「日本の農業が過保護だからもっと自由化して競争にさらせばいいというのは、全くの間違いだ。そんなことをやっていたら食べるものがなくなりますよ」
2017年2月1日(水)東京都文京区の全労連会館で、「国民の食糧と健康を守る運動全国連絡会」(全国食健連)主催の「日本とEUのEPA(経済連携協定)を考える緊急学習会」が行われ、東京大学大学院の鈴木宣弘教授が、上記のように訴えた。
EPAとは、基本的に2国間で結ぶ経済連携協定のこと。FTA(自由貿易協定)と同様、物品やサーピスの自由貿易を目指すほか、投資や人の移動、知的財産なども含む。
トランプ大統領がTPP離脱を表明した今、TPP推進派からは日欧EPAを早期に合意すべきだという声が高まっている。
鈴木教授はこれまでにも、「農業の自由化」をうたうTPPの危険性を訴え続けてきた。IWJでは他にも鈴木教授の講演を取材しているので、以下の記事もぜひ合わせてお読みいただきたい。
また、岩上安身は過去2回にわたって、鈴木教授に単独インタビューを行っているので、こちらもあわせてご視聴いただきたい。
▲東京大学大学院教授・鈴木宣弘氏
- 報告1 「日EU・EPAは何が懸念されるか」 鈴木宣弘氏(東京大学大学院教授)
- 報告2 「EU、市民運動からの情報」 内田聖子氏(アジア太平洋資料センターPARC共同代表)
- 関連団体からの報告を予定
「命を守り、環境を守り、国土を守っている産業をみんなで支えるのは、あたりまえ」――低すぎる日本の農家の補助金割合
鈴木氏によると、2013年の日本の農家の所得に占める補助金の割合は、30パーセント台の後半。それに対して同年のフランス、ドイツは90パーセント台、スイスにいたっては100パーセントを超えているという。
補助金の割合が極端に低い日本の現状について鈴木氏は、次のように苦言を呈した。
「こんなの産業かと言われるかもしれませんけど、命を守り、環境を守り、国土を守っている産業をみんなで支えるのは、あたりまえなんです。これは欧米の常識なんです。これが当たり前じゃないのが日本だっていうことをよく考えなければいけない」
経済連携どころか、アジアから収奪!? 「日本は本当に情けない姿だ」
また鈴木氏は、TPPや過去の2国間交渉の中で、食糧については関税撤廃をすすめる一方で、産業界の利益は徹底して守る経産省について、「彼らは何も考えていない。とにかく強い業界の言うことをそのまま伝えているだけのマシーンだ」と批判した。
さらに鈴木氏はこうした産業界や経産省の姿勢を、「アメリカがTPPでやろうとしたことと全く同じだ」と非難し、次のように続けた。
「分散した狭い水田など、日本と共通性があるアジアの国々が、新大陸型の農業で潰されるのではなく、本来なら支え合って共に発展できるような経済連携のルールを作るのが、アジアを中心にした経済連携のあり方のはずだ。柔軟性、互恵性のもとにやっていかなければならないのに、『TPPがダメならRCEP(※東アジア地域包括的経済連携)』と言ってTPP水準で交渉を行ない、アジアから収奪しようとしている」
▲分散した狭い水田などアジアの農業には共通点が多い
鈴木氏は、「日本は本当に情けない姿だ」となげいた。
※RCEP(東アジア地域包括的経済連携):米国主導のTPPに対抗して、中国が主導する協定。ASEAN10か国+6か国(日本、中国、韓国、オーストラリア、ニュージーランド、インドの「FTAパートナー諸国」)が交渉に参加する広域経済連携協定である(
外務省より)
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鈴木氏「(食糧については関税撤廃をすすめる一方で、産業界の利益は徹底して守る経産省について)彼らは何も考えていない。とにかく強い業界の言うことをそのまま伝えているだけのマシーンだ。日本は本当に情けない」
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