【沖縄県知事選】争点の辺野古移設 仲井真氏「新基地ではない」翁長氏「断念させる」下地氏「県民投票で問う」喜納氏「知事権限で撤回か取消」 ~候補予定者が公開討論 2014.10.17

記事公開日:2014.10.18取材地: テキスト動画
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(IWJ・藤澤要)

 沖縄県知事選の投開票まで一ヶ月を切った10月17日、日本青年会議所沖縄ブロック協議会が主催する公開討論会が那覇市内で開催された。

 登壇したのは、現職の仲井真弘多氏(75)、前那覇市長の翁長雄志氏(64)、元郵政民営化担当相の下地幹郎氏(53)、元参議院議員の喜納昌吉氏(66)の4人。

 最大の争点は、名護市辺野古湾への米軍普天間飛行場の移設問題。仲井真氏は「推進」、翁長氏は「反対」、下地氏は「県民投票で賛否を問う」、そして喜納氏は「知事権限による撤回または取消し」と、それぞれ立場が分かれた。

 仲井真氏は普天間飛行場の移設問題について、「普天間をもっと小さくして、辺野古を安全にして、そこに移すということ。(辺野古)新基地でも何でもない」と、自身が行った辺野古湾埋め立て承認の理由を説明。辺野古に「代替施設」を作り、「普天間の人々を安全にする。命と暮らしを守る」と話した。

 翁長氏は、国土面積の0.6%を占めるに過ぎない沖縄に、74%の米軍基地が集中するのはおかしいと話し、「日本の安全保障は、日本国民全体で負担するべき」と主張。「基地は沖縄経済の最大の阻害要因になっている」と述べた。

 下地氏は、辺野古埋め立て問題を県民投票に委ねるとの提案のほか、貧困問題解決や、経済成長により「所得倍増」を目指すとの意欲を語った。

 喜納氏は、「下地氏は県民投票と言うが、来年早々の新基地本格着工には間に合わない。翁長氏は承認の撤回を公約に入れていない」と他立候補予定者の姿勢を批判。自身の、知事権限により辺野古埋め立て承認の撤回または取消し実施の考えを強調した。

■ハイライト

  • 出席者 翁長雄志(おなが・たけし)氏(前那覇市長)/下地幹郎(しもじ・みきお)氏(元郵政民営化担当大臣)/喜納昌吉(きな・しょうきち)氏(前民主党沖縄県連代表)/仲井真弘多(なかいま・ひろかず)氏(現職、沖縄県知事)(着席順)
  • コーディネーター 保田盛清士(ほたもり・きよじ)氏(日本青年会議所沖縄ブロック協議会会長、弁護士)

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普天間飛行場と辺野古埋め立て、それぞれ異なる立場を説明

 翁長氏は、「新辺野古基地の建設を断念させていく」との決意をあらためて表明。「新基地建設は沖縄のさらなる飛躍を阻むもの」と、基地建設とセットになった沖縄振興策を進めようとする仲井真氏との違いを強調し、「沖縄の自立的な経済発展の礎は、決して、基地建設とリンクされた経済振興策ではない」と続けた。

 さらに翁長氏は、基地が国有地化されることにより、「永遠に基地であり続けるのではないか」との懸念も表明。「平和産業」としての観光業に負うところが大きい沖縄経済がこうむる損失が深刻だと述べた。

 一方、仲井真氏は、「街の真ん中にある(普天間)飛行場をこのまま放っておいていいのか」との観点から発言。昨年12月に安倍総理と交わした、5年以内に普天間飛行場を運用停止するという「約束」を強調した。さらに、「新基地」ではなく、普天間飛行場の規模を3割程度にして移設する計画であることから、これは「整理縮小」であると主張した。

 仲井真氏は、辺野古の移設先を「新基地」ではなく「代替施設」と呼ぶべきだとし、民家から1キロメートル離れていることや、航空機が民家の上空を通過しないとされている点などを挙げ、「極めて安全な設計」であるとの見解を示した。また、「現実的な解決の方法としては、これが一番早い」とも述べた。

