ガンを作り、高値で抗がん剤を売りつける農薬、遺伝子組み換え、放射能、ワクチン…企業利益のためにリスクが隠ぺいされる日本~岩上安身によるインタビュー 第539回 ゲスト 西尾正道氏 第三弾・後編 2015.5.9

記事公開日:2015.5.14取材地: テキスト動画独自

(IWJテキストスタッフ・関根かんじ)

特集 TPP問題|特集 子宮頸がんワクチン
※公共性に鑑み全公開します。

 「農薬、遺伝子組み換え技術、放射線。これらには良い面もあるが、影の部分も明らかにすべき。今やっているのは隠ぺい、ウソ、騙し。無責任、不誠実で非科学的です。企業の金儲けのために、人々が健康被害を受け続けているのは大きな問題です。大変な目に遭うのは自分たち。真剣に考えなければいけない」──。

 北海道がんセンター名誉院長の西尾正道氏は、2015年5月9日に岩上安身が行ったインタビューで、生活習慣病やがんが戦後に急増しており、生活環境や食生活の変化が深く関与しているのは明らかだと訴えた。

 インタビューの前編では、TPP、モンサント社の戦略、遺伝子組み換え食品や子宮頸がんワクチンの危険性について取りあげた(※)。今回の後編は、子宮頸がんワクチンの解説の続きから始まり、戦後、増え続ける日本人のがん、がん治療の現実、日本の医療費問題、福島原発事故での健康被害の真相に迫った。

 岩上安身が、「現在、開発中の抗がん剤は4年前の4倍の48種類。抗がん剤の世界市場は6兆2000億円。発展途上国に原発を建てれば、(がんは)もっと増えるでしょう。『兵器を作り、戦争を始めて、兵器を売る』のと同じ構図。需要は作られるということですね」と話すと、西尾氏は、「需要は増える。だって、がんを作って、抗がん剤を売るんですから」と応じ、医療のビジネス化に警鐘を鳴らした。

<会員向け動画 特別公開中>

■イントロ

■全編動画

  • 西尾正道氏(北海道がんセンター名誉院長)
  • 日時 2015年5月9日(金)15:00〜
  • 場所 IWJ事務所(東京都港区)

「原子力ムラ」と同じ構図の「医療ムラ」の体質

※以下、インタビューの実況ツイートをリライトして掲載します。

西尾正道氏(以下、西尾・敬称略)「80%の女性は(子宮頸がんの原因となる)HPVの感染があり、通常、90~99%は免疫で自然排除されます。ウイルスが潜伏したとしても10年くらいかかって前がん状態になる。20代の女性で前がん段階、10年くらいかかって30代で発がんする例が一番多い。

 また、前がん状態の細胞診では、炎症が起こっただけの異型細胞を見間違えることも多い。日本では3b診断(疑陽性)でも切除してしまい、やりすぎなところもあります。子宮関連のがんすべてで、40年前より(発症が)20歳ほど早くなっています」

岩上安身(以下・岩上)「全世界で、子宮頸がんワクチン接種の実績は220万人らしいですが、もっと増やしていきたいのでしょうね」

西尾「日本政府の試算では、死亡数を73.2%減少させ、190億円の医療コスト削減になるとしています。しかし、副反応対策を考えて、仮に2000人いる被害者に1000万円補償したら200億円になり、医療費削減の根拠は破綻します」

岩上「原発の試算と同じですね。過酷事故を想定していない。(原子力ムラと同様の)医療ムラですね。そして、いつも安全保障が後ろから現れる」

西尾「日本の子宮頸がん検診は先進国の中でもとりわけ低い。アメリカ85%、韓国68.7%、日本は37.7%。日本人は安い医療費に頼って、健康に対する真剣さが足りません」

