ウクライナ政変 なぜオバマはソチ五輪開会式を欠席したのか~岩上安身によるインタビュー 第406回 ゲスト 孫崎享氏 2014.3.13

記事公開日:2014.3.13取材地: テキスト動画独自
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(IWJ・藤澤要)

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 ウクライナ情勢が緊迫している中、2014年3月13日、岩上安身による元外務省国際情報局長の孫崎享氏へのインタビューが行われた。孫崎邸での和やかな雰囲気の中、話題は緊迫するウクライナ政変を中心に、クリミアを巡るロシアと欧州および米国の対立、さらには安倍総理の取り巻きの分析など、多岐に及んだ。

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■全編動画

  • 日時 2014年3月13日(木)
  • 場所 孫崎氏私邸

ウクライナ政変第一幕~狙われたソチ五輪

 昨年11月よりウクライナの首都キエフにおいて続いていた、EU協定を見送ったヤヌコビッチ政権に対する民主的デモは、今年に入り過激な右派勢力を巻き込みながら騒乱状態へ発展。2月末に発生したデモ隊と治安部隊の衝突において多数の死者を出した後、政権が倒された。

 孫崎氏は、この政変のもつ意味をこう語った。

 「ウクライナ政変の第一幕が意味するところは、ヤヌコビッチという選挙で選ばれた大統領が、デモで倒されたということ。ヤヌコビッチは親ロシア派。

 この流れは、欧州とアメリカは知っている。ウクライナの次の指導者を誰にするのがいいか、アメリカ国務省のヌーランド国務次官補とパイアット駐ウクライナ大使が会話をしている内容がすっぱ抜かれて表に出た。

 ヤヌコビッチ政権を倒す時点でヨーロッパとアメリカがすでに関与しているということが非常に重要なポイント」

 ところで、ウクライナ政変は、ソチ・オリンピックの最中に勃発した。平和の祭典であるオリンピックを主催している時に、プーチンは動くことができなかったのが実情だった。孫崎氏はそう指摘する。

 「私がモスクワの大使館にいたとき、79年のオリンピックには西側が参加しなかった。国威が落ちる。世界から排除された政権になった。今回はソチ五輪の開催中の政変。ロシアはウクライナの政変に対応したら、ソチ五輪が吹っ飛びますね。

 予兆はあった。オバマや西側の首脳はソチの開会式に行っていない。プーチンがゲイの人権を認めない問題というのは関係ない。今からみると、ウクライナのことだった。プーチンは歯ぎしりして政変を見ていただろう」

 オリンピック後、プーチン大統領はクリミアに進出。欧米は反発し、ロシアに対する経済制裁やビザ発給停止といった手段で対抗した。しかし、各国ともやり方はしたたかだ。

 「ロシアへの制裁措置で、自分の利益に害が出るようなことはしない。アメリカは国全体として、ロシアに対し、ビザ発給停止や経済的封じ込めをしていない」

 ヤヌコビッチ政権の崩壊を見越し、欧米とロシアはソチ・オリンピックを舞台に外交戦を繰り広げていた一方、日本の総理大臣は開会式に参加。ウクライナ政変の地政学的な意味を理解した上での行動なのか、疑問符がつく。孫崎氏によれば「起こっていることがわからないから平気で行ける」という。

ウクライナ政変第二幕~その舞台

 ロシアの介入後、クリミア自治共和国では3月16日にロシア編入を問う住民投票が行われ、編入支持が9割を越える結果となった。17日にはクリミア議会によりウクライナからの独立が宣言され、ロシア編入が承認された。ロシア側は投票の正当性を主張するが、欧米は対ロシアの制裁措置を追加する構えだ。

 クリミア情勢が予断を許さない一方、孫崎氏によれば、政変の第二幕はウクライナが舞台となる可能性が高いという。

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 「欧州もアメリカもクリミアのことを真剣に考えていない。問題はこれからウクライナの分割がどうなるか。オデッサにはロシア系がいる。この辺がどうなるかが、今外交の一番大きな駆け引きになっている」

 停滞する国内経済、ロシアに依存する天然ガス供給、デモでも暗躍した極右勢力の動向など、親EUの新政権が発足したとされるウクライナだが、国内の不安要因は多数ある。

 「経済社会の混乱の中、そういうの(極右勢力)が出てくる。収入の水準が月100ドルを割るということも。ロシアが経済支援を申し出るかもしれない。今、西側が言っている言葉『ディ・エスカレーション』は、今後起こりうることを防ごうということ」

 戦争に発展する可能性は、という質問に対し「それはないと思う」と孫崎氏は答える。とはいえ、これまでウクライナは複雑な経緯を経てウクライナ系とロシア系の住民が共存してきた。仮にウクライナ系のナショナリズムが急進化すれば、ロシアに対してロシア系住民保護の口実を与えることになる。ロシアが武力介入すれば、欧州や米国はウクライナ支持に動くだろう。米露が正面衝突するような一大戦争にまで発展しないようにブレーキを踏みつつも、次に何が起こるかわからない不安定な状態が続く。そうした状態を好む勢力もいる、と孫崎氏は指摘する。

 「ぐしゃぐしゃを好む人がいる。オリンピックが重要な行事になっただけに、東京オリンピックも利用されるかもしれない。政治を動かす一つのチャンスとなっている」

日本の戦後占領体制

 アメリカは世界中の国々で、自国に不都合な政権を転覆するためにあらゆる手段を用いてきた。CIAによる工作、特には軍事的介入を行う一方で、転覆後に自国の意に沿う政治体制を構築することにはしばしば失敗している。例外的に「成功」したのは日本である。日本政府と自民党はアメリカの従属政体としては、とびきりの「優等生」だ。その理由について、孫崎氏は次のように説明した。

 「日本の場合は占領期間があったということが重要。占領期間の間に米国の意に沿う組織が作られてしまった。たとえば大学は本来は中立的で自治があるが、『アメリカ学会』が作られ、アメリカに協力する学会となった。これはもう学会じゃない」

 経済界では経済同友会が作られる。大企業の役職についたサラリーマン経営者中心の経団連と違い、同友会のメンバーは固定され、日本をコントロールしていく。1945年から51年までのあいだに日本社会を構築できた。これが非常に大きい」

 沖縄に米軍が駐留することを正当化する日米地位協定も、この占領体制を補完するものだ。

 「私は普天間問題をやっているときにドイツのことも勉強するべきだったと悔やんでいる。敗戦国ドイツにも米軍が駐留している。

 ドイツでは、自分の国の法律に従わせることになっている。ドイツの利益が、駐留米軍がいることの利益より大きいとみたときには、撤兵を主張できる」

日米関係の先行きは?

 昨年末に安倍首相が靖国参拝したことをきっかけとして、日米関係が冷え込んでいるのは周知の通り。孫崎氏によれば、安倍人脈の中でも対米追従派と百田尚樹氏に代表される極右的な「お仲間」たちとの間での「股裂」が起きているという。

 「安倍さん個人の周辺に集まって大きくなった極右を取り除けない。菅さんが軌道修正できるかわからない。話は違うが、あるヘッジファンドの大御所が来た。今回は安倍政権がもつかどうか聞きに来た。日本の新聞は報じないから海外の攻勢がわかっていない。

 これから菅さんのようにアメリカとの関係をちゃんとやっていかなければ、というグループと、百田尚樹さんのようなグループとの葛藤がものすごく出てきますよ」

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■実況ツイート(再配信時)

「ウクライナ政変 なぜオバマはソチ五輪開会式を欠席したのか~岩上安身によるインタビュー 第406回 ゲスト 孫崎享氏」への1件のフィードバック

  1. うみぼたる より:

    話題が多岐にわたります。
    ウクライナのお話は世界地図を開きながら聞きました。オリンピック便乗型のショックドクトリンはやめてほしいのでIOCが然るべき対応を怠るのならば、今後のオリンピック開催が危ぶまれます。平和の祭典に戦争ビジネスをするなんて狂ってます。
    東京都知事選の件は、宇都宮さんの選対のお話だと、最終日の新宿の演説は動員をかけていないそうです。
    動員なしであれだけの聴衆は見事。それが票に反映されていないのが不思議です。

    そして、孫崎さんの本のお話を聞いて思いました。 岩上さんに空手を習おう!

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