12月22日午後6時半から、「『国防バカ』がつくる欠陥国防戦略!『軍事力偏重の罠』に陥る日本政府! 今、日本に求められるのは『外交・安全保障革命』!」と題して、岩上安身による東アジア共同体研究所 須川清司上級研究員インタビュー 第1回を生中継した。
岸田文雄総理は12月16日に、「安保3文書」の改定を閣議決定したことを発表した。我が国の防衛計画の基本方針の大変更であり、これによって国民の命と暮らし、国土を守れると岸田総理は胸を張った。しかし、本当にそう言えるのであろうか。
外交・安全保障問題を専門とする須川氏に岩上安身がお話をうかがった。
冒頭、岩上安身が、今、「安保3文書」の改定など日本で起こっていることを理解するためには、ウクライナ紛争は、米国がウクライナを使ってロシアを「弱体化」させるための「代理戦争」であるという認識が必要だと述べた。
岩上「(ウクライナ紛争は)代理戦争です、あれは。他方では、同じようなモデルを、『台湾独立、これを阻む中国』という図を描いて、日本を動員する、という絵を描いている。そのための準備をしろよ、と日本に言ってきている。
早い話が、ウクライナ紛争も、アメリカの様子も、そして日本も中国も、ひと渡り見ないと理解ができないですよね」
須川氏「そうですね」
岩上「前々から、こういう問題については、IWJでは、お伝えし続けて来たんで。例えば中国の専門家に、中国は非常に発展を示していて、それをアメリカは『脅威に感じている』ということをお伝えしたりとか。あるいは、日本の安倍政権が『タカ派』と言われているけれども、その実態は非常に対米隷属で決して日本が自主独立の道を歩むという話ではないんだとか。
いろんな事をやってきたんですが、今、いろんな支流でやってきた、川上の水が、もう中流域か下流域で合流して大きな歴史の大河になって、日本は(米中戦争の)パチンコ玉の弾にされちゃうかもしれない、戦場になっちゃうかもしれないという、危ない場面にやってきたなと思っております」
須川氏は、今、ちょうど、ハーバード大学のスティーブ・ウォルト(ステファン・ウォルト)氏のインタビューを読んでいた、と述べた。
岩上「ウクライナ侵攻が起こってから、非常に勇気ある発言をしている学者として、リアリストのミアシャイマーという学者が注目を集めているんですけれども、ミアシャイマーとスティーブ・ウォルトが一緒に仕事をして、『イスラエル・ロビー』という本(IWJ注*)を書いたことがありました」
(IWJ注*)ジョン・J・ミアシャイマー、スティーヴン・M・ウォルト(2007)『イスラエル・ロビーとアメリカの外交政策1、2』(講談社)
須川氏「その人ですね。私はたまたま、96年に一文無しになって留学してた時に、ステファン・ウォルトのクラスを取ったことがあってね」
須川氏は当時を振り返り、活気のある授業の一コマを紹介した。
岩上「ミアシャイマーは、これ(ウクライナ紛争)は、『アメリカに非があるんだ』と。早い話が『ウクライナに武器支援をやって寝た子を起こして。ロシアは別に暴れているわけじゃないのに近くまで行ってロシアという熊の眼をつんつんと突いて、NATOの東方拡大をやって、こういう挑発を行ったアメリカが悪いんだ』、と。ズバリ言い切っているわけです。(中略)
日本の一般の人々は、新聞、テレビを見て、ものすごくこの一年間情報コントロールされましたから。ウクライナ紛争に関しては『ウクライナ頑張れ、ウクライナかわいそう、ウクライナは善なる存在、悪はロシア、悪はプーチン』みたいな善悪二元論になって、洗脳されてきたわけですけれども。
そういうものの見方、その中でアメリカがリーダーシップを発揮していて、そのリーダーシップにくっついていくのはいいことなんだと。国際社会は一致団結している、G7とか。G7が国際社会を代表しているわけでもないのに、そういうプロパガンダがなされているわけです。それが大勢だと。(中略)
それ(大勢)とは違うことをおっしゃっている…?」
須川氏「はい。そうですね。ウォルトは、今はハーバード大学にいるんですけども。今年2022年の振り返りっていうインタビューを、アメリカの外交雑誌から受けたんです」
岩上「『フォーリン・ポリシー』(*IWJ注)ですね?」
(*IWJ注)Stephen Walt on How 2022 Changed the World(Foreign Policy、2022年12月21日)
須川氏「(ウォルトは)『2022年というのは、アメリカのリーダーシップ(が弱まった)、みんながアメリカに従わなくなったということが、はっきりした年になるだろう』と。『後で振り返ってみれば、2022年が、そういうことがはっきり分かった年になるだろう』と」
岩上「リーダーシップ喪失の元年とだということですね?」
須川氏「これは、日本の論調というか、世の中の雰囲気で行くと、『ウクライナで戦争があります、アメリカが助けてます。世界に呼びかけて制裁を働きかけて、民主主義のためにアメリカがリーダーとしてやってます』と。
だから『アメリカに従って行けばいい。世界中がアメリカに従っているんだから。日本もバスに乗り遅れてはいけません』と。そういった雰囲気を利用して、今回の『3文書』が決定されたという面もかなり強い」
岩上「間違いないですね」
須川氏「なんですが、ウォルトはまったく逆なんですね。多分、世界のことを広く、公平に見ると、先入観なしに見ると、『随分アメリカの言うことを聞かなくなったな』というのが彼の実感です。
彼は実例として、イスラエルとサウジアラビアをあげている。彼らは、ロシアに対してアメリカが呼びかけた協力を断っているんです」
岩上「イスラエルが断っているというのはすごいですね」
須川氏「サウジも石油の増産について、『インフレで困るから増産してくれ』と米国に言われても、『ノー』で」
岩上「しかも、自分達が産油国で、石油を輸出している国でありながら。ロシアに制裁をやろうといっているのに、ロシアの石油を買って、わざわざヘルプしているんですよね」
須川氏「あと、もう一つ例を挙げていたのがインドです」