リスク解明など、企業の不利益になることはやらない

岩上「これまではよかったけれど、これからはそうもいきません。資本の空洞化ができ、グローバル資本が横やりを入れてくる。TPPに入ったら、軍産複合体が政府を脅し、裁判でも太刀打ちできなくなります。被害者が訴えても、グラクソ・スミスクライン社はISD条項で『政府の施策やメディア管理が悪い』などと日本政府を訴え、賠償金を取る可能性がある」

西尾「日本政府はメチャクチャです。社会保障費削減のお金でオスプレイを買う。このお金の使い方は信じられません」

岩上「ウクライナ内紛などは日本の防衛と関係ないし、アメリカによる侵略です。その肩代わりをするんです。日本の軍事費は世界で4番目になりました」

西尾「子宮頸がんは、それでも検診率はトップです。早く見つけて、そこの部位をとれば済む。出産にも影響しません。今、子宮がんの6割が子宮体がんだから、その検診の方が重要です。それでもワクチン接種を希望する人は、リスクがわかった上で、自分の判断と責任で決めなければなりません。しかし、強制は論外です。

 問題は、遺伝子組み換え技術で作るワクチンの、アジュバント(免疫増強剤)の危険性がわかっていないという、二重のリスクがあることです。動物実験などをやって安全性を確かめればいいが、企業の不利益になることは何もやらない。リスクを解明させない研究体制を敷き、農薬や遺伝子組み換え作物、放射線などとまったく同じ構図です」

自己責任にさせるため「成人病」は「生活習慣病」に

岩上「カーン大学のセラリーニ教授のような実験をすればいいんですね。では、がん医療の現実について説明をお願いします」

西尾「がんの多発は、戦後の生活環境や食生活の変化が深く関与しているのは明らかです。今はそれに、被曝、農薬などの化学物質、遺伝子組み換え食品なども加わります。さらに認知症にも、それらの影響が言われ始めています。実は1945年を境に急激に『成人病』が増えます。1990年代に、これを『生活習慣病』と言い換えた。病気の原因を個人の生活習慣のせいにして医療費を払わせるためです」

岩上「私が倒れたのも食生活が悪かったのかもしれません。倒れてから、いろいろな人が生活習慣についてアドバイスしてくれました。しかし、(環境が要因なら)どうがんばってもダメかもしれないのですね」

西尾「一生懸命、働いていれば仕方ないです。買ってくる食品が、昔とは違うのですから。40年前、60歳以上がトップだったがん死亡率が、今は40代に若年化して深刻です。さらに悪いことに、若い人の死因のトップは自殺なんです」

岩上「もしかしたら、農薬などで、脳神経系に影響が出ている可能性があるのかもしれませんね。私も小さい頃にアレルギーがあって、大人から『根性がない』などと叱られていました。(農薬や添加物などの)幼少期からの長期的な曝露だけではなく、成人後の環境悪化も健康に影響するのでしょうか」

西尾「あると思います。幼少期からでなくとも、ずっと摂取しているんですから。放射線と同じで、子どもはより感受性が高いということです。がん罹病率は若年化している印象です。一番の原因は核実験ではないでしょうか。1960年代中頃に、大気中の核実験が中止になった。きっかけはイギリスの女医(アリス・メアリー・スチュアート)が、子どもの白血病は医療被曝が原因だ、とアメリカの議会で証言したことです。

 本来、科学者や医学者はそうでなくてはいけない。今は御用学者ばかりです。江戸時代に、2人に1人、がんで死んだなんて聞かないでしょ? 高齢化で(がんの発見が)増えたという先生もいますが、論外です。今、若年で増えているんですから」

「遺伝するがんは少ない」外部環境が圧倒的に影響する

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岩上「1920~45年まで、がんの増加がない理由を、伝統的和食だったからとして、食生活の変化と生活習慣病の増加を重ね合わせている。しかし、食生活だけではなく、大きな社会的要素を見ないわけにはいかないですね」

西尾「2012年の国立がん研究センターの統計では、男性のがん生涯罹病率60%、女性45%。男性10人に1人、女性15人に1人が肺がんです。だから、ある年代になったら心がけて検診を受けてもらわなければなりません」

