「政権維持のために危機を必要とする、東アジアの相互依存」 〜東アジア民衆の連帯を求めて 2013.12.14

記事公開日:2013.12.14取材地: テキスト動画
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(IWJテキストスタッフ・富山/奥松)

 「蔓延する国内の矛盾を覆い隠すために利用される、東アジアの危機」──。

 2013年12月14日、京都市下京区のキャンパスプラザ京都において、京都シンポジウム「東アジア民衆の連帯を求めて ~つくられる『危機』にあらがうために~」が行われた。3名のパネリストが、沖縄、中国、韓国を軸足に「東アジアの危機」を読み解いた。

■全編動画
・1/2(13:35ごろ~ 1時間57分)

・2/2(14:06~ 2時間49分)
※上の録画と重複があります。後半のパネルディスカッションは1時間36分ごろから始まります。

  • パネリスト
    新崎盛暉氏(沖縄大学名誉教授)「沖縄反基地闘争の課題と展望」
    加々美光行氏(愛知大学教授)「現代中国の矛盾と市民運動の可能性」
    李昤京(リ・リョンギョン)氏(立教大学非常勤講師) 「2008年以降の韓国市民運動の新たな展開と課題」
  • コーディネーター 仲尾宏氏(京都造形芸術大学客員教授)

沖縄における構造的差別

 はじめに、「沖縄・安保闘争の現状と課題、構造的差別」をテーマに講演を行った新崎盛暉氏は、「この構造的差別とは、対米従属的日米関係の矛盾を、沖縄にしわ寄せすることによって、日米関係を安定させる構造である」と定義した。その上で、その構造が、60年安保改定の頃から積極的に取り入れられてきた経緯を解説し、オスプレイ強硬配備や主権回復の日、尖閣問題などを抱える第2次安倍政権下で、「それが、頂点に達した」と指摘した。

 「1972年の沖縄返還後、この差別構造は、日本政府によって利用、維持されてきた。安倍政権の下で、24機ものオスプレイが強行配備され、米軍普天間基地の辺野古移転に関しては、県知事の首を縦に振らせるため、沖縄選出の国会議員に対して、自民党本部は圧力をかけている」と安倍政権の姿勢を問題視した。

 また、尖閣と日本と台湾の漁業協定が抱える問題を説明。琉球と中国の船が行き来する目印として機能していた尖閣諸島が、近代化の中で、漁業圏、生活圏として開拓されていき、その後、排他的経済水域として承認されていった経緯に触れた。

 「本来、生活圏というのは排他性を持たず、生活圏に住む人々の間の話し合いにより、ルールが定められるべきだが、排他的経済水域となった尖閣諸島の領有権問題が高まり、中国と台湾の間に楔を打つために、日台漁業協定は、沖縄に情報を提供しないまま結ばれたのである。政治的な理由で、ここでも沖縄は犠牲にされている」。

国家レベルで反応しあう日本と中国

 続いて、加々美光行氏が「日本と中国は、国家レベルで互いに反応し合ってきた」と述べ、現代中国の矛盾と市民運動の可能性について語った。1992年の中国における愛国主義者教育運動を経て、中韓両国に対し、日本の植民地支配と侵略を認めた村山富市首相談話、「新しい歴史教科書をつくる会」の結成という日本の動きをきっかけに、反日的意識が民衆の間で起こった経緯を説明。

 胡錦濤、温家宝政権時には、中国は大国であるという自意識が強くなっていき、国家だけでなく、民衆の間で反日感情がますます高まっていった変化を、加々美氏自身が肌で感じた経験を話した。また、江沢民政権から始まる軍事大国家への転換を問題視し、「中国の大国化、強国化を喜ばない中国市民はいないが、日本と同じように、軍事化反対の動きが起こる可能性は秘めている」とした。

東アジアにおける世襲政治の現状、恐怖の相互依存関係

 李昤京氏 は「韓国の政治も、日本、中国の動きと連動している」と述べ、2008年に、10年ぶりに保守政権を取り戻した朴槿惠政権と同じように、日本、中国、北朝鮮において、「先代の因縁を受け継ぐ世襲政治」が同時多発的に発生した現状を説明した。

 そして、「反共、反日、排外、親米、資本というキーワードが、東アジアの危機を高める要因である」とし、政権を維持するために、その危機を必要とする東アジア各国の「恐怖の相互依存関係」に言及。その上で、「韓国においては、2008年以降、朴槿惠体制の下、文民統制の崩壊、朴正煕時代の軍人脈の復活が進んでいる」と述べた。

世論調査には現れない、闘う市民の存在

 続けて、「市民運動は弱体化し、保守政権、保守メディア、御用学者による協調体制、保守的市民運動の成長の下、公安政治が復活し、政治と市民社会の境界線は崩壊してしまっている。そのような現状の中では、市民が、正確にお互いの国を理解する姿勢が重要である」と主張した。

 新崎氏は「中国と安倍政権、朴政権と安倍政権、反中や反韓などは、国内に蔓延する矛盾を覆い隠すために利用される。メディアの力は、ここ日本においても無視できないが、沖縄のように、世論調査の数字の上では現れない、闘う市民の存在を無視してはいけない。不条理や不合理を認められない人々が、一体になって運動する時、そこに現れる大きな力が重要である」と述べた。

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