「学術会議法改正の狙いは、菅総理の任命拒否を正当化し、逆に制度としてビルトインすること」!~2.14 日本記者クラブ主催 日本学術会議歴代会長会見 ―内容:「岸田首相に対して日本学術会議の独立性および自主性の尊重と擁護を求める声明」 2023.2.14

記事公開日:2023.2.15取材地: テキスト動画
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(取材・文、木原匡康)

 2023年2月14日、歴代の日本学術会議会長を務めた吉川弘之、黒川清、広渡清吾、大西隆、山極壽一の各氏が連名で「岸田首相に対して日本学術会議の独立性および自主性の尊重と擁護を求める声明」を発表。東京都千代田区の日本記者クラブで、吉川氏を除く4人が会見に臨んだ。

 2022年12月に内閣府が「日本学術会議の在り方についての方針」と「日本学術会議の在り方(具体化検討案)」(以下、内閣府案)を示しており、政府は2023年の通常国会で日本学術会議の組織改革法案を提出する方針とされる。

 日本学術会議は12月に、内閣府案が学術会議の「独立性に照らしても疑義」があり、「存在意義の根幹に関わる」として、再考を求める声明を採択している。

 今回の声明では、内閣府案が求める政府と科学者の政策のための協働は「Scientist in Governmentの仕事」だとし、「科学者コミュニティの代表機関」による「政府への科学的助言」は「政府から学術的に独立に自主的に行われるべき」とした。

 内閣府案が企図する「第三者から構成される委員会」が会員選考に介入するシステムは、国際的に認められる、学術会議の独立性に不可欠の「会員選考の自律性」を毀損すると指摘。

 その上で、岸田文雄総理に学術会議法改正の再考を迫るとともに、2020年の菅義偉総理による学術会議会員候補6名の任命拒否問題の解決を求めた。

 会見で広渡氏は、「学術会議法改正の狙いは、菅総理の任命拒否を正当化し、逆にそれを制度として学術会議法にビルトインすること」と指摘。改正法案の「目玉」とされる選考諮問委員会(第三者委員会)は「科学者以外」で構成され、学術会議提案名簿へのチェックに強制力を持つことで、政府の意に沿わない候補者を拒否する、総理による任命の「前裁き」が目的だと批判した。

 リモートで参加した山極氏は、菅総理の任命拒否の際の会長だった。山極氏は「岸田総理は『これ(任命拒否問題)はもう終わったことだ』と言うが、決して終わってはいない。終わったことにするなら、忖度政治を助長する」と批判。

 「理由を言わずに任命を拒否する権限が、国家の最高権力者にあるとすれば、それが下に降りていく」と指摘した。そして「理由を明確に述べていただき、それをもとに学術会議が改革案を作ればいい」と提案。「自民党案は理由が何かを根拠にしていないので、議論の進めようがない」と指摘した。

 質疑応答では、元毎日新聞政治部長の倉重篤郎氏が「なぜ菅総理は任命拒否したのか?」と質問。これに山極氏は「菅総理は内閣府と学術会議の関係をあまり知らなかったのではないか。菅総理は最初うっかり、会員名簿を見てないと言ったが、言語道断。

 これは菅総理のそういうウッカリ事件だったと思う。それが取り返しがつかなくなったので、居直った。今、辻褄合わせに、第三者委員会を作って、終わらそうとしている。しかしその影響を考えるべき」と回答した。

 オンラインで寄せられた朝日新聞記者の「もし学術会議法の改正法案が通ったら、学術会議はどう抵抗すべきか?」との質問に、広渡氏は「政府の意向に沿わない人間は選ばれない組織に属することを潔しとせず、会員にならないという判断が、個々の科学者に問われる」と答えた。

 そのほか、東京新聞の望月衣塑子記者は、「任命拒否を正当化するような法案は、安全保障・軍事研究にすべての研究者を向けていくため、影響力ある学術会議を変えていく思惑だ。

 大西氏の『自衛のための研究は許されるんじゃないか』発言で防衛省の補助金制度の検討が進められ、2017年の声明(軍事的安全保障研究に関する声明)が出されたが、この流れをどう思うか」等と質問。

 また、ジャーナリストの金平茂紀氏は、「大西氏の会長任期中、大西氏が学長を勤める豊橋技術科学大学が防衛省の研究資金を最初に引き受けた判断について、大西氏は学長に決断権があると言ったが、今の時点でも間違っていなかったとの考えか?」等と質問した。

 会見について詳しくは、全編動画を御覧いただきたい。

 IWJは、日本学術会議の会員候補任命拒否問題について、岩上安身によるインタビューをはじめ、多数報じている。

 あわせて御覧いただきたい。

■全編動画

  • 日時 2023年2月14日(火)16:00~17:00
  • 場所 日本記者クラブ 会議場(東京都千代田区)
  • 詳細 日本記者クラブ サイト内告知

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