【記事紹介】日本学術会議任命拒否問題 菅総理はナチスの授権法の代わりに憲法15条を悪用して独裁を行なっている! その先には軍事研究への誘導がある! 岩上安身によるインタビュー 第1012回 ゲスト立命館大学大学院法務研究科教授・松宮孝明氏 前編 2021.1.4

記事公開日:2021.1.4 テキスト
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(IWJ編集部)

 2020年10月13日、岩上安身は、立命館大学大学院法務研究科教授・松宮孝明氏にインタビューを行った。菅義偉(すが よしひで)総理による日本学術会議の新会員任命拒否問題について、今回任命されなかった6人のうちのおひとりである松宮孝明教授にお話をうかがった。

 インタビューの冒頭、岩上安身は松宮教授のプロフィールとご著書『「共謀罪」を問う:法の解釈・運用をめぐる問題点』、そして立命館大学ホームページに掲載されている松宮教授のメッセージを抜粋して紹介した。

「(刑事手続きの分野)での関心は、わが国独特の法律を軽視した擬似『法治主義』、つまり法を執行する側が法律を厳格に守らないという現象をどう見るかというところにあります」との松宮教授の言葉を紹介した岩上安身は「今回の事態を適切に言い当てている感じがします」と指摘した。

 擬似『法治主義』という概念についてうかがうと、松宮教授は、次のように説明した。

 「裁判所がいろいろと問題のある判決を出していて、国際的にも問題になっているものがたくさんある。最近では『人質司法』に象徴されるように、被疑者・被告人の身柄をずっと拘束することなどが問題になっていますけど、本当は憲法を頂点とする日本の法律はそんなことは考えてなかったはず。なぜそういう事が起こるのかを含めて研究しています。

 国がルールにもとづいて動いてないことがどれだけ大変なことか。忖度国家になると、学問も、経済活動も歪んでいきます」

 続いて、任命拒否問題の経緯について、まずは最初に投じられた「一石」となった松宮教授によるフェイスブックへの投稿を紹介。松宮教授は「会員の候補者」として推薦されながら、任命名簿に名前が掲載されていなかったと日本学術会議の事務局から報告があったことを9月29日にフェイスブックで明らかにしていた。

 すると10月1日に「しんぶん赤旗」が菅総理による任命拒否問題を報じ、その後、大問題として知られるようになった。

 松宮教授以外に任命されなかった新会員候補は、小沢隆一・東京慈恵会医科大教授(憲法学)、岡田正則・早稲田大教授(行政法学)、加藤陽子・東京大教授(日本近代史)、宇野重規・東京大教授(政治学)、芦名定道・京都大教授(哲学)の5人。

 松宮教授は他の候補5人について「法学以外の3人の方は初めてお名前を知ったので、調べたり報道などで知ったんですけど、いずれもすばらしい先生方。この人たちを落としたら会員いなくなるんじゃないかなくらいに思いました」と述べ、さらに「何の理由もなく推薦者名簿から何人か落として任命って、それはどう解釈しても正当化できない。そういう解釈はないでしょう」と菅総理による任命拒否を批判した。

 話題は、10月5日に松宮教授がTBS系列の情報番組「グっとラック」に出演し、元大阪府知事でコメンテーターの橋下徹と議論になったことにも及んだ。

 日本学術会議に費やされる予算10億円について、番組内では「営利企業」と同じ尺度で批判を受けたが、岩上安身は「例えば法学に営利が期待できるんですか」と確認すると、松宮教授は「無理でしょうね」と即答した。

 続けて「私の刑事法なんか人に刑罰を科す法律ですから、どれだけ議論したらどれだけ収益あがるって、刑事法にそんなこと期待されたら困ります」と回答した。

 岩上安身も「営利が上がらなくてもやらなければならないことが近代国家には山ほどあって、その近代国家を成り立たせているのは知の営みなんだということが、まるで欠落している議論だった」と、橋下氏の発言を批判した。

 インタビューの後半では、任命拒否の理由を問われた菅総理が「人事に関すること」として回答を拒否した問題について、松宮教授にご意見をうかがった。

 松宮教授は「文字通り受け止めるとすごいことをおっしゃってると思います。根拠はまったく示さないでも内閣総理大臣は学術会議の推薦にもとづいて任命する学術会議の会員につき、その任命を拒否することができる。つまり、虫の居所が悪かったでもいいと。なんでもいいし、それを説明する必要もない。これは独裁なんですよ」と批判した。

 そして、「これは独裁の論理であり、しかもそれ(の正当化のため)に憲法15条1項を持ってきたんですよ」と、菅総理による独裁の手法が憲法15条を悪用したものであることを指摘。「総理大臣がなんでも任命したり拒否したり罷免したりできると、そんな条項だって、もし司法試験に書いたら落ちますよ」と斬り捨てた。

 さらに「ヒトラーが政権掌握して、全権を持った時のやりかたと似てるんです。ヒトラーはワイマール憲法の中の緊急事態条項を使って自分に全権を委任する授権法っていうのを多数で帝国議会を通して、自分に全権を持たしたわけですよ」

 「菅総理の今回の言い方は、それすらやらないで憲法15条は『授権法』だと言い張るわけですよ。すごい理屈です。憲法学者はみんなひっくり返っていると思いますよ」と驚きをもって述べた。

※本編記事・映像は、こちらより御覧いただけます。

 また、下記Independent Web Journalの「note」にて本記事、映像を公開中です。
 https://note.com/iwjnote/n/n8ba904f16952

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