「加害者の側が人間じゃなくなる」 梓澤弁護士、改憲草案第36条に怒りと涙の訴え ~自民党の憲法改正案についての鼎談 第6弾 2013.5.2

記事公開日:2013.5.2取材地: テキスト動画独自
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(IWJテキストスタッフ・関根/奥松)

特集 憲法改正|特集 前夜

 「なぜ、自民党案では『絶対に』という言葉を抜くんですか!許せないですね、私は!」。自民党が作った憲法改正草案に対して、梓澤和幸弁護士が怒りをあらわにした。

 憲法記念日の前日となる5月2日(木)14時から、梓澤弁護士と澤藤統一郎弁護士、そして岩上安身の3人が、自民党の憲法改正草案について議論する鼎談の第6回目が行われた。この日の議題は、第33条「逮捕に関する手続の保障」から第38条「刑事事件における自白等」までである。

 拷問の禁止を定めている第36条について、自民党案は現行憲法の「公務員による拷問及び残虐な刑罰は、絶対にこれを禁ずる」という条文から「絶対に」という文言を削除している。梓澤弁護士は、警察による拷問で殺された作家・小林多喜二の最期を紹介しながら、「(拷問は)屈辱の中で人の命を奪う。それなのになぜ、自民党案では『絶対に』という言葉を抜くんですか!許せないですね、私は!」と目に涙を浮かべながら、自民党改憲案を激しく批判した。

■イントロ

■ハイライト

  • 出演 梓澤和幸弁護士、澤藤統一郎弁護士、岩上安身
  • 日時 2013年5月2日(木)14:00~
  • 場所 東京都内

 冒頭、岩上が、朝日新聞(5月2日朝刊)の「表現の自由 制約に危機感 自民の改憲草案21条」という記事を見せながら、「改憲案について、以前は冷ややかだったマスコミの扱いも変わってきた。また、昨日、安倍首相が、夏の参院選で憲法96条改正を公約にすると言明した」と述べて、改憲にかかわる昨今の動きを報告した。

 澤藤弁護士が「4月29日に韓国の国会が、『日本の閣僚などの靖国神社参拝と、侵略戦争を否定する妄言を糾弾する決議案』を、1名の棄権だけで可決したが(日本の)マスコミの扱いが小さすぎる。自民党憲法改正案の復古主義的な改悪を考えると、資本家・大企業たちにとって住み心地の良い政治体制を作りたいだけだ。新自由主義的なものが背骨にあって、社会に進出した権益を守る、アメリカと一緒になるための経済、政治、軍事的改憲だ。しかし、これを行なうと社会は壊れ、格差は広がり、貧困は表に出てくる」と語った。

 梓澤弁護士が続けて、「衛星放送の某番組の中で、自民党幹事長の石破茂氏が、改憲の話題で国防軍について、『今の自衛隊法では、命令に反する行動をした隊員に対して、7年の懲役しか与えられない。しかし、本当に国を守るためには、そうした兵士には死刑や懲役300年を考えなければならない。それが国防軍だ』というようなことを言った。軍だ、重刑だ、表現の自由なし、という3点セット。そこを見て改憲を考えなければならない」と述べた。

 岩上が「先日、インタビューをした中部大学の三浦陽一教授は、もし、日本が徹底的な戦争追及を行い、周辺国と友好関係を築いてしまったら、原爆を投下し、空襲で無差別殺戮をした米国もまた、戦争犯罪で追及されてしまう。だから、米国は日本の戦犯追及の手を緩めた。そして(追求を緩めてもらった)日本の支配層は、自ら進んで米国に従属していった。日米の支配層は共犯の関係にあるのだ、と語っていた」と話すと、両弁護士は頷いて聞き入った。

 そして、本題の逐条の議論で、憲法第33条(逮捕に関する手続きの保障)について、まず、梓澤弁護士が「概略は変わっていない。しかし、変わっていないということが大事。33条に関連するが、何かで逮捕されたときは、当番弁護士をすぐに呼んでくれ、と言うのがいい。これは国民のれっきとした権利で、当番弁護士は初回は無料だ。誰でも(誤認でも)捕まる可能性はある。そこで、こういう逮捕の手続きを動かしてはいけないように、憲法で固く固く締め上げている。この仕組みが、33条と34条に書いてある」と説明した。

 澤藤弁護士は「黙秘権というのは、『国家権力 対 個人』という構図のとき、その個人は弱者であり、どんな人でも人権や尊厳があり、それは守られなければならない。本人の意に反して話をさせることが、場合によっては、死刑よりも屈辱的なこともありえる。そこで黙秘権がないと、拷問を認めることになる。ところが、自民党案の新憲法36条では、現行憲法の『拷問及び残虐な刑罰は、絶対にこれを禁ずる』という文言の『絶対に』という言葉をわざわざ取っている」と指摘した。

 それに続けて梓澤弁護士は、特高警察に逮捕された作家の小林多喜二の例を挙げ、「小林多喜二は3時間にもわたる拷問を受け死んだ。母は傷だらけの息子の体を抱きかかえながら『それ、もう一度立たねか、みんなのため、もう一度立たねか!』と叫んだ。このように、屈辱の中で命を奪うことがあったのだ。戦前、治安維持法で7万人超が逮捕され、150人以上が獄中死している。それなのに、なぜ、自民党改憲案では『絶対に』という言葉を抜くのか。倫理において許せない!」と憤った。

(…サポート会員ページにつづく)

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「「加害者の側が人間じゃなくなる」 梓澤弁護士、改憲草案第36条に怒りと涙の訴え ~自民党の憲法改正案についての鼎談 第6弾」への1件のフィードバック

  1. @55kurosukeさん(ツイッターのご意見) より:

    「加害者の側が人間じゃなくなる」 梓澤弁護士、改憲草案第36条に怒りと涙の訴え http://iwj.co.jp/wj/open/archives/77025 … @iwakamiyasumi
    自民党案では、現行憲法の『拷問及び残虐な刑罰は、絶対にこれを禁ずる』という文言の『絶対に』という言葉をわざわざ取っている・・
    https://twitter.com/55kurosuke/status/531319205098815488

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