「TPPの『ISD条項』は国家主権の侵害につながる」有志の弁護士318名が政府に撤退を求める要望書を提出 ~TPPに反対する弁護士ネットワーク設立記者会見 2013.7.29

記事公開日:2013.7.29取材地: テキスト動画
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(IWJ佐々木隼也/テキストスタッフ久保元)

特集 TPP問題

※全文文字起こしを掲載しました。(7月31日)

 「TPPは農業や医療の問題とされがちだが、我々はISD条項について問題視する。TPPは関税ではなく非関税障壁の問題が本質だ」――。

 7月29日、弁護士会館において「TPPに反対する弁護士ネットワーク」の結成記者会見が開かれた。このネットワークは、日本のTPP参加に懸念を示す弁護士14名が結成を呼びかけたもの。記者会見に先立ち、全国の弁護士318人が賛同人に名を連ねた「TPP交渉参加からの撤退を求める弁護士の要望書」を政府に提出した。会見では、共同代表を務める3名の弁護士がそれぞれ挨拶した。

 宇都宮健児弁護士(日弁連前会長)は、「TPP反対の動きにおいて、我々弁護士グループは遅きに失したが、今後は弁護士会の中からも賛同者を募っていきたい」と意気込みを述べた。加えて、ISD条項(投資家対国家紛争解決条項)に強い懸念を示し、ISD条項の問題啓発を重点課題として取り組んでいく姿勢を示した。

 伊澤正之弁護士は、米韓FTA締結に至る経緯を振り返り、「韓国では裁判官157名が、『ISD条項は、司法主権を侵害する可能性がある』として、タスクフォースチーム(特別対策部門)設置の建議書を大法院(最高裁)に提出した」と述べた上で、「同じことを日本の裁判官には期待できない。在野法曹である我々弁護士が、これを担っていく必要がある」と決意を述べた。

 岩月浩二弁護士は、「ISD条項とは、投資協定に反する、『投資受入国政府措置』によって損害を被った外国投資家に対して、国内法による救済措置とは『別』に、『投資家国際私設法廷』に提訴する権利を、事前に包括的に認める制度である」と概要を説明した。また、「私設法廷」と呼ぶ理由として、「裁判官を『当事者が選ぶ』という、その場限りの裁判である」ことを説明した。その上で、「投資協定のルールは、具体性を欠く、極めて曖昧なものだ。これでは、あらゆることを『違反として構成』し、訴えることが可能になってしまう」と危険性を指摘した。

 さらに岩月弁護士は、「ISD条項は、憲法が規定する国会の立法権や、地方自治体の条例制定権を侵害する」と指摘したほか、ISD条項によって、憲法の条文に、「但し、投資家国際私設法廷の権利を尊重しなければならない」などの文言の追加が必要になるとの見解を示した。その上で、「但し書きや文言の付加をしないと、憲法との統一性が保てないようなものを秘密で交渉し、国民的議論をしないのは憲法違反である」と厳しく批判した。

 続いて行われた記者との質疑応答では、同ネットワークと日弁連との「温度差」について質問が上がり、弁護士業界内でのTPP推進勢力の存在が浮き彫りになった。司会進行を務めた川口創弁護士は、「TPPを『ビジネスチャンス』『職域拡大』と勘違いしている弁護士がいる。日弁連として一枚岩の対応ができないのは残念だ」と述べ、苦しい胸の内を明かした。一方で、川口弁護士は、「安倍政権は、国民を無視するだけでなく、国会議員も無視してTPPを進めようとしている」と述べ、「自民党にもTPP反対議員が大勢いる。我々が反対議員を後押しし、TPP反対の声を顕在化させていきたい」と今後の抱負を語った。

 このほか、会見および質疑応答で、中野和子弁護士、和田聖仁弁護士、神山美智子弁護士も、TPPに対する見解や今後の取り組みについて語った。

■全編動画

  • 日時 2013年7月29日(月)
  • 場所 弁護士会館(東京都千代田区)

以下、全文文字起こし

2013/07/29 「TPPに反対する弁護士ネットワーク」結成記者会見

川口創弁護士)皆さん、お忙しいところ、ありがとうございます。私は弁護士の川口と申します。今日はTPPに反対する弁護士ネットワークの立ち上げということで、記者会見を持たせていただきました。記者の皆さん、お忙しい中、お越しいただいてありがとうございます。先ほど、「TPP交渉参加からの撤退を求める弁護士の要望書」というものを内閣府に提出してまいりました。賛同者は318名ということで、実質的には、賛同の呼び掛けをしたのは10日ほど前でして、その間に選挙があって呼びかけが不十分だったわけですが、それでも300人以上の弁護士が呼びかけに賛同しただけでなく、まだまだ賛同者数は今日明日にも伸びてくると思っております。

TPPについては、日弁連としては明確な反対や賛成の立場は出しておりませんけども、弁護士としても、きちんと声を上げていく必要があるだろうということで、会の設立に至った次第です。まずはネットワークの代表になっていただく、宇都宮弁護士のほうから一言ご挨拶お願いたします。

宇都宮健児弁護士)TPPに反対する弁護士ネットワークの代表の弁護士の宇都宮でございます。日本がマレーシアの会議からTPP交渉に参加しましたけども、その交渉の中でどういうところに問題があって、どういうような交渉の進展があるか、ほとんど明らかにされていない状況