澤藤×梓澤×岩上、異口同音に「安倍改憲を許すな!」 ~鼎談本『前夜』出版記念イベントで渾身の訴え 2014.7.10

記事公開日:2014.7.10取材地: テキスト動画独自
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(IWJテキストスタッフ・富田/奥松)

 「この本の中で危惧されていることが、現実になりつつある」──。

 2014年7月10日、東京都千代田区にある東京堂書店神保町店で、梓澤和幸弁護士、澤藤統一郎弁護士、IWJの岩上安身によるトークセッションとサイン会が行われた。3人の共著『前夜 日本国憲法と自民党改憲案を読み解く』(現代書館)の、2013年12月の刊行を記念したイベントで、もともと今年2月に開催されるはずだったが大雪のために延期されていた。会場に詰めかけた市民らを前に、3人は順番に登壇。9条改正のための憲法解釈の変更を、閣議決定でやってのけた安倍政権を批判した。

 岩上安身は「このままでは日本の自衛隊は、米国のご都合主義に振り回される」と指摘。軍需創出のために、常に戦争がほしい米国産業界の意向に沿って自衛隊が出撃する事態を避けるためには、「市民が大いに声を上げねばならない」と呼びかけた。

 イベント冒頭で挨拶に立った岩上安身は、『前夜』について、自身が主宰する独立系インターネットメディア、インディペンデント・ウェブ・ジャーナル(IWJ)が、2012年12月から2013年6月にかけて放映した計12回の鼎談番組がベースになっている、と説明した。

 「鼎談は、私と梓澤氏と澤藤氏の3人が、自民党が一昨年の4月に出した改憲草案を逐条的に読み解くもの。この改憲草案を巡っては、新聞やテレビも報道したが、概して特徴的な部分しか取り上げていない。翻ってわれわれは、草案の全部に目を向けた。その一文一文が意味するところを探り、現行憲法の価値に関する吟味も行った」。

 岩上安身は「鼎談での危惧が現実になろうとしている」と言葉を重ね、「明文改憲は無理と睨んだ自民党政権は、閣議決定で集団的自衛権の行使容認を決める暴挙に打って出た。これは明らかに違憲であり、巨大権力による、上からのクーデターに匹敵する」と怒りを口にした。「今回の閣議決定は、自民党政権にとって、『日本の総体を変える』という彼らの目標を達成するための第1段階にすぎない」。

■ハイライト

  • イベントタイトル 『立憲主義へのクーデター「7.1集団的自衛権閣議決定」を問う』

弱者に厳しい富国強兵が始まる

 続いてマイクを握った澤藤氏は、「私は、第1章が『天皇』で始まる現行憲法が『理想の憲法』だとは思わない」と切り出しながらも、「現行憲法が、今の日本社会よりも1~2歩進んだ次元にあることは間違いない」とし、「私たち日本人には、その憲法を武器にして裁判を戦ってきた歴史がある以上、現行憲法は『素晴らしい憲法』である」と語った。

 その上で、「安倍改憲策動」なる言葉を使った澤藤氏は、「安倍改憲は現行憲法の要諦とも言える、1. 価値の根源を国家から個人に移す、2. 侵略戦争と植民地支配に乗り出した過去を国家の恥辱と見なす、の2つを投げ捨てるつもりだ」と指摘した。

 「安倍政権は軍事力拡大に加え、新自由主義型社会の実現に向けて、競争原理の大胆な導入の色合いを併せ持つ、新たなタイプの『富国強兵策』を日本に導入しようとしている」とも訴えた澤藤氏は、「私たちは今、9条改憲に関心を集中させているが、安倍政権の狙いはそれだけではない」と続けた。

安倍晋三氏は、立憲主義の破壊者

 澤藤氏は、安倍政権は日本の教育とメディアを、自分たちの「日本刷新」の邪魔をしないものに作り変えようとしている、と言い切る。「メディアについては、昨年12月に成立した特定秘密保護法が、メディアを委縮させる効果がある。また、例のNHK人事の問題は、安倍政権が自分らに好都合な報道機関を作ろうとしていることの表れだ」。

 そして、7月1日に安倍政権が、集団的自衛権の行使容認を決めるために、憲法解釈を変えたことを、「明文改憲が無理と見るや否やの転換は、乱暴極まる」と評し、「ああいうことを、実際にやってのけたことについては『唖然』と言うほかない」と付け足した。