 下地氏は、この選挙で賛成または反対かの立場を示すことは、大きな意味を持たないとし、「問題は、18年も続いているこの問題を解決するための手段を提供すること」との見解を述べた。

 「今の政治状況を見ていると、選挙前に反対と言った人が、賛成になる。これまでずっと辺野古を推進してきた人が、反対に回る」。下地氏は、このような状況が、混乱を招いているとし、県民投票により賛否を問うべきだと主張。その決定の上で、政府と協議し問題の決着をするとした。

 喜納氏は、自身の知事就任後、辺野古埋め立て承認の「撤回もしくは取消し」を行うと述べた。

ここ4年の県政に対する評価

 これまでの仲井真氏の4年間の県政について、翁長氏は、「現知事は埋め立て承認で振興策を取った」と厳しく批判。仲井真知事が埋め立て承認をした際に、安倍総理に求めた「普天間飛行場の5年以内の運用停止」も、米国側の合意がないものだと指摘した。

 また翁長氏は、失業率では改善がみられるものの、多くは非正規雇用であると指摘。沖縄県が「非正規率全国ワースト1位」であることから、現状の改善が必要であると訴えた。

 下地氏は、自身も関わった県政で、県の裁量で使用が可能な一括交付金の創設により、地方分権が沖縄に定着したと強調。「沖縄の自らの自立という意味で大きな成果だ」と話した。一方、辺野古移設問題に対する仲井真氏の態度について、「選挙前に言ったことが、選挙後に変わることはよくない」と注文をつけ、混乱を招いている原因だとした。

 喜納氏も、一括交付金の創設という成果などがあり、仲井真氏の4年間を「基本的に肯定している」と評価。しかし、仲井真氏による辺野古移設問題の対処の仕方を「成果を帳消しにしても余あるほど失政が、辺野古埋め立ての承認」と断じた。

 仲井真氏自身は、4年間を振り返り、「産業振興により、活況を呈している」との認識を示し、観光客の増加や、国際物流システムの整備などの成果を挙げた。このほか、農林水産業や小売業なども「活性化している」と述べた。さらに、小学生の学力テストの順位が向上していることから、教育分野でも改善がみられているとした。

討論では翁長氏へ多くの質問が

 クロス討論では、立候補予定者から、翁長氏へ多くの質問が出た。

 下地氏から翁長氏に対しては、革新派の支援を受けていることを挙げ、「日米安保に賛成なのか」という質問が出された。

 これに対し翁長氏は、日本の国土の0.6%しか占めない沖縄に、米軍基地の74%が集中しているとし、「日本国民全体で、日本の安全保障は考えてもらいたい」と持論を述べた。

 喜納氏から翁長氏に対しては、なぜ辺野古埋め立て承認に反対しながら、知事権限としての「撤回」や「取消し」を公約しないのか、という質問が出された。

 翁長氏は、最初に必要なのは知事選において、辺野古埋め立て承認に「ノー」という立場を明確にすることであり、その後の具体的な取り組みの中に、知事権限の行使も「選択肢の一つとしてある」と答えた。

 喜納氏は「集団的自衛権についてどう考えるか」と再質問。翁長氏は、安倍内閣による、集団的自衛権行使を容認する閣議決定について、「立憲主義からみて無理だろう」との見解を示した。

 仲井真氏は翁長氏に対して、「普天間飛行場をどうするのか。放っておくのか」という質問がなされた。翁長氏は「普天間の固定化はできないと思っている」と応じた。

 これに対し仲井真氏は「『普天間の固定化はできないと思っている』と翁長さんがおっしゃっても、固定化はしかねない。だから、これは移すしかない。置いておけば、どうにかなるということか。大事故が起きるまで待つということか」と追及。

 翁長氏は、仲井真氏と安倍総理による「普天間飛行場5年以内の運用停止」の約束も、米国の合意がないものだと指摘。「仲井真さんも現実的な人ではない」と応酬した。

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