昨日4月3日、日本の大手メディアが一斉に「ペルシャ湾内に停泊していた商船三井のLNGタンカーが、ホルムズ海峡を通過した」と報じました。
米国とイスラエルがイランに侵略して以降、イランによって事実上封鎖されているホルムズ海峡を、日本の関連船舶が通過するのは初めてのことです。
船舶専門誌『シートレード・マリタイム』は、4月3日付記事で、このLNGタンカーについて「オマーンの国営物流会社アシャド・グループ傘下のオマーン・シップ・マネジメントが運営する、日本の商船三井と共同所有するパナマ船籍の『Sohar LNG』」だとした上で、以下のように報じています。
「『Sohar LNG』は、4月2日にホルムズ海峡に入ると、船舶追跡サービス『ポールスターグローバル』の船舶自動識別装置の発信を停止した。
イラン当局の同意を得てホルムズ海峡を通過するほとんどの船舶は、イランのララク島とイラン本土の間のイラン領海を通るが、同船は、オマーンのムサンダム半島沿いギリギリのオマーン領海を進んでいるように見えた。
『Sohar LNG』は、4月3日に(オマーン湾の)マスカット沖に無事到着し、追跡信号を再び作動させた。(中略)
タンカーの動きをリアルタイムで追跡する『タンカー・トラッカーズ・ドットコム』は、オマーン・シップ・マネジメント社の他の2隻の超大型原油タンカーである『Dhalkut』と『Habrut』が、『Sohar LNG』と同時期にホルムズ海峡を通過しており、両船とも『ポールスターグローバル』社の追跡システム上で、オマーンのマスカットに到着したことが示されていると報じた」。
- First LNG carrier transits Strait of Hormuz since Iran war began(Seatrade Maritimes、2026年4月3日)
イランは、中国、インド、パキスタンなど、友好関係にある国々、あるいはフランスなど、今回の侵略戦争に際して、イランに対して敵対的な姿勢を取らなかった国々のタンカーやコンテナ船のホルムズ海峡の通過を認めています。
上述の『シートレード・マリタイム』の記事にあるように、それらの船舶は、通常のルートではなく、イランのララク島とイラン本土の間のイラン領海を通行することになっています。
日本の大手メディアの一部、あるいはそれらに感化されたSNSでは、日本のタンカーが、イランの監視の目をかいくぐって、密かにホルムズ海峡を脱出した冒険譚のように報じられています。
しかし、現実は違います。
「イランとオマーンは、ホルムズ海峡を通過する船舶の監視に関する議定書を共同で策定している」と、4月2日にイラン外務省が発表しています。
オマーンは、イランの対岸、アラビア半島の東端に位置する国です。アラビア海とオマーン湾に面し、ホルムズ海峡の航路もオマーンの領海内を通ります。
オマーン内にも、他の湾岸諸国と同様、米軍基地は存在しますが、政治的には中立であり、イランとの関係も良好です。
オマーンは、スンニ派ともシーア派とも異なるイバード派が人口の8割近くを占め、他の宗派にも寛容であり、「中東のスイス」とも呼ばれます。
経済メディア『インヴェスティング・ドットコム』は、4月2日付記事で、共同議定書の内容について、「同航路を通過する船舶の安全な航行を促進し、より良いサービスを提供することを目的としている」「イランのカゼム・ガリババディ外務副大臣は、平時であっても、船舶の航行は沿岸国であるイランとオマーンの監督と調整のもとで行われるべきだと表明した」と報じています。
- イランとオマーン、ホルムズ海峡の船舶監視議定書を起草(Investing.com、2026年4月2日)
つまり、イランとしては、「Sohar LNG」を含む「オマーン・シップ・マネジメント」の船舶3隻が、「オマーン船」であることから、オマーンとの友好的な外交関係に配慮して、ホルムズ海峡の通過を黙認した、ということのようです。
一方、トルコの『アナドル通信』は、4月2日付記事で、「Sohar LNG」が、「貨物を積まずに航行しているようだ」と報じています。
『アナドル通信』は、「追跡データによると、『Sohar LNG』は、約1ヶ月間ペルシャ湾を旋回した後、目的地をオマーンのカルハットLNG輸出ターミナルに変更した」と報じています。
カルハットは、オマーンの液化天然ガス輸出拠点である、オマーン湾沿いにあります。
4月3日付『朝日新聞」は、商船三井のLNG船がホルムズ海峡を通過したことに対し、「日本政府関係者によると、船の行き先は日本ではなく、政府は交渉にも関わっていないという」と報じています。
- 商船三井のLNG船がホルムズ海峡を通過 日本政府は交渉不関与か(朝日新聞デジタル、2026年4月3日)
ペルシャ湾内に滞留する日本関係の船舶は、45隻から44隻になりましたが、他の船も、同じように安全にホルムズ海峡を通過できるということではなさそうです。
高市早苗総理は、「世界の中心で咲き誇る日本外交」を掲げ、国会答弁でも、「高市政権の外交は、したたかな外交」などと、「自画自賛」してきましたが、現実には、高市政権は、国家存立を揺るがす危機に際して、「世界の片隅で手をこまぬいている」だけの、無為無策かつ無能で優柔不断な政権であることが露呈しています。































