内容だけでなく手続きにも問題「審議が短すぎる」~緊急シンポジウム「国家秘密と情報公開」表現の自由が危ない! 2013.12.6

記事公開日:2013.12.6取材地: テキスト動画
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(IWJ・鈴木美優)

 「国の重要な法律は、もっと何度も審議し、パブリックコメントを取るべき」――

 6日の夜に成立した特定秘密保護法に対して、国民や野党からの反対の声は絶えない。日本ペンクラブ、自由人権協会、情報公開クリアリングハウスの共催で、緊急シンポジウム「国家秘密と情報公開」第3弾リレートークが衆議院第一議員会館で行われ、日本ペンクラブや日本写真家協会、国会議員や弁護士などが参加した。

 「この法案で一番の欠陥だと思うのは、政府が違法行為をしているときに、それを秘密にしてはいけないと書かれていないことだ」と海渡雄一弁護士は訴え、「公務員やジャーナリストが政府の違法を明るみに出したときに、(政府が)処罰されない。ここに根本的な欠陥があるのでないか」と法案の内容について厳しく指摘した。

 日本ペンクラブ専務理事の吉岡忍氏は、「透明度があることが、民主主義の政治制度で一番のポイントだ」と述べた上で、「透明度をなくしてしまう秘密保護法は、私にとって非常に嫌なもの」と不快感をあらわにした。吉岡氏は、「秘密を持つものが私たちを支配し、管理するようになることがはっきりと予測できる」と述べ、同法が、「秘密を持つものに優越感を持たせ、天狗にするもの」だと批判した。

 同クラブ常務理事の西木正明氏は、同法の拡大解釈が容易であることが一番の問題点だと指摘。秘密指定の範囲が曖昧であることから、「ある日突然身の回りのことが国家機密に指定される可能性がある」と述べ、解釈の確認を徹底する必要があると主張した。

 みんなの党の真山雄一参議院議員も参加し、自身が当初、参議院の国家安全保障特別委員会の委員だったことを明かした。その上で、自身が秘密保護法案に反対だったのに対し、党が法案に賛成の方針を定めていた経緯を説明。「党の方針と違う意見を持つ者が委員をやるのはおかしい」として、委員を外されたことを公表した。

■ハイライト

  • リレートーク
     吉岡忍氏(日本ペンクラブ専務理事、作家)、西木正明氏(日本ペンクラブ常務理事、獄中作家委員長、作家)
     野上暁氏(日本ペンクラブ常務理事、子どもの本委員長、作家)、中村敦夫氏(日本ペンクラブ理事・環境委員長、作家)
     山口勝廣氏(日本写真家協会理事、写真家)、山了吉氏(日本雑誌協会、小学館)

国会内の手続きにも問題

 秘密保護法案の内容だけでなく、その手続きの過程にも問題が多いと指摘されている。参議院の特別委員会で筆頭理事を務めていた民主党の福山哲郎議員は、審議時間の短さを指摘した上で、審議が全て強行採決の形を取っていることを強く批判した。また、4日に大宮で地方公聴会が強行されたことについても、「前日の夜6時に強行採決で公聴会の開催が決定され、傍聴人もわずか30人の関係者のみだった」と報告。「公聴会という名の、逆に国民の知る権利を奪った公聴会」と政府の手続きを軽んじる姿勢を批判した。

 自由人権協会の秋山幹男氏も、「国の重要な法律は、もっと何度も審議し、パブリックコメントを取るべきだ」と述べ、「もっと国民と政府の間で論争できることが大事だ」と、慎重審議で国民的議論をしていく必要性を強調した。

写真家に萎縮意識を植えつける可能性

 日本写真家協会理事の山口勝廣氏は、「写真家は現場にいなければ、写真を撮ることができない」と述べた上で、秘密保護法による秘密指定により、写真家が現場に行くことさえできなくなる可能性があると強く批判。「写真家に萎縮意識を植えつけるのでは」と、秘密保護法が写真家の仕事に支障をきたす可能性を示唆した。

 日本雑誌協会の山了吉氏は、総合週刊誌の多くが秘密保護法の問題について深刻にとらえていないこと指摘し、「中身をよくわかっていないのでは」と見解を語った。「新聞やテレビが表の情報だったら、週刊誌は裏の情報を公開し、お金を出して買ってもらうことに存在意義がある」と山氏は述べ、同法が総合週刊誌の存続を危ういものにすると強い口調で訴えた。

 自由人権協会の藤原家康理事長は、「本法案はジャイアンの法則のように、『俺のものは俺のもの、お前のものも俺のもの』と言っているようなものだ」と述べ、本法案に感心を持たない国民に対しても、「なんでこんな大事な問題を無視するのか」と疑問を投げかけた。

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