昨日、【IWJ号外】でお伝えしたジョン・ミアシャイマー教授の9月3日付最新論文『負けるべくして負ける~2023年のウクライナの反転攻勢』全文仮訳! 第2回です。
第2回は、ミアシャイマー教授が、ウクライナ軍が電撃戦で、いかに不利な条件にあるのかを、一つ一つ、分析していきます。
ミアシャイマー教授は、電撃戦を阻止するための防御側の戦略には、3つあると指摘します。前方防御、深層防御、機動防御の3つです。
ミアシャイマー教授は、電撃戦の歴史を紐解き、現実の歴史の中で、成功した電撃戦は、1940年のフランスにおけるドイツ国防軍の電撃戦だけだと述べています。このとき、独仏両軍は兵力と兵装の質と量の両面で、大まかな均衡が保たれている対等の戦いでした。
これは、現在の「反転攻勢」の局面におけるウクライナ軍とロシア軍の状況と一致します。
このドイツ軍の電撃作戦では、メタンフェタミンという日本で製造された覚醒剤を兵士に服用させていたことがわかっています。
メタンフェタミン(ドイツ名、ペルビチン錠)を服用した兵士は、眠気を感じない一方で、判断能力を欠いて命令に従順であり、かつ疲れ知らずで、「電撃戦」にうってつけだったのです。
岩上安身はドイツ国防軍とヒットラーの薬物使用の問題を研究したドイツ人ジャーナリスト、ノーマン・オーラー氏にインタビューを行っています。ぜひ、あわせて御覧ください。
9月に入り、ウクライナのマリャル国防次官が1日、地元テレビのインタビューで「南部ザポリージャ州の一部で、ロシア軍の第一防衛線を突破した」と発言したことを受けて、日本を含む西側メディアは、ウクライナ軍が、ザポリージャ州に築かれたロシア軍の第一防衛線を突破したと盛んに報道し始めました。
第2次大戦のドイツ軍の電撃作戦に覚醒剤が使われたことを踏まえれば、現在、当時のドイツ軍よりもはるかに不利な条件で電撃作戦に追い込まれているウクライナ軍が、覚醒剤を使っている可能性は十分に考えられます。
しかもウクライナの兵士は、十分な訓練を受けていない新兵なのです。
この戦争が、いかに悲惨でむごいものか。ウクライナに対して、これ以上戦い続けられるように武器支援をすることが、いかに残酷で無知なことか、はっきりと示しています。
6月24日の時点のサブスタックで「前途の闇: ウクライナ戦争の行方(The Darkness Ahead: Where The Ukraine War Is Headed)」を配信し、「ロシアが最終的に戦争に勝つだろう。ただし、ロシアはウクライナを決定的に打ち負かすことはないだろう」と予測したジョン・ミアシャイマー・シカゴ大学教授は、9月3日に、このウクライナ軍の「反転攻勢」を踏まえて最新論考を発表しました。
IWJは、この論文の重要性に鑑み、全文を仮翻訳して、3回に分けてご紹介します。
ぜひ、お読みください。
なお、6月24日のミアシャイマー教授のサブスタックの仮翻訳は以下から読むことができます。
9月3日付のジョン・ミアシャイマー教授のサブスタックのタイトルは、「負けるべくして負ける~2023年のウクライナ反転攻勢」という決定的とも言えるものです。
- Bound to Lose Ukraine’s 2023 Counteroffensive(ジョン・ミアシャイマー教授のサブスタック、2023年9月3日)
ミアシャイマー教授がどのように、その結論を導き出したのか。ぜひ、以下からお読みください。
なお、原文の注は、仮訳を迅速にお届けする趣旨から、今回は割愛させていただきました。ご了承ください。
「ディフェンダーの投入
これまでは、攻撃側がどのように電撃戦を仕掛けるかに焦点を当ててきた。しかし、電撃戦の仕組みと成功の可能性を完全に理解するためには、防御側の能力と電撃戦を阻止する戦略を考慮することが不可欠である。
能力に関する重要な問題は、防御側と攻撃側の戦力バランスがどうなっているかということである。兵力と兵装の質と量の両面で、大まかな均衡が保たれているか。
もしそうなら、対等な戦いが待っている。しかし、一方が質、量、あるいはその両方において明らかに優れた戦力を有している場合は、不均衡な戦いとなる。対等な戦いと不均衡な戦いの違いは、電撃戦の成功の可能性を左右する重要なポイントである。
まず、対等な戦いで電撃戦を成功させるのは、はるかに難しい。ミスマッチではなく、強大な戦闘力同士のもつれあいなのだから、攻撃側が成功を確信するのは難しい。
さらに、電撃戦が失敗した場合、その結果は、この2種類の戦いでは著しく異なる。対等な戦いで電撃戦が失敗した場合、その結果は、予想が困難な長期にわたる消耗戦になる可能性が高い。何しろ、互角の相手同士の争いなのだから。
しかし、不均衡な戦いで電撃戦が失敗した場合、攻撃側は、ほぼ確実に、その後の戦争に迅速かつ容易に勝利する。攻撃側は、防御側に対して著しい物質的優位を享受しているからだ。
電撃戦を阻止するための防御側の戦略も、結果に大きな影響を与える。最も基本的なレベルでは、標的国は前方防御、深層防御、機動防御の3つの異なる方法で兵力を展開することができる。
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