8月30日水曜日、午後3時より、岩上安身によるジャーナリスト・高野孟氏インタビュー「『台湾有事は日本有事』という『嘘の連鎖』を断ち切ることが必要!『岸田軍拡』は架空の前提にもとづく大愚策!」を生中継で配信した。
岩上は7月3日月曜日に、高野氏にインタビューを行った。今回は、その続編、第2回となる。第1回は以下より御覧ください。
冒頭、岩上より、自身のコロナ罹患のために第2回インタビューが遅れたことについての謝罪と、コロナ罹患後の体調不良について報告があった。
岩上は、まるで「ナルコレプシー」、俗名「居眠り病」という睡眠障害のように、強い眠気が繰り返し、時間を問わずやってくるなど、日常生活を送る上でも障害になるような症状だと説明した。
高野氏は、高野氏の身の回りでも今夏、コロナに罹患して、岩上と同じような後遺症に悩んでいる人々がいると話し、今夏の(オミクロン)株の特徴だろうか、困っている人が大勢いるのではないか、と岩上が懸念した。
高野氏は1944年生まれ、1968年、早稲田大学文学部西洋哲学科卒と通信社広告会社勤務の後、75年からフリージャーナリスト、『ザ・ジャーナル』、『インサイダー』編集長をしてきました。岩上は「私にとってはいろんな意味で先輩です」と紹介した。
高野氏は現在、千葉県鴨川市に在住しながら、『半農半ジャーナリスト』としての活動中である。地域には「東京から一番近い棚田」があり、会員制で、棚田の保全活動をしたり、都会から来る人々に農作業を教えたり、農産物の直販などをするNPO団体を運営しているということである。
ここから本題に入り、岩上は、まず、福島第一原発のALPS処理水の海洋放出問題を取り上げた。
- 日時 2023年8月30日(水)15:00~16:30
- 場所 IWJ事務所(東京都港区)
岩上「東アジアで緊張が高まると、そしてある種の何か陣営のようなものが構築されていく。そして、多くの国々は、『中国とアメリカを選べみたいなことを言うのはやめてくれ』と。東南アジアなんかは言っているわけですよ。
それでも、日米韓のいわば3国同盟のようなものを形成して、勝手にどんどん進めていっていくところで、『原発事故の汚染水の海洋放出は国際問題化』という。
これがいや、これ(汚染水放出)はこっち側のカテゴリーの話。もうテレビとか新聞では全く別の紙面の話、キャスターも全然違う話として、こっち側は『台湾有事があって』という話をしています。
ところが、実際には重なり合っていて。そして非常に強い反発、予想をはるかに超える反発が(中国などから)あり。
ひょっとしたら、これは、多くのマスメディアがろくろくやってないんですけれども、日本と韓国というのは、なかなか『軍事同盟』を作れなくて、今まで来たわけじゃないですか。だけど、それを無理くり、アメリカが取り持ってやろうとしている。
(汚染水海洋放出)問題に関しては、韓国が民衆レベルで大反対で、そして、台湾のために助けにいく、『いざとなったら自衛隊が駆けつけるぜ』と言っているのに、台湾の民衆が大反対していると。
だから日本の政府の海洋放出に対して、肝心要の、『俺たちが守ってやるぜ。一緒に戦ってやるぜ』と言っている、韓国と台湾が『ふざけんなよ』と言われている。つまり、アジアで(日本は)1国孤立しているわけですよね」。
高野氏「ですから、汚染水問題というのは今、まさにもう、差し迫る危機要因になっているわけですよ。
それについて、日本は全く甘く見ているから。『IAEAのお墨付きをもらったんだから大丈夫だ』とか、『日本政府が一番先進国で、いろいろな技術も持っているのに、信用しないのか』とか。そういう高飛車な態度でいるものですから、全然日本政府の想定外の反応が起こってきてしまう。
最近、駐日の中国大使のお話を聞くこともあったんですけれども、中国当局にとっても、中国民衆の反応は想定外だったそうですね」
