安倍内閣支持率急落!「共謀罪法案が施行されてしまった今大事なことは、決して萎縮せず声を上げること!」高山佳奈子氏、金平茂紀氏らが「自由」の危機を考えるリレートーク 2017.7.9

記事公開日:2017.7.20取材地: テキスト動画
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(取材・文:大下由美、記事構成:岩上安身)

緊急特集 共謀罪(テロ等準備罪)法案シリーズ|特集 共謀罪・盗聴法・マイナンバー
※8月12日、テキストを追加しました。

 7月11日に、犯罪を計画段階で処罰する「共謀罪」の趣旨を含む改正組織犯罪処罰法がついに施行されてしまった。思想・表現の自由や、米軍基地反対や反原発など自らの主張を示す市民団体の行動が侵害され、超監視社会につながる恐れがある。

 共謀罪施行直前である2017年7月9日(日)、東京都新宿区の早稲田大学にて、安全保障関連法に反対する学者の会主催により、「大学人と市民のつどい 自由が危ない―表現・思想・学問の自由」が開催された。高山佳奈子氏、金平茂紀氏、吉岡忍氏など大学教授からジャーナリスト、作家、大学生まで様々な立場の10名から「自由」をテーマにリレートークが行われた。

 今後の「自由」への危機感や、東京都議選の自民党大敗から安倍内閣支持率急落と社会に変化があったからか、会場には多くの参加者が詰めかけた。当日は夕方から、新宿で「安倍政権に退陣を求める緊急デモ」が開催されることもあり、登壇者は「参加して声を上げよう!」と呼びかけていた。

 冒頭の挨拶で、東京大学名誉教授の広渡清吾氏は、政府の役割について、「憲法に従ってその権限を行使し、主権者市民の福祉を実現すること」と述べた。本当はなくても社会が成立する共謀罪法案を強行採決するような政府が、主権者市民の福祉を真剣に考えてくれるとはとても思いがたい。

 続いて広渡氏は、「自由」の中には「政権を批判する自由」があり、それは市民が有する「政府が役割をきちんと果たしているかチェックする権利」が保障されること、と解説。「これは、国民主権と民主主義の憲法体制のもと、いちばん基本的で不可欠なもの」と強調した。

▲広渡清吾氏(東京大学名誉教授、元日本学術会議会長)

 IWJでは、今まで、広渡清吾氏が登壇した数々の講演会の取材を行っている。ぜひ合わせてご覧いただきたい。

 共謀罪の最大の目的は、恐怖心を煽らせ国民を萎縮させることだ。政府の思惑に負けず、私たちが一人ひとり手にしている「政権を批判する自由」を遠慮なく行使して、私たち市民も政府をチェックし続け、不正に対しては声を上げる姿勢を持ち続けなければならないだろう。

■ハイライト

  • リレートーク
    安全保障関連法に反対する学者の会 高山佳奈子氏(京都大学教授)/岡野八代氏(同志社大学教授)/中野晃一氏(上智大学教授)/青井未帆氏(学習院大学教授)
    吉岡忍氏(日本ペンクラブ会長、作家)/金平茂紀氏ジャーナリスト)/馬場ゆきの氏(未来のための公共、大学生)/永田爽真氏(AEQUITAS〔エキタス〕、大学生)/長尾詩子氏(安保関連法に反対するママの会、弁護士)/小原隆治氏(早稲田大学有志の会早稲田大学教授)
  • 挨拶・結語 広渡清吾氏(東京大学名誉教授、元日本学術会議会長)/佐藤学氏(学習院大学教授、東京大学名誉教授)
  • タイトル 大学人と市民のつどい自由が危ない―表現・思想・学問の自由
  • 日時 2017年7月9日(日)13:30〜16:30
  • 場所 早稲田大学早稲田キャンパス(東京都新宿区)
  • 主催 安全保障関連法に反対する学者の会

日本国民は、自由が失われたら、権利が侵害されたらどうなるのか想像できない!?