岩上「私の家系には、がんで死んだ者がいないので、安心していたのですが……」

西尾「関係ないんです。乳がんなどは別にして、遺伝するがんは少なく、外部環境が圧倒的に影響する。検診できるのは、胃がん、肺がん、乳がん、子宮がん、大腸がん。肝臓がんや膵臓がんなどはMRIやCT、PETで発見します。

 2012年の医療費は約40兆円。2015年、がんセンターの統計では、罹患率のトップが男性は前立腺がん、女性は乳がんになりました。これは両方ともホルモン依存性のがんです。前立腺とは前立腺液を産出する器官で、前立腺肥大とは別です。

 これらは男性、女性双方のホルモンバランスが崩れることが引き金になります。今、前立腺がんにはPSAという精度の高い腫瘍マーカーができています。このがんは、進行の早い悪性と遅い2つのタイプがあります。遅い方のがんは、80代になったら放っておいても大丈夫です」

医療費のGDP比は日本10%、アメリカは20%

西尾「2012年の社会保障給付は税収の2倍の108兆円です。内訳は年金49.7%、医療31.9%、福祉・介護18.4%。かつ、年間1兆3000億円ずつ増えています。75歳以上の1人当たりの年間医療費は92万円で74歳以下の4倍です。医療費を一番使っていないのは高校生ぐらいの年代です。

 ただし、これは今の医療システムでのデータです。それがTPPには入ったら、主導権をアメリカが握るので、こんな予想は成り立たなくなります。おそらく2倍に跳ね上がるでしょう。

 日本の国民医療費のGDP比は10%ですが、アメリカでは20%です。以前は入院医療費が多かったのですが、今は外来医療と入院医療は半々になりました。医者全体の半分以上もいる歯科医療費は7%。調剤費が多く、院外薬局が儲けている。医療費では循環器系がトップ。これは治る病気ではなく生涯コントロールするものです」

がん治療は抗がん剤80%、手術17%、放射線治療は3%

岩上「高血圧の薬はやめろ、という意見をよく聞きますが、自己判断で薬をやめるのはよくないのですか」

西尾「それはいけません。身体を動かし、塩分を控えて体重を落とせば血圧は下がります。医師の指導があればいいですけど、それでは病院通いする人がいなくなるので、言わないでしょう。医療費の二番手を占めるのは抗がん剤です。手術代はたかが知れている。

 TPPになっても、今の国民皆保険で認めている医療は縮小しないでしょう。放射線、手術、抗がん剤の3大治療法のうち、80%が抗がん剤、17%が手術、3%が放射線治療です。だから、TPPで一生懸命に日本の医療を狙っているのが製薬産業なんです」

岩上「現在、開発中の抗がん剤は4年前の4倍の48種類。2015年の抗がん剤の世界市場は6兆2000億円。発展途上国に原発を建てれば、(がんは)もっと増えるでしょう。『兵器を作り、戦争を始め、兵器を売る』のと同じ構図。需要は作られるということですね」

西尾「需要は増えます。だって、がんを作って、抗がん剤を売るんですから。世代別1人当たりの金融資産データ(2013年)では、60代で3000万円だそうです。しかし、20代、30代はほとんど資産がない。今はアベノミクスで浮かれていますが、今後、労働生産性で右肩上がりの産業は、医療・福祉しかない。不動産は1人当たりの儲けは大きいが、医療はマンツーマンで生産効率は低い。ここが儲かっても、日本全体のGDPが上がるわけではありません」

岩上「国は、アベノミクスで医療特区を作って医療・製薬をビジネスにしようとしているが、製薬会社が儲かるだけ。新技術や新たなビジネスなどの再生産は起こらず、国内産業の活性化にはならない。富裕層相手のビジネスを、他国に輸出するくらいです。医療をビジネスにしてはいけないのですね」