 澤藤氏は、安倍首相を軸とする今の自民党について、「かつての自民党の中から好戦派、タカ派、右翼派といった、良識派以外の勢力だけを集めたようなもの」と語った。

 「そこに公明党、維新の会、みんなの党が加わって、改憲勢力が作られているが、これは小選挙区制の弊害である」とし、選挙区制にメスを入れる必要性がある、と力を込めた。

 その上で、「一方の反改憲勢力は、旧社会党や共産党を中心とした、旧来の護憲勢力のみによるものではない」と述べて、反改憲の勢力が一枚岩になって戦うことが肝要、と力説。「市民運動には、反改憲のみならず、反原発、反TPP(環太平洋経済連携協定)、反秘密保護法、反貧困を叫ぶものがあるが、『安倍改憲の策動阻止』は、どの運動にも共通するスローガンになり得る」とし、「市民は今、安倍改憲勢力を孤立せるべく、大きな青写真を描かねばならない」と結んだ。

「血を流す道」になる可能性

 「立憲主義は『権力』という名の暴走列車に歯止めをかける装置」。続いて、澤藤氏からマイクを譲り受けた梓澤氏は、このように言明。「首相は、自衛隊と警察の最高責任者であることに加え、最高裁判所の長官の指名権を持っている。これほどの力を持つ権力者には、その力を悪用させない仕組みが不可決だ」と強調し、立憲主義の尊さを説明した。

 その上で、「『国民が選挙で自分を選んだ以上、自分は何をしてもいい』という考え方は、一国の首相たる者は絶対に持ってはならない」と口調を強め、「安倍首相による今回の解釈改憲は、自分の政治に歯止めをかける装置を、自分で外したようなもの。ならば、首相を辞めてもらうほかない」と力を込めた。

 集団的自衛権は「海外派兵」と同義語とした梓澤氏は、「第二次世界大戦後における米国の、もっとも大きな集団的自衛権はベトナム戦争で行使された。その時に、アメリカの属国である韓国からは、約5000人の兵士がベトナムに派兵されて死んでいる」と指摘した。

 憲法学者の小林節氏(慶応大学教授)が、安倍首相を「嘘つき」呼ばわりした一件にも触れ、「小林さんは、安倍首相が集団的自衛権の行使について、『血を流す道』になる可能があると言わなかったことを批判したのだ」と述べた。

ペンタゴン・ペーパーズ事件と秘密保護法

 梓澤氏は、トーク終盤で「ペンタゴン・ペーパーズ事件」に言及。これは、ベトナム戦争の陰謀を記した、実に7000ページもの米政府の秘密文書(現在は秘密解除状態)を、同文書の作成に関わったダニエル・エルズバーグ氏が、投獄を覚悟でニューヨーク・タイムズ紙に漏らし、世間に反戦機運を一気に広めたものである。

 1971年6月にニューヨーク・タイムズで始まった連載は、議会決議で、当時のジョンソン米大統領に、対ベトナムの戦争権限が与えられた折に根拠とされた、「北ベトナムが米国の軍艦に砲撃を加えた」という、1964年8月のトンキン湾事件が、実は米軍の挑発によるものだったこと。さらにまた、ジョンソン政権が、議会決議に至る開戦シナリオを事前に書き上げ、議会の決議案文まで完成させていたことを知らせる、衝撃的な内容で始まる。

 「戦争が起こる際には、政府によって必ず嘘が流布される」と強調した梓澤氏は、「その嘘を暴くのが、エルズバーグ氏のような良心的告発者だが、そういった良心的告発を弾圧するのが、特定秘密保護法だ」とした。

抗議の焼身自殺未遂事件を黙殺した既存メディア

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「澤藤×梓澤×岩上、異口同音に「安倍改憲を許すな!」 ~鼎談本『前夜』出版記念イベントで渾身の訴え」への2件のフィードバック

  1. 都知事選を終えてふたたび より:

    聴きごたえ、見ごたえのあるセッションと思います。
    都知事選をめぐる見解の相違を超え、団結して一堂に会されたことに喜びを感じます。

  2. @55kurosukeさん(ツイッターのご意見) より:

    澤藤×梓澤×岩上、異口同音に「安倍改憲を許すな!」 ~鼎談本『前夜』出版記念イベントで渾身の訴え http://iwj.co.jp/wj/open/archives/152325 … @iwakamiyasumi
    この本の中で危惧されていることが、現実になりつつある。ぜひ、『前夜』を読んでください。手遅れになる前に。
    https://twitter.com/55kurosuke/status/602771714548703232

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