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2024年2月3日午後2時より、東京都国分寺市の都立多摩図書館にて、「PFAS汚染を考え、安心で住みやすい国分寺を創る市民の会（略称：PFAS国分寺市民の会）」の主催により、「有機フッ素化合物（PFAS）研究の第一人者、原田浩二さん（京都大学准教授）が語る―PFAS最新事情」と題した講演・学習会が開催された。
2022年11月と12月に、「多摩地域のPFAS汚染を明らかにする会」が、国分寺市民のPFAS（有機フッ素化合物）血中濃度を測定するための血液検査を実施した。
その結果は、検査を受けた市民（最終的に30自治体の791名）の9割以上が、米国の基準を上回るPFAS血中濃度を記録するという衝撃的なものであった。
IWJは、これら2回の血液検査のうち、2022年12月3日に、国分寺市のひかり診療所にて実施された血液検査の模様を録画取材し、また、血液検査結果の中間報告として、2023年1月30日に行われた記者会見についても中継取材を行っている。詳しくは以下の記事を確認いただきたい。
この国分寺での血液検査、および、その結果の公表は、それまで、沖縄・大阪など、限られた場所での問題とされていたPFAS汚染が、東京でも明らかになったということで、全国に知られるきっかけとなった。
その後、全国各地でPFASによる汚染が確認され、日本各地で多発する「新たな公害」という様相を呈するに至っている。
現在、世界でも日本でも、PFASの正体を突き止めるための調査・研究が進んでおり、アメリカやヨーロッパでは、規制の強化が進められている。
この日の学習会は、「PFASに関する最新の調査や研究により明らかになった、命や暮らしにとって非常に大事な事柄を、できるだけ早く、市民の皆さんと共有したい」と考えた主催側により、「緊急市民学習会」として開催された。
PFASとは、自然界で分解されにくく、水などに蓄積し、人への毒性を有する、4730種を超える有機フッ素化合物の総称である。
主なものとして、PFOS、PFOA、PFHxS、PFNAの4つがある。詳細については、以下の「PFASガイドブック」をご参照いただきたい。
- 「PFASガイドブック」（社会医療法人社団・健生会PFAS専門委員会 2023年1月）（PDF）
原田准教授の基調講演に先立ち、国分寺市の本町クリニック院長杉井吉彦氏は、PFASの問題点について、以下のように語った。
「（前略）非常に難しい話です。非常に小さな話。小さな物質。ほんの数滴でも、高い毒性があるんだけれども、たとえば、普通の毒であれば飲んだらすぐわかるというふうになるんだけど、そうじゃなくて、だんだん、だんだん、とりわけ、水、飲料水によって入ったものがだんだんと蓄積して、その蓄積があることによって、いろんな体の条件が悪くなる構造になっているんですよね。（中略）
結局、じゃあ一体、何がどうなるのか？ ということが一番の問題になってくる。（中略）
ひとつは癌です。癌に罹患しやすくなる。高い濃度のPFASがあった場合には、何らかの形で、発癌性があるということ」。
杉井氏によると、この発癌性の問題については、5～6年前までは世界的にはほとんど認知されていなかったが、去年になって、はっきりと発癌性があると認められる状況になった（※）とのことである。
※WHO（世界保健機関）傘下にあるIARC（国際がん研究機関）は、発がん性物質や要因について、動物実験・疫学調査など証拠の確実性を評価して4段階に分類しているが、PFAS評価について、2023年12月、PFOAについては、下から2番目の「可能性がある」から、最も高い「発がん性がある」へと引き上げ、PFOSについては、新たに「可能性がある」に追加された。
参照：
- PFAS「発がん性」日本の基準は緩すぎないのか 国際機関で議論した専門家たちの見方は（東京新聞、2024年1月29日）
杉井氏は、PFASが健康に与える影響について、抗体反応の低下、脂質異常症、幼児・胎児の成長低下、腎臓癌のリスク増加など、『様々な病気のもとになる』という側面も指摘した。
原田准教授は、現在、多摩地域の水質（地下水中のPFOS濃度）、そこに住み、暮らす市民の血液（血漿中のPFAS濃度）、PFASの発癌性という3つの問題についての調査を進めており、この講演では、その途中経過について報告を行った。
原田准教授は、多摩地域のPFAS水質分析の結果について、以下のように述べた。