 前半は、安全保障関連法に反対する学者の会から、大学教授4名が登壇した。

 IWJでは、安全保障関連法に反対する学者の会が発足された当初から、記者会見などの取材を行っている。ぜひ合わせてご覧いただきたい。

 上智大学教授の中野晃一氏は、「現代政治と市民の自由」をテーマに、今の日本社会が功利主義的なものの見方になってしまっているのではないかと指摘した。

 つまり、共謀罪のことを話してもピンとこない国民が多いのは、自由が失われたら、権利が侵害されたらどうなるのか想像できず、結果的に「少しくらい権利を失っても良いのではないか」と思ってしまっていると解説した。アメリカでも、トランプ大統領誕生は「経済が良くなるのであればあのような人間でも」という背景があり、実は世界的な危惧ではないかと中野氏は感じている。

▲中野晃一氏(上智大学教授)

【中野晃一氏 関連記事】

「良心」が死んだところにはもはや自由は存在しない!「自由」のかけらもない安倍政権

 昨年11月からパリで在外研究を行っている同志社大学教授の岡野八代氏は、「フランスの今から見えること」と題して、フランス人の考え方やライフスタイルを紹介し、フランスの哲学者ジャン=ジャック・ルソーの言葉を引用して「自由」について語った。

 自由にとって非常に大切なことは、「良心」であり、フランス語で「共に知ること」を意味する。ルソーは、「自分の声、良心の声に耳を傾け、従って生きる人」を自由と考え、「他人の意見だけに従って、自分自身で判断をしない人」は不自由だと考える。つまり、「安倍政権には自由のかけらもなく、それを支える政治家には自由がない」と断言した。

 また、岡野氏は、政府が教材に使用することを否定しなかった教育勅語について「果たした歴史的な役割について全く反省することもなく、子供たちに『上が正しいと言ったことは正しい』と教え込む態度は私たちの良心を殺す。良心が死んだところにはもはや自由は存在しない」と批判した。

▲岡野八代氏(同志社大学教授)

【岡野八代氏 関連記事】

個人情報は知らず知らずのうちに集められている!行動自体が操作され、「監視は対象者に気付かれず自由を奪う」と高山佳奈子氏が危惧!

 共謀罪立法について異を唱え続けてきた、京都大学教授の高山佳奈子氏。共謀罪の内容の矛盾についての解説に加え、「監視は対象者に気付かれず自由を奪う」と危惧する。「自分では広く情報を集めて合理的に決定を下しているつもりでも、個人情報は集められ、情報のインプットが偏ったものへと操作されれば、行動自体が操作されることになる」と解説した。

 高山氏は、「海外メディアは全て共謀罪立法に批判的だ」と紹介した。国境なき記者団にはウェブサイトの日本のコーナーに「安倍晋三の圧力」と採り上げられ、国連特別報告者には 「日本政府に報道の独立性を求める」と懸念を示される。これらは「日本の恥である」と嘆いた。

▲高山佳奈子氏(京都大学教授)

【高山佳奈子氏 関連記事】

「第9条に自衛隊を少し書き加えるだけ」では済まされない!社会が不安定になり破綻する「安倍改憲の危険性」

 学習院大学教授の青井未帆氏は「安倍改憲の危険性」をテーマにトークを行った。

 メディアによって「改憲は仕方がない。9条に少し加えるくらいなら」と国民が思わされている様にも見えると述べ、このまま仮に自衛隊について書き込むとしても、「軍法会議はどうするのか。憲法で軍事に関わる権限が定められていない中でどこまで引き出せるのか」と懸念を示した。

 青井氏は、市民法と軍法の秩序が余りにも違うことで社会が不安定になり、今後破綻するだろうと予想。「政治家はもっと怒らなければならないし、私たち国民も『単に書き入れるだけ』で納得してはならないくらいの大きな問題が控えている」と指摘した。

 「どこかで私たちは、統治をされる側として『与えられる自由』を前提にしているのではないか」と青井氏は問いかける。改憲が進められていく中、軍事的に対抗する力がない市民社会は弱くなってしまう。「今後私たちに問われるのは、市民社会の強靭さ」と締めくくった。

▲青井未帆氏(学習院大学教授)

【青井未帆氏 関連記事】

近代文学を知り、表現・創作の自由を現代に引き継ぐ――島崎藤村、石川達三、川端康成のエピソードから――

 後半は、様々な立場からトークが繰り広げられた。日本ペンクラブ会長の吉岡忍氏は、島崎藤村、石川達三、川端康成の3名の文学者について語り、「表現・創作の自由を言い続けてきた近代文学の考えを引き継がなければならない」と述べた。

▲吉岡忍氏(日本ペンクラブ会長、作家)

【吉岡忍氏 関連記事】

金平茂紀氏が「メディアの劣化」を危惧!報道する側と受ける側が相乗的に危機的状況!

