5月15日~24日まで、ペルーのリマで開催された第17回TPP交渉会合の取材のため、IWJは安斎さや香記者を現地に派遣。帰国後の30日に、番組にて、ペルー取材の報告を岩上安身とともに行った。交渉会合の取材は交渉官をはじめ、セキュリティガードが厳しく、取材が困難であったため、交渉会合に対する抗議行動の模様や、ペルーにおいてTPPの問題点を指摘し、市民運動をリードしているNGOの取材を敢行。会合に関わる情報は、PARCの内田聖子氏にインタビューを行い、報告をうかがった。
さらに、ペルーではTPP参加による企業の知財強化が薬価の高騰を招き、貧困層の医薬品へのアクセスが困難になることが懸念されている。こうした背景から、現状の貧困地区や医療現場の実態を知るため、貧困層のエリアの現場取材と、同エリアで開院している医療機関でのインタビューを行った。
16日に交渉会合が開催されているリマのJWマリオットホテル前で行われた抗議行動では、各国の国際NGOや労働組合などが参加し、薬価の高騰及び環境汚染が、TPP参加によってより拍車がかかることを問題視した。また、TPPが秘密協定であることを懸念し、「サインしてしまってから知るのではなく、サインする前に知りたい」との声があげられた。
ペルーにおいてTPPをはじめ、自由貿易やグローバル化によって発生する諸問題の解決について取り組んでいるペルーのRedGE(公平なグローバリゼーションを求めるペルーネットワーク)でのインタビューでは、TPP参加による問題点を中心に話をうかがった。医薬品関係では企業の知財が強化され、特許期間の長期化によってジェネリック薬の参入が難しくなるなどの問題点を指摘。環境汚染の問題では、「国の規制を厳しくする必要がある」一方で、TPP参加によってISD条項が発動すれば、投資家から訴えられてしまう可能性があることを示唆した。
内田氏のインタビューでは、次回の交渉会合が7月15日から25日の開催が決定されたことを受け、日本の参加は2、3日となり、実質的な交渉には参加できないということ、遅れての参加国には、ほとんど発言力がないことが確認された。また、10月妥結に向けて、各国の財界はTPP推進を強烈にプッシュしているが、実際のところ、知財や環境などの重要課題が山積みとなっており、会合でも、「年内までに」とトーンダウンしているとの報告があった。
貧困地区の取材は映像を交え、解説を加えながら報告。資金難による出稼ぎで、リマ郊外の丘に不法居住している住民は現在も増加している。その背景には、新自由主義的な経済政策による外資の投入で経済発展する中、貧困層はその恩恵を受けられず、苦しい生活を強いられている現状を伝えた。この地域の近くで開院している病院の医師にインタビューしたところ、貧困地区ではインフォーマルな生活者が多数存在し、公的保障も満足に受けられていないこと、皆保険制度が無機能であること、疾病の多くが肺炎、下痢などの生活環境の劣悪さからくる症状であることが確認された。