2024年3月18日、エコノミストの田代秀敏氏に岩上安身が行ったインタビューの続きである。
2024年3月19日、日本銀行の植田和男総裁は、金融政策決定会合後の記者会見で、17年ぶりとなるマイナス金利政策の解除を発表した。
※はじめに~日銀の植田総裁が、17年ぶりにマイナス金利政策の解除と長期金利操作終了を発表! ただし「長期国債買い入れは継続」と表明!『日経』は2月23日付紙面で「もはや『バブル後』ではない」との見出しを打ったが、日銀の国債の買い入れこそが「アベクロダノミクス」の「第一の矢」だったはず! エコノミストの田代秀敏氏が、「終わらない国債依存」を指摘!「昭和バブル後」の敗戦処理もいまだ終わらず、そこにいつ弾けるともわからない「令和バブル」が重なる!(日刊IWJガイド、2024年3月20日)
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日経平均株価は、3月4日に空前の4万円台を突破した後、3月11日、12日、13日と急落し、週明け月曜日の3月18日には、急反発した。
岩上安身は、こうした動きの原因や、その影響を見極めるため、2024年3月18日に、エコノミストの田代秀敏氏に緊急インタビューを行った。
米国では3月中旬、大型ハイテク関連株を中心に、株式市場が下落した。
AIブームへの期待感で、時価総額が膨れ上がったハイテク関連株だが、田代氏によると、ハイテクを駆使するための電力エネルギーは、実はまだ足りていないとのこと。
そこへ、少し株価が下がったため、エネルギー問題に気づいていたプロの投資家が、ハイテク株を手放し、株価が急激に下がったのだという。
さらに、米国ではしつこいインフレにより、中央銀行であるFRB(連邦準備制度理事会)が金利を下げられず、金利が高止まりしている。
金利が高ければ、企業は借り入れを控えたり、借り入れができなくなったりするため、株価にとってはマイナス要因となる。
田代氏は、「そうした影響が露わになる前に、もうずいぶん上がった株式を、今、売り逃げしようと考える人も出る」と述べ、こうした要因によって、株価が急激に下がったのだと指摘した。
田代氏は、こうした米国の株価に連動して、日本のハイテク関連株も売られたのだと解説した。
一方、3月18日に日経平均株価が急反発したことについて、田代氏は、次のような見方を示した。
これまで、植田総裁はじめ、日本銀行の経営幹部たちの発言から、マイナス金利政策の解除はもう決まっていて、あとはタイミングだけだとわかっていた。
3月18日、19日の金融政策決定会合で解除するんじゃないかということは、予測されていたが、投資家は疑心暗鬼になっていた。
そこへ、『日経新聞』がスクープとして、実際の発表前の16日に、マイナス金利解除を報じた。マイナス金利を解除すると、円高に振れる可能性が高い。
投資というのは、未来の可能性に対して賭けているわけだが、そのリスクの幅は小さい方がいい。その不確定な要素のひとつが、『日経』のスクープで消えそうになった。
田代氏は、「たとえ円高に少し振れたとしても、それで終わりだと。今までは、いつ円高になるか、わからないから不安だったんだけど、もう、今日明日で(マイナス金利解除が)決まれば、ある程度円高になっても(それ以上は進まず)そこでいったん止まると考えた」と述べ、「噂で株を買って、事実が来ると売る」事実確定売りが起きたのだと語った。
一方、田代氏は、日本には、実質金利がマイナスであれば、ビジネスとしてはうまくいってなくても、何とか生き永らえている「ゾンビ企業」が多いが、そうした会社は長期金利が2パーセントになれば、存立不可能になるとの厳しい見方を示した。