昨日18日、自民党の政治資金パーティー裏金問題を暴いてきた、神戸学院大学法学部教授・上脇博之氏への、岩上安身によるインタビューを、「底なしの自民党裏金問題! 岸田総理と後援会代表らを刑事告発!『闇政治資金パーティー』の徹底捜査と『裏金』の真相解明が必要! 第2回」と題して、ライブ配信した。
4月5日にお送りした第1回のインタビューは、以下である。
岸田文雄総理は、4月9日から14日まで5日間にわたって米国を訪問し、故・安倍元総理以来、9年ぶりに米連邦議会で演説をした。
岸田総理は「日本は、米国のグローバル・パートナー」であると、米議会で述べた。
岩上安身は、冒頭、岸田総理は日本国民の思いを無視して、「日本にとってとんでもない約束をアメリカでしてきた」と指摘し、岸田総理は「アメリカの都合・利益のために戦争をさせられる約束」を勝手にしてきて、「何がグローバル・パートナーだと言いたい」と述べた。
岩上安身「そもそも、国民の代表であるかのように振る舞う資格が、はたして、支持率が最低レベルにあり、かつ自民党全体の裏金、そして一部に関しては脱税疑惑もある(岸田総理にあるのか)。
こういう、非常に腐敗した党の総裁であり、そして総理である。それが、何の(疑惑の)解明もなく、自分だけは(党の調査や処分から)除外ということになっている。これは独裁国家じゃないですか、と、いろいろ憤懣がたまっております。
私だけではないと思います。
大変な重税に苦しんでいる方々、皆さんお怒りだと思います」。
上脇博之教授は、神戸学院大学法学部の憲法学の教授であると同時に、政治資金オンブズマンの代表でもある。
上脇教授は、2月29日、2022年6月12日に開催された「岸田文雄内閣総理大臣就任を祝う会」(以下、「祝う会」と表記する)が政治資金パーティーとしての実態を偽っていたなどとして、岸田総理とその講演会代表者らを、刑事告発した。
上脇教授は、インタビュー後半で、「議会制民主主義とは、民意を政治に反映すること」であり、「民意を歪める政治制度は根本から改めないといけない」と、強く訴え、裏金作るを許すような政治制度を改めるよう、訴えた。「企業その他の団体の政治献金」の禁止、「政党助成金」(政党交付金)の廃止、小選挙区制の廃止と完全比例代表制への転換、である。
インタビューは、上脇教授が提出した告訴状について、上脇教授ご自身に解説していただく形で進んだ。
岩上「今年2月29日、上脇先生は、岸田総理とその後援会代表者らを刑事告発されました。岸田総理総裁は、刑事告発されている身なんですよ。この点について、ちゃんと説明責任を果たさなければ、総理としての資格はないというふうに思うわけです」。
上脇教授は、1)「祝う会」は、収益を岸田総理の関連政治団体に寄付していることから、明白に政治資金パーティーであったにもかかわらず、参加者にそれを告知していなかった「告知義務違反」であり、2)岸田総理の政治資金収支報告書には、支出額や寄付額の記載がなく、「不記載」と「虚偽記入」であると指摘している。
上脇教授「岸田総理は、国会で、とにかく『自分の後援会が主催者じゃありません、任意の団体がやりました。それも政治資金パーティーではありませんでした』と、弁明しているんですが。
私が入手している情報、『週刊ポスト』が、頑張って報道していただいたんですけど。そういう情報とか入手した情報によると、『いやいや、主催者は後援会じゃないか』。というのが、私の告発の主たる内容ですね」。
上脇教授は、仮に「祝う会」が、岸田総理が主張するように、政治団体ではなく、任意団体だったとしても、参加者数から推定して、売上が1000万円を超えているため、政治資金収支報告書を作成する必要がある。つまり、後援会のような政治団体主催であっても、任意団体主催であっても、「政治資金規正法違反になっちゃうんです」と、解説した。
ただし、「祝う会」の連絡先は「岸田文雄事務所(担当者は秘書である故・細川清貴)」であり、主催者とされる「広島県経済関係団体合同任意団体発起人」の代表者は、岸田総理の後援会の代表者である伊藤學人である。
岩上は「『祝う会』の真の主催者は、岸田文雄後援会であったとしか考えられない」と述べた。
上脇教授は、「後援会のスタッフがやっているとしか思えない。任意団体が主催であるように偽っているが、それは裏金を作るためだったのではないか」と推定している。
「祝う会」は、会費が1万円、参加者が1100名ですので、単純計算で1100万円の売上があったことになる。
一方で、諸経費はホテルの会場代や本の配布代などで、340万円、収益が760万円あった計算になる。