岩上「あ、そうなんですか?」
高野氏「そんなに怒っちゃうのか、と」
岩上「『中国が態度を硬化してる』と報じられてきているわけですね。『日本から水産物を全面禁輸』という」
高野氏「この話も聞いてきたんです。『一時的に全面禁輸』と、中国は一貫して言っているんですよ。
大使が言うのは、日本のマスコミはその『一時的』ということを入れない、『すべて外されているというのは、どういうわけでしょうか』と。これは何か、ある統一した意思が働いて」
岩上「メディアをコントロールしているということですね。プロパガンダ」
高野氏「と、『疑わざるを得ない』とまで、言っていました。
僕らもそれは知らなかった。聞くまで。『一時』って、入ってたんですか、と。『一時的に停止する』と」
岩上「なるほど、これはひどい話ですね」
高野氏「そういうところで落としどころをつくろうとしていたのに、本国であんな反応になっちゃう。それで、それをまた、『ほら、中国はやっぱりそうじゃないか、野蛮な国じゃないか』という調子になって、『反日だ、反日』と。
それで『一時的』という言葉は消えちゃって、頭を抱えているんです。もう落としどころが作れなくなって。『ここまで来ちゃってる時に無理して、何か妥協線を見出そうとすると、本国がもたない』って言うんですよ」
岩上「それは、一般の民衆の怒りの度合いが激しいということですよね。
これが『独裁国家』だとか、それから『全体主義国家』あるいは『専制国家』。今、何でも『専制主義的な国家』と『リベラル・デモクラシー国家』とを二分して、『こちら(リベラル・デモクラシー国家)が正しい』のであって、『こっち側(専制主義国家)を殲滅せねばいけない』ぐらいの勢いのものの言い方で。
こちら(専制主義国家)の代表が、ロシア人に、中国みたいなことを言うじゃないですか。そう言っているんですけれども、中国の中で、人民の声が『わあ』と起き出すと、統制が全く利かなくなるのくらい激しいものになるわけですよね」
高野氏「それは、一種の行き過ぎの部分も確かにある。それは、大使本人もそう言ってる。だけれども、それはまったく根拠のないことではなくて。だって海はつながっているんだから。中国という国は世界最大の漁民の数を抱えてるんです」。
岩上「それは中国本土に限っての話ですか?」
高野氏「本土の話。あれだけ長い長い(海岸線)。しかも、みんな金儲けに熱心で、もう夢中で。
例えば、『尖閣』とかなんとか言ったって、中国政府が『ここは入んないでくれ』、『トラブルになるから』と言ったって、もう、こうやって(掻き分けるように)入ってきちゃうような、貪欲さを持っている。
そういう漁民がいて、養殖業も盛んで、それで海がつながっている、日本と。
そこで将来どういうことが起きてくるのか、誰も予測できない。これは確かに、日本も『いや、そんなことは絶対にないから大丈夫です』とは言い切れないですよ」
岩上「もちろんですよ」
高野氏「それはもう、うんと長い目で見たら、魚の体内蓄積で、食物連鎖の中で、一体何年かかって、どういうところに出てくるのかもわからないわけですし。
しかも、一般のトリチウムを、『中国の原発だって同じじゃないか』と言うけれども、これは本当の汚染水ですからね」
岩上「トリチウムだけじゃないないからね」
高野氏「(事故が起きた原発の汚染水を)処理したことは、世界中に前例がない。そういう問題を抱えていながら、『IAEAがああ言ってるから大丈夫なんだ』と言ったって、やっぱり説得力がないわけで。
そうすると、これから、その駐日大使が懸念したのは、結局、もしも、これで、中国の漁業に被害が出始めたとき。それを国連の場に持ち込むとか、訴訟とか、具体的には。
『手がつけられないことになる。それを本当に心配してるんだ』ということをおっしゃっていましたけれども、そのとおりだと思うんですね。
だから『そこまで行っちゃうよ』と、『問題は』。このままじゃ」