「TPP参加で国民皆保険は崩壊する」日本医師会原中勝征前会長 ~シンポジウム「9.21国民生活とTPP」 2013.9.21

記事公開日:2013.9.21取材地: テキスト動画
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(IWJテキストスタッフ・富田/奥松)

 「日本は、弱肉強食の新自由主義路線を突き進んでいる」──。東京都の文京区民センターで、9月21日に開かれたシンポジウム「9.21国民生活とTPP ―交渉の内幕・憲法から見たTPP―」で、内田聖子氏(アジア太平洋資料センター事務局長)は熱弁を振るった。

 「安倍首相による五輪招致のプレゼンを見て、『日本は、もはや嘘つき国家だ』と痛感した」という内田氏は、「国民の6割が『汚染水問題は制御できている』という安倍首相の発言を疑問視、という調査結果もある。ではなぜ、こんなに大勢の日本人が東京五輪開催を喜ぶのか」と喝破。「利潤の追求が、命や安全な暮らしに勝る、という考え方が許される日本。それで本当にいいのか」と力を込めた。

 パネリストは、内田氏、原中勝征氏(日本医師会前会長)、首藤信彦氏(前衆議院議員)、宇都宮健児氏(前日弁連会長)。TPP交渉に参加する日本を含む12カ国は、この10月に大筋合意に至る公算が大きい、との見方がある中、4人は異口同音に「TPP反対の抗議行動は、今を逃したら行うべき時期はない」と訴えた。

 トップバッターの原中氏は、日本の「国民皆保険」を取り巻く状況の厳しさを指摘。非正規雇用の拡大を背景にした低賃金労働者の急増に懸念を示し、「社会保険料を払いたくても、払えない人が大勢いる。国民健康保険の未納率は1割超だ。一方で、国の財政赤字の問題も危機的水準にあり、社会保障制度の崩壊の可能性はぐんと高まった」と語った。

■ハイライト

  • パネリスト
    原中勝征(はらなか・かつゆき)氏(前日本医師会会長、TPP阻止国民会議代表世話人)
    首藤信彦氏(前衆議院議員、TPPを慎重に考える会幹事長代理)
    内田聖子氏(アジア太平洋資料センター[PARC]事務局長、STOP TPP!! 市民アクション)
    宇都宮健児氏(前日弁連会長、TPPに反対する弁護士ネットワーク共同代表)
  • ゲスト 安部芳裕氏(作家)、高橋巌氏(日本大学生物資源科学部教授)ほか
  • 司会 三宅雪子氏(前衆議院議員、TPPを慎重に考える会役員)
  • 主催 TPPを考える市民の会

郵便局は庶民を裏切った

 工場の海外流出防止のため、「輸出を有利にするTPP参加は有意義」との主張があることについて、原中氏は「メーカーが決め手とするのは人件費。自動車や家電の大手企業は、低賃金国への生産シフトを緩めない」との見方を示した。「日本国内の雇用環境は、一段と弱者に厳しいものになるだろう。低賃金労働者の増加に歯止めがかからなければ、国民皆保険は崩壊する」。

 日本郵政の、アフラックとのがん保険事業の提携にも言及した原中氏は、「米国は『命』の分野でも利潤追求を認める国だ」とし、次のように強調した。「TPPで(保険診療と保険外診療の併用を認める)混合診療が日本に普及することを前提に、金持ちしか入れない、治療費まで含む『がん保険』が、全国に約2万ある郵便局で売られようとしている」

「反TPP」で当選した議員を尋問せよ

 次に、司会の三宅雪子氏(前衆院議員)から、「この7月に開かれたTPPのマレーシア会合などに足を運び、貴重な情報を日本に持ってきている人」と紹介され、マイクを握った内田氏は「今年3月、安倍首相がTPPへの参加を表明して以来、私のもとには悪い情報しか入ってこない」と切り出した。「このところ話題になっている『経済特区』はTPPの先取りで、労働法制は大幅に緩和される(=低賃金労働の増加に拍車をかける)。最初は、限定的なエリアでの実施となるが、適用範囲の拡大は必至だ」と述べた。

 内田氏は「日米とも大手企業は多国籍化しており、国境など気にしていない。日本の大手も米国の巨大資本も、利潤追求の立場でTPPを使おうとしている」と強調した。「現に、日本と米国の大手製薬会社は一体化してロビー活動を実施している。TPP問題を、国対国の視点で見る向きは多いが、実際はそうではない」

 また、「TPPの最大の特徴は、その秘密主義にある」と内田氏は指摘し、「反対運動を繰り広げる市民らは、情報不足ゆえに苦戦を強いられる。しかし、だからこそ、市民の側には『伸びしろ』がある。すでにTPP交渉は、保険や金融など分野ごとのレベルへ移行して、早期妥結に向けて進んでいるが、日本国民の多くがTPPの怖さを知れば、国内の反対運動は盛り上がる。諸外国の有志は、それに期待している」と話した。そして、「先の参院選で『TPP反対』を掲げて当選した議員を、地元の有権者が『どうなっているんだ』と問い詰めることは有効な手立てだ」と呼びかけた。

国家主権を破壊する「ISD条項」

 宇都宮氏は、内田氏の意見を引き継ぎ、「TPPに関する真の情報が、議員の間に広がれば、自民党の中にも『反対』を表明する議員が多く登場するだろう」との見通しを示し、「TPPは条約なので、発効するには国会での批准が必要となるため、日本の参加を十分阻止できると考えている」と語った。

 TPPへの導入が予定されている、企業が進出先の政府を訴えることができる「ISD条項」について、宇都宮氏は「日本の国家主権を破壊する危険性を孕んでいる」と危惧した。「トラブルが生じた場合、日本の裁判所は蚊帳の外に置かれてしまうため、憲法76条の1項の『すべて司法権は、最高裁判所及び法律の定めるところにより設置する下級裁判所に属する』という規定に反する」と強調した。

マレーシアは「TPP脱退」第1号か

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