4月20日(日)、沖縄県西原町の琉球大学で開かれた、「シンポジウム『沖縄の直面する課題と展望』 —2014年沖縄県知事選挙において何が問われているか」では、地元の大学関係者やメディア人が、沖縄は今「分水嶺」にあることを強く訴えた。
1月の名護市長選で有権者が見せた「自立」の動きが、11月の沖縄県知事選挙で県全体に広がるかが、微妙な情勢にあるためだ。
沖縄国際大教授の佐藤学氏は名護市長選を振り返り、「あの選挙結果は、原発立地自治体の首長が『カネ(交付金)はいらないから、自分のところの原発を廃炉にしろ』と中央政府に迫ったことに匹敵する。今秋の沖縄県知事選は、あれと同じことを、県全体に起こすことができるかの挑戦になる」と述べ、それには、沖縄の若い有権者に顕著な、基地問題に関心を持たないメンタリティーの改善が不可欠、と強調した。
- 登壇 佐藤学氏(沖縄国際大学教授)、新崎盛暉氏(沖縄大学名誉教授、元学長)、桜井国俊氏(沖縄大学元学長)、普久原均氏(琉球新報社論説副委員長)、儀間多美子氏(沖縄タイムス社北部支社編集部長)、我部政明氏(沖縄対外問題研究会)
- 収録 2014年4月20日(日)14:00~
- 場所 琉球大学法文学部(沖縄県西原町)
「今度の知事選では、辺野古の基地建設問題が、決定的な争点にならねばいけない」──。開口一番、こう力を込めた佐藤氏は、今秋の沖縄県知事選では、基地問題が争点から外される可能性が十分ある、と言明した。
そして、「私が日々痛感しているのは、いわゆる『普通の大学生』に、辺野古に米軍基地が作られることが持つ意味を、正しく認識させることの難しさだ」と続け、あるエピソードを紹介した。
昨年6月に佐藤氏が、基地問題を扱う自身のゼミの学生たちに対し、「仲井眞弘多沖縄県知事は、辺野古の基地問題に、どういう立場か」と質問したところ、「県外移設である」と答えられた学生は半分以下だった、というのである。佐藤氏は「大学で基地問題について学ぶ機会のある若者でさえ、こうなのだ」と語り、沖縄の、そういう機会に恵まれない若者の大半は、基地問題が関心の対象にすらなっていない公算が大きいとした。
地元紙の経済報道「若者」に響かず
さらに佐藤氏は、「県内の若年層には、経済活性化の観点から、新基地の建設を歓迎する傾向すらある」とも指摘。「県内経済の米軍基地への実際の依存度は、すでに、かなり低下しているにもかかわらず、私の大学の学生たちは『米軍基地がなくなると、自分たちの仕事がなくなる』といった発言を、折に触れてしている」とし、「こういった誤認を正し、状況を変えていくことが急務」と訴えつつも、「そのための妙案は、思い浮かばないのも事実」と話し、状況の改善は容易ではないことを説明した。
琉球新報社の論説副委員長である普久原均氏も、沖縄の若年層の基地問題への無関心ぶりを問題視。「私も、県内のいくつかの大学で学生と接する機会があるが、確かに『基地がなくなると、自分たちの仕事がなくなる』という声をよく聞く」と述べた。
そして、「この数年間、地元紙は、沖縄の経済の実情を伝えることに紙幅を割いてきた。その結果、沖縄には『新基地建設は、地元経済の推進要因ではなく阻害要因である』という共通認識が広がったと思う」とし、沖縄県内で基地が占有している部分を、地元の市民が使いたいように使った方が、はるかに経済効果が高くなるとの試算が存在することなどを、すでに何度も報道していると伝えた。
にもかかわらず、沖縄の若者の多くが、過去の刷り込みを払しょくできないでいる現実が横たわっている──。「メディアに携わる人間として、ある種の無力感を感じる」との言葉を口にした普久原氏は、保守陣営が今、「沖縄への新基地建設が、地元経済の未来を築く」といったトーンで、若者をターゲットにしたキャンペーン活動を、猛烈な勢いで展開していることを視野に入れつつ、「地元の若い世代に、沖縄の基地問題をきちんと伝えていくことが、われわれに課せられた大きな使命だ」と力を込めた。
竹富町「教科書問題」を生かす