「祝う会」の収益760万円は、自由民主党広島県第一選挙区支部に「寄附金」として支出されている。広島県第一選挙区支部のトップは、岸田総理その人である。
続いて、上脇教授が、2月29日に提出した告発状を読みながら、1)告知義務違反、2)不記載と虚偽記入について、詳しく解説をしていただいた。
上脇教授は、「祝う会」の案内状などには、どこにも政治資金パーティーであることが明記されておらず、「告知義務違反」にあたるが、このような「告知義務違反」を、事務方(実際には岸田総理の後援会の細川清貴)に、独断でできるはずはなく、代表者である岸田総理自身、後援会代表の伊藤學人、会計責任者の長井洪治らが、「共謀して強行されたもの」であるとしか、考えられないと分析している。
上脇教授「告知義務違反を、事務方が勝手にできるとは思えないんですよね。だから、僕から見ると、後援会の代表者は、さっき出てきた伊藤さんなんだけど、唯一の代表者は岸田さんでしょう。
後援会の会計責任者長井さんという人。長井さんは、後援会の会計責任者で、選挙区支部の会計責任者でもある。
要するに、選挙区は岸田さんが代表ですからね。岸田さんの、指揮命令下にあるわけです。監督を受けているわけですね。(中略)うーん、どう考えても岸田さん主導でしょう。
ということで、僕は、『事務方が勝手にやったわけじゃありませんよ』と。『岸田さんを中心に、みんなで共謀してやったもんでしょう』というのが、ここ(告訴状)で書かれていること」。
岩上「あなた(岸田総理)ですよ。あなたこそやった本人ですよという話ですよね。共犯じゃない、主犯であると」。
続いて、政治資金収支報告書への「不記載」と「虚偽記入」についても、詳しくお話しいただいた。
- 日時 2024年4月18日(木)17:30~
- 場所 Zoom+IWJ事務所(東京都港区)
<ここから特別公開中>
上脇教授「政治団体は、政治資金規正法によると、同じ時に収支報告書を作成しなさいというふうに義務づけられているんですね。その説明が、まずここ(告訴状)に書いてあるので、この後を見ていただくと、その義務を果たしていないと、『不記載があった』というのが、次に出ている。
政治資金規正法によると、この場合は『一つの事業』ですよね。
『事業』については、『ちゃんと収入があれば、その事業の収入を含めて、ちゃんと収支報告書に書かないといけませんよ』、というのが、ここでの規定の説明なんだけど、特に留意していただきたいのは、1000万円以上の売り上げがある場合は、『特定パーティー』って、言うんですよね。
『特定パーティー』になると、さらに厳しくなります。例えば、『パーティー券を幾らで、何人が買ってくれたかとか、そういうふうに書かないといけませんよ』というふうに、法律が規定されている、ということを(告訴状で)説明しているんです」。
岸田総理の「祝う会」は、「特定パーティー」にあたる、と上脇教授は指摘した。
「特定パーティー」であれば、年間5万円以上寄付をした人の「氏名、住所、職業、寄附の金額、年月日」などを明記する必要があり、支出についても5万円以上であれば、支出を受けた人の「氏名、住所、支出の目的、金額、年月日」などを記載する必要があるが、「岸田文雄後援会」の収支報告書には、そうした記載はない。
これに違反すれば、「5年以下の禁錮又は100万円以下の罰金に処する」などと定められている。
岩上「やっぱり、岸田さんは、罰金刑っていうのも、どうなのかなという気がするんですけれども。
5年以下の禁錮なんていうのに、相当していただくと、ゆっくり反省していただけるんじゃないかなと思うんですけれどもね。あと1罰100戒ということで、自民党の総理総裁たるものが、このような厳罰を受けるんだ、と。
自分たちで作った法律でしょう? 自分たちで国会を通したんでしょう? そして、それを破るとか。『それはだめでしょ』ということですね。
『あなたは責任を負うんですよ』と、『政治責任だけでなく、法的責任をも負うんですよ』、ということを、岸田さんは政治家として身をもって示していただいて、潔く、政界を引退してきちんと刑罰を受けていただくとかして、政界の浄化を図っていただきたいということになりますよね」。
上脇教授は、告知義務違反だけではなく、1000万円を超える収入を書かないなどといった「不記載」にあたるようなことを、「事務方が勝手にできない」と指摘し、「どう考えても、岸田さんの了承のもとでやっているだろうということで、『共犯』ということで、告発をしておいた」と付け加えた。
