまった。恐ろしいこと。官僚ファッショをもう一度やるのかという。僕らみたいなのが頑張らなくちゃと思います」
吉元氏「朝日新聞の(誤報)問題に悪乗りしている週刊誌などメディアをみていると唖然とする」
岩上「許しておくつもりはないので、戦うつもりです」
(了)