 ジャーナリストの金平茂紀氏は、東京都議選における、秋葉原での安倍総理の応援演説を採り上げ、ニュースで「安倍やめろ」の声を消して報道したNHKを批判した。「報道とは、現場で起きたことを伝えることであり、声を消すということは現実ではなくなる。これは到底理解できない」と40年間報道に携わってきた立場から訴えた。

 IWJでは生の声を届け、NHKとの落差が大きな話題になった。

 金平氏は、今のメディアの現状を「メディアの劣化」と表した。これは報道する側だけではなく、「今のメディアは信じられない」と思わされる受け手にも言えることで、相乗的に劣化していく危機的状況だと危惧した。

▲金平茂紀氏(ジャーナリスト、TBS「報道特集」キャスター)

【金平茂紀氏 関連記事】

若い世代のストレートな訴えが心を打つ!「共謀罪に決して萎縮しないでください!」

 続いて、2名の大学生が若い世代の立場で訴えた。

 「未来のための公共」の馬場ゆきの氏は「私たちができることは声を上げること。共謀罪に決して萎縮しないでください!」と、「エキタス」の永田爽真氏は「自由を行使するためにはお金と時間が必要。日々の生活が苦しい人は難しい。誰でも普通に暮らせる社会が欲しい!」と訴え拍手喝采を浴びた。

▲馬場ゆきの氏(未来のための公共、大学生)

▲永田爽真氏(AEQUITAS〔エキタス〕、大学生)

【「未来のための公共」 関連記事】

【AEQUITAS〔エキタス〕 関連記事】

「誰の子供も殺させない!」子を思う母の一心な気持ちが、安保関連法に反対するママたちを突き動かした!

 「安保関連法に反対するママの会」の長尾詩子氏は、育児の経験があるからこそ人間の命の尊さがわかると戦争反対の意を示し、平和を訴えていくことは女性としての権利や自由を守ることにもつながると述べた。

▲長尾詩子氏(安保関連法に反対するママの会、弁護士)

【長尾詩子氏 関連記事】

護憲野党と市民の共闘は2015年から今も続いている!スペイン戦争義勇兵ジャック白井の、反ファシズムに立ち向かう精神に思いを馳せて叫ぼう!「奴らを通すな!No pasarán!」

 「早稲田大学有志の会」のメンバーで早稲田大学教授の小原隆治氏は、スペイン市民戦争で共和国軍側に参戦し、反ファシズムのために闘った日本生まれの義勇兵ジャック白井について語り、「彼の志が、今の自由と民主主義の破壊を止めようとしている私たち市民につながっているかもしれない」と語った。

▲小原隆治氏(早稲田大学有志の会、早稲田大学教授)

【小原隆治氏 関連記事】

報道ジャーナリストの良心の声、国民一人一人の声がこれからの日本を動かす!

 結びは、学習院大学教授の佐藤学氏により、未来に希望が持てる締めくくりとなった。安倍政権の支持率低下という地すべりのような社会の変化を作り出した人たち――前川喜平文部科学省前事務次官、詩織さん、東京新聞望月衣塑子記者などの報道ジャーナリスト――が讃えられた。

 IWJでは、前川氏、詩織さん、望月記者に関連することは、精力的に取材やインタビューを行い記事化している。8月10日には、望月記者から寄せられた最新のコメントとともに、望月記者の6月13日に開催された市民集会でのスピーチを全文掲載した記事をアップしたので、ぜひご覧いただきたい。

 また佐藤氏は、今まで自民党に票を投じていたような無党派層の支持率低下のデータを紹介して、この動きに注目していると語った。「今での無党派層は、政治に興味がなかったのではなく希望が持てなかったのだ。これらの人が怒りの声を上げ出したから社会は変わったのだ」と指摘した。

※「全体の半数を占める無党派層の支持率は14%、不支持率は60%」と紹介されている。

▲佐藤学氏(学習院大学教授、東京大学名誉教授)

【佐藤学氏 関連記事】

 政権に変化が起こっている今が攻め時。報道ジャーナリストの良心の声、国民一人ひとりの声がこれからの日本を動かすことが出来ると信じて、安倍政権の行く末を追いたいと思う。

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