岩上「本当にちゃんと捜査すれば、穴だらけのこの法律とはいえ、『使用者』としての岸田さんの責任は十分とり得るということですよね」
上脇教授「僕は、検察のやる気があるかどうかにかかっていると思う」
岩上「そうですよね。ここをサボタージュしたらダメですよ、という話ですね」。
上脇教授は、1)「合同任意団体」の主犯は、岸田総理の後援会であること、2)政治資金規正法違反の告知義務違反、3)政治資金規正法違反の収支報告書提出義務違反の3つを告発理由として、まとめた。
上脇教授は、今後の展開について、広島の人々も近く告発に動くだろうと述べ、検察も世論を見て、「手抜きの捜査したら大変だ」と圧力がかかるのではないか、と予測した。
岩上も「広島地検は、自分たちが今、見られているぞということをひしひし感じるという、あるいは感じさせるということが、国民のなすべきことであり、そしてまた国民の世論なり、あるいは(報道機関が)国民の知る権利なり、報じる権利なりを自分たちは代弁しているんだ」という自覚を強くもつことが大事だと述べた。
岩上は、4月1日に東京で開催された、上脇教授の講演会「『新しい戦前にさせない』連続シンポジウム『金権』から『民権』へ ―『政治改革』を問う」を取り上げた。
この講演会には、IWJも取材に入っている。
岩上「これは重要なので、ぜひ直接先生におうかがいしたいんですが。
『民意を歪曲する制度』がそもそもあるんだ。それが、『政権与党の暴走を許しているんだ』と。
岸田さんの場合、これは個人としての責任は免れません。岸田さんは岸田さんで、これは処罰するというか、起訴して裁判にかけられて、そして処罰されるべきであろうと思いますけれども。
では、岸田さんだけ叩いていればいいのかというと、(それだけではなくて)『政治制度として問題があるんだ』ということですよね」。
上脇教授「実は、『議会制民主主義』っていったときに、議会制民主主義の中身をどう考えるか、ですね。
『国民主権』で、『普通選挙』があって、『国民の代表機関である国会』があれば、それだけで、議会制民主主義だと考える方が結構多いのではないかと思うんだけど。
私は、『それだけじゃだめですよ』と。『民意を正確に反映できないとだめ』。
だから、その裏返しとして、民意を歪曲するような制度があれば、もうそれは議会制民主主義の名には値しない、というふうに考えているんですね。
で、『民意を歪曲する制度』としては、4割の得票で8割近くの議席が取れる、『小選挙区制』。参議院の『選挙区選挙』もそうですよ。事実上の2人区が多いですからね。
あと、『政党助成金』をもらうとどうなるかと言ったら、国民からお金集めしなくても、国民に痛みをどんどん押しつけることができるわけですよ。
で、結局、政党を変質させる。アメリカの言いなりになり、経済界の言いなりになり、国民からお金集めなくても税金で賄える。国営政党にすれば、結局国民主権なんて絵に描いた餅に過ぎなくなって、空洞化してしまうと思うんですね。
で、『企業献金』があれば、企業からたくさんの献金をもらえば、そこの言いなりになっちゃう。
あと、『使途不明金』。簡単に言うと『裏金』ですよね。裏金なんていうことは、もう、表に出せない使い方をするわけです。違法な支出をされるということは、民意がゆがめられてしまう(ということ)。
こういうことを許していれば、どう考えても権力は暴走簡単にできちゃう」。
上脇教授は、新自由主義政策を推し進め、格差社会を生んだ「小泉構造改革」や、故・安倍元総理による「戦争する国づくり」のための解釈改憲が可能だったのは、「剛腕だったからではない」と指摘した。
上脇教授「議会制民主主義が十分確保できてないから、権力は簡単に暴走できちゃった時、世論が反対しても、衆議院の(小選挙区)選挙制度は、民意が歪曲されるから、多数派が入れ替わっちゃうんですよ。
国民の多数派が必ずしも、議員数の話にならない。だから格差社会をつくるとか、戦争する国づくりをする自民党と公明党の与党が、3分の2になってしまって、もう簡単に暴走できた」。
上脇教授は、政治改革の抜本的なやり直しを提言している。
1)「企業その他の団体の政治献金」を禁止する。
2)自民党の収入の大部分を占める「政党助成金」(政党交付金)を廃止する。
3)国政も、都道府県等の地方選挙も、完全比例代表制にする。
上脇教授「もともと、民意を正確に反映できるのは、比例代表制ですからね。それがあって初めて議会制民主主義になり得るんですから、小選挙区制をやったこと自体が、もう議会制民主主義に反する。
どんどんどんどん議会制民主主義から離れていく中、中選挙区制でも議会制民主主義とは言えなかったという立場だけど、(小選挙区制で)もっとひどくなる。そう思っていたら、案の定、そうなってきた、という風に見てますね」。
岩上「特に悪質な、いろいろ問題のある政策を押し通していくときに、世論を気にしなくていいと。何か問題があったら、その議員だけ落としていけばいいということをやることによって、さっきから問題にしている、外資にとって、都合のいい経済構造とか、それから米国が代理戦争を仕掛けて、軍事産業を儲けさせて。
で、自分たち(米国は)は血を流さないで、(ウクライナのように)『代理戦争』をさせると。そういう『代理戦争戦略』をあからさまにとっているわけですけれども。
『それの手駒になってしまうよ』というような、普通の国だったらば、『そんなの嫌だよ』って考えて『みんなでお断りします』ということを、できるような制度になっていない、ということですね」。
上脇教授「結局、選挙の結果だけを報道されるじゃないですか。例えば、与党が3分の2を取りました。これも、小選挙区の影響ですよ。小選挙区のおかげで自民党・公明党は3分の2の議席を取り、政権をとる。その結果を見ても、その3分の2も国民が支持しているのかと勘違いするんです」。
岩上「民意というのは、そこにあると勘違いしているわけですね」。
上脇教授「ところが、比例代表の得票率を見ると、過半数とってない。
だからそういう意味でいうと、『マジック』ですよね。
何か3分の2の議席を取ったということは、3分の2の、国民が支持していると思い込んじゃっているけれど、実はそれだけの人数の得票がなくても、自民党・公明党政権が続くように、小選挙区が導入されているということなんですね」。
上脇教授は、金権政治を是正するために進められた1994年の政治改革を、「要するに、アメリカの戦争に日本が協力できるような国家作りをするためには、中選挙区制だとダメ、自民党のハト派がいるとダメだ」ということだったのではないかと振りった。
岩上「そうした民主主義というものを、『だめなんだ』って諦めちゃいやすい人もいるんですよ。短気を起こしてね。
だけど、民主主義というのは不完全だけど、今現行にあるものは。だけど、穴を潰していけば、民主主義というのは理想的な政治、少なくとも、例えば非常に富の不公平が起こったりとか、あるいは不必要な戦争が起こったりとか、あるいは外国にそそのかされ、外国の自由にさせられるような、そういう外国の工作に乗せられやすいような国づくりになったりしない可能性があるということです」。
上脇教授「やっぱり、根本的にね。『国民のための政治』というふうに変えていくためには、今までの政治で失敗したことは、もう明らかなんですから、これを本気で変えようとすれば、国民の投票率も、将来は上がるはずなんですよ。
今の小選挙区で、『なかなか当選できないよね』ってなっちゃうと、投票に行かない人が多いんですよね。悲しいかな、行かない。
だけど、それでも頑張って投票日にしないといけないことを、多くの人にわかっていただきたいと思います。やっぱり、主権者・国民が立ち上がらないとダメなんですよね」。
インタビューは、自民党政治の歴史、岸田総理の訪米の実相から、米国の『代理戦争』の『捨て駒』にされているウクライナと、米国という桃太郎の家来である犬・猿・雉のような、独立した主権を失った属国になってしまっている日本の姿などにまでおよんだ。
4月10日、岸田総理とバイデン大統領との会談では、今後、自衛隊と在日米軍が部隊運用レベルで連携し、米軍の指揮下で、「日米一体化」を進めていくことになった。
2024年度末に、自衛隊に陸海空の統合作戦司令部が新設されるのに伴い、在日米軍司令部も統合部隊を設け、自衛隊がその指揮下に入り、事実上の下部組織になることになる。
つまり、岸田総理が言う「グローバル・パートナー」とは、自衛隊を米軍の指揮下の下部組織として自由に使ってください、と差し出したことを意味する。
- はじめに~岸田訪米を「国賓待遇」とヨイショする大手メディアの馬鹿さ加減!!「赤絨毯」と「儀仗隊」との引き換えに「グローバル・パートナー」なる嘘くさい美名のもと、「自衛隊を米軍の一部隊にする」との売国的な約束を、主権者たる日本国民を置き去りにして、米国議会で勝手に約束!
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自民党の裏金問題は、議会制民主主義の根幹に関わる問題であり、日本の国際的な立ち位置、国家主権にまで関わる問題なのである。