完全に効くわけではない抗がん剤

西尾「抗がん剤治療について認識してほしいことは、抗がん剤は種類によって効果がまちまちなことです。がんがなくなってしまうなど、著明に効くことを『著効』、サイズが半分以下になったら『有効』と呼び、『著効』+『有効』=『奏功率』、それが20%あれば、抗がん剤を使うことができるのです。つまり、完全に効くわけではないのですが、調剤費はこの10年間で22倍になっています。

 今、抗がん剤で完治できるのは、急性白血病、悪性リンパ腫、精巣腫瘍、繊毛がんなどです。感受性が高い部位だから効きやすい。しかし、あとのがんは進行を遅らせたり和らげることができるだけです。3割効けばいいくらい。野球の打率と思った方がいいです」

岩上「以前、丸山ワクチンが認可されなかったと話題になりましたが」

西尾「それは、ゼリア新薬が丸山ワクチンの成分を薬にして、治験をしたが、がんには効かなかったのです。放射線治療で白血球が減る人がいて、これを使うと減少を防げると言っていましたが、効果がないので、今はほとんど使われていません。私も使ったが効きませんでした」

 乳がんの術後補助療法でも、今後、TPPになれば高額で使えない人も増えるでしょう。また、肺がんではCDDPがよく使われるが、2年後の生存率はあまり変わらないことが明らかになっています。延命数ヵ月のためにタルセバ1錠1万円を使って、高額になってしまうかもしれない。抗がん剤は副反応も苦しく、そのための治療も必要です」

最先端医療の抗がん剤は2回で約500万円

岩上「日本でも医療大麻が解禁されたといいますが?」

西尾「医療大麻以外に、モルヒネ系もあるが、日本は種類が少なく、使える医師も少ない。また、日本人には耐性が弱いようです。アメリカでは普及していて、アルコールと同じで人間の耐性も強い。日本でもモルヒネ系の薬などをもっと認可すればいいとは思います。

 再発性の強い卵巣がんの術後の抗がん剤を、婦人科医が行なっても、腫瘍専門医でも生存率は変わらない、というデータもある。抗がん剤は効果をもっと公開すべきです。でも、抗がん剤の効果があるなら使うに超したことはない。それよりも予防に気を使い、検診で早期に治療すれば、どの疾患でも100万円以内で収まります。しかし、がんの3期、4期になると、桁違いの金額と命を取られます。

 現在、放射線と抗がん剤を併用する、患者さん自身もつらい方法で、4%くらいの延命率。それが、ガイドラインとしてひとり歩きしている。また、70~80歳の体力のない患者に使うのも問題です。放射線なら副反応は少ないし、安くすむ。

 最先端の分子標的治療の抗がん剤もバカ高い。たとえば、保険が使える悪性リンパ腫の治療薬ゼバリンは2回投与で約500万円。転移性大腸がんの抗がん剤治療は、1年間延命させるために6000万円かかります」

医療費削減政策で「高齢者には在宅で死んでもらう」

岩上「早期発見の技術はどうですか?」

西尾「もちろん進化しています。犬に嗅ぎ分けさせる方法なども開発中です。匂いは、私も末期がん患者から腐臭がした憶えがあります。現在、質調整生存年(QALYs)といい、生存年と生活の質(QOL)を掛け合わせた数値で評価し、治療方針を決めようとしています。厚労省も費用対効果を取り入れる方針を打ち出しました。ただ一長一短です。

 厚労省の医療費削減政策では、高齢者には在宅で死んでもらう方向です。病院は病床を減らし、一般病床入院医療を定額制にして入院期間の短縮をうながす。ジェネリック薬品の普及促進。混合診療の導入など、医療費負担増の改正案が目白押しです」

岩上「先日、知人の弟が40代で孤独死しました。今は、ひとり暮らしばかりで突然死も多い」

西尾「2015年度、健保組合の高齢者医療支援金を段階的に増額、国民健康保険料も年額上限額を4万円増の85万円に。2016年度、入院食の自己負担額を1食260円から360円に。紹介状なしの大病院受診者には5000円以上の定額負担。健保の保険料率上限を12%から13%に。2017年度は75歳以上の保険料の特例軽減措置の段階的廃止。2018年度、健保の高齢者医療費を10%削減。入院食1食460円に再値上げ。これにTPPが上乗せされます」

混合診療とは「全額自費になる」ということ

西尾「混合診療など保険外併用療養費制度の拡充では、量最先端医療で国の定めた診療以外は、混合診療でも全額自己負担になります」

岩上「混合診療って、保険診療と自由診療とを別々に使える制度ではないのですか? 混合診療とは自費になるのですか。大変じゃないですか」

西尾「皆さん勘違いしています。混合診療とは、まず保険診療をやっていて、そこに、使いたいが認可されていない抗がん剤などで治療できる、というもの。それが、患者申出療法(仮称)で、2016年4月から医療特区で解禁になるのです。医療費を削減するため、本来、効果のある抗がん剤や治療でも、保険適用の認可はしない方針で進むのでしょう。

 がんは0期~4期に分け、1期は完治の可能性大です。3~4期のがんは、例外はあるが、全身転移してほとんど助からない。それでも自分の患者で末期がんを根気よく放射線治療で治した例はあります。医者との出会いも運命です。3~4期は全身転移するので、手術は1~2期の、取れば治せる患者にしかしません。食道がんでは、たった2ミリの深さで変わってしまいます。

 約1センチ(1g)のがんは10億個の細胞数。早いがんで1個の細胞が1ヵ月、遅いがんは2~3ヵ月かかって分裂する。増殖のスピードが全然違う。だから、福島原発事故の翌年に1.5センチの甲状腺がんが発見されたのを、『放射線の影響』と言うのはイロハをわかっていない医者です。反原発もいいが、医学的な知識をしっかり学んでほしい。逆に言うと、これからが問題なんです」

これからは死生観の共有、科学行政学が必要

西尾「人間は進歩しないが、高精度放射線治療など、機械はすごく進歩しています。昔は治療できなかった前立腺がんも、放射線治療ができるようになった。発展途上国の妊産婦死亡率は先進国の300倍です。先進国は8000人に1人、しかしニジェールでは7人に1人、アフガニスタンは8人に1人。日本の場合は1万1600人に1人です。

 また、日本は脳卒中で入院30日以内に病院内で亡くなる率が3.3%(OECD平均10.1%)、脳出血では10.9%(OECD平均26.9%)で(救命率は)世界一です。国民にも日本の医療の素晴らしい点を、もっと知ってもらいたいです。その上で、がんと向き合わないとだめですね」

岩上「国民1人が一生に使う医療費の半分は、死ぬ直前の2ヵ月間に使われる。やはり、末期医療は高いのですね」

西尾「仏教が誕生した時の北インドの平均寿命は19歳。だから、輪廻転生や無常観が生まれたのでしょう。そうでないとやってられない。孔子の、春秋時代の中国では平均寿命は30歳でした。だから、親孝行や生きる喜びを感じる思想になる。日本人の感性は、どちらかというと儒教的で、そのせいか、臓器移植や安楽死問題には否定的です。これからは死生観の共有と、科学行政学が必要です。

 ヒトゲノム解読も、つい最近です。1953年にDNAの二重らせん構造が発見されて、10年前にヒトゲノムの完全解読ができた。だから、放射線の健康被害も、農薬や遺伝子組み換え食品の影響も、ヒトゲノムのレベルではまったく研究も解明もされていないのです。放射線の影響も、原爆の疫学調査だけを基にするからおかしくなる。最新科学の視点で、国が後押ししないとダメなんです」

北海道・泊原発周辺ではがん死亡率が2倍

西尾「2015年4月12日、郡山駅前で車の中から放射線量を測ったら0.301μSv/hあった。でも、周辺のモニタリングポストは0.182μSv/h。放射線量は実際の60%程度にごまかされている、と思うべきです。チェルノブイリの立ち入り禁止区域は0.23μSv/h。だから、政府が線量をごまかしている前提で、住むべきですね。今は問題はないが、将来はどうなるかわかりません。

 ドイツの原発周辺では、白血病の発病率が高いという有名な調査がある。泊原発がある北海道の泊村では、がん死亡率は他市町村の2倍です。事故はないので、私は(原発から排出される)トリチウムに原因があると思っています。トリチウムは原発稼働時に常に排出されていて、半減期は12.3年。ヘリウムに崩壊する時、ベータ線を出します。6ミクロンしか飛ばないが、細胞核に取り込まれてしまうから危険なんです」

岩上「トリチウムの計測はとても難しいらしいですね。水1リットル測るのに2000万円かかるとも言われています」

西尾「今、市民放射能測定室では計測を始めています。アメリカでは、原発稼働地域と乳がん罹患率は見事に重なっています。2回ベータ崩壊するストロンチウムも危険。ストロンチウムは骨に集積し、ベータ崩壊するとイットリウムに変わり、膵臓に集積し、糖尿病や膵臓がんの原因になります」

「隠ぺい、ウソ、騙し、無責任」――不誠実で非科学的な日本

西尾「農薬、遺伝子組み換え技術、放射線。これらには良い面もある。これからは、どこに落としどころを作るかが問われます。影の部分もごまかさず、実験して明らかにすべきです」

岩上「そのためには、情報の公開、正しい科学的分析、公平な研究と報道の自由がないと絶対にダメですね」

西尾「日本では、それらの健康被害がまったく解明できていないことが一番深刻です。これでは、子どもたちの未来がつながりません。未来永劫こんな状態で、企業の金儲けのために、人々が健康被害を受け続けるのは大きな問題です。本当に真剣に考えなければいけません。

 今やっていることは、農薬、遺伝子組み換え食品、放射能、すべてにおいて、隠ぺい、ウソ、騙し。無責任、不誠実で非科学的です。子宮頸がんワクチンもまったく同じです」

大変な目に遭うのは自分たち──「自主、民主、公開」を

岩上「『自主、民主、公開』と、日本学術会議の武谷三男氏が言っていますが、今は秘密保護法で『公開』はできず、TPPも秘密交渉で『民主』的ではない。『自主』は国民主権のこと。民主主義も国民主権も知る権利も、憲法に基づいています。ところが、今、その憲法を変えようとしている。憲法を変えてしまえば、もう、拠り所がなくなります。国家の暴走を止めないといけません」

西尾「学校では、民主主義がどういうものかを教えてくれても、民主主義が踏みにじられたらどうするかは、決して教えてくれません。だから、武谷三男氏は1950年代にそれを主張し、1976年の岩波新書では、福島原発事故も予測しています。

 医療も、農薬も、食品も、遺伝子組み換えも、放射線の問題も、総体的に考えるべき時期に差しかかっています。大変な目に遭うのは自分たちです。本当に真剣に考えてもらいたい」

岩上「これで、西尾先生のインタビュー3部作は完結しました。物事は、全体的にとらえないと見えてきません。少しでも、皆さんの考えるきっかけになればいいと思います」

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  1. 入江 伸幸 より:

    いつもためになる動画の配信ありがとうございます。

    ワクチンといえば母里啓子さん、
    薬害といえば浜六郎さんが思い浮かびますが、
    是非、お二方ともご健在のうちに、
    インタビューをしていただきたいです。

    政治も重要ですが、健康や命に直結する医薬品の真実を、
    多くの人に知ってもらいたいです。

  2. いたくらひろみ より:

    浜六郎はどんなひとなのでしょうか?

  3. A esgotamento linfática, massagem que visa enxugar os tecidos enquanto sistema linfático é, por algum motivo, compromisso. http://humblemovielist.com/uncategorized/american-psycho/

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