2013年6月5日(水)16時から、東京都内のIWJスタジオで、岩上安身による、アジア太平洋資料センター(PARC)事務局長、内田聖子氏へのインタビューが行われた。内田氏は、5月17日から23日まで、ペルーの首都リマ で開催された第17回TPP交渉会合に、アメリカのNGO、パブリックシチズンのメンバーとして参加している。内田氏は、交渉後に出されたUSTR(米通商代表部)のリリースを紹介し、「日本が参加する7月のマレーシアでの交渉会合の前に、中間会合と称する秘密会合が行われるだろう」と予想。「これは、日本が参加する前にイニシアティブを握りたいアメリカの意志が働いたものだろう」と語った。
内田氏は「今回のTPP交渉は難航した。アメリカをはじめとする交渉国は、公式見解だった10月妥結予定を『遅くとも年内』と言い始めた」と述べた。その理由として「Regulatory Coherence(規制の内外調和)という、TPPと、それぞれの国内の規制や法律を一致させる条文について、アメリカ、メキシコ、カナダは厳格なものを求め、ベトナム、マレーシア、ペルーは反対したからだ」と述べた。
続けて、「大量の安い洋服や繊維製品が輸出できるベトナムと、国内繊維産業が打撃を受けるアメリカの間で意見は一致しなかった。アメリカは、ベトナムが安く原材料を仕入れられないように、TPP参加国内だけで材料調達し、中国や中南米などTPP以外の、安い原料を提供する国を締め出すルールを提案している」と話した。
また、日本の農業の聖域については、「カナダやニュージーランド、オーストラリアは、農産品に関して、日本をターゲットにしている。ペルー外国貿易協会のフェレイロス会長は『日本の参加を歓迎する。しかし、すべての品目を交渉のテーブルに上げる。日本の例外を認めていたら合意できない』と語っている」 と述べた。
内田氏は、TPPの先行事例として、米国とのNAFTAやFTAによって、自由貿易の弊害がもたらされた中南米諸国の状況を説明。「中南米諸国は、1980年代以降、米国の裏庭として新自由主義政策と市場経済がもたらされ、結局、社会は疲弊して、反米左翼政権が成立したり、抵抗運動が起こっている」と語った。そして、メキシコのチアパス州の先住民がNAFTAの発効日に武装蜂起したサパティスタ民族解放軍、ブラジル土地なき農民運動(MST)、正義のグローバリゼーションのためのペルーネットワーク(RedGE)、ラテンアメリカの健康のための国際アクション(AISLAC)、米州ボリバル同盟(ALBA)など、多くの反グローバリズム団体がアクションを起こしていることを紹介した。
岩上は「このままでは、僕ら日本人も『かつて日本列島だったところの先住民族』と呼ばれ、アメリカのフロンティアの歴史の一部になってしまうかもしれない。そう考えると、中南米の人々の抵抗の仕方を、真剣に学ぶべきだろう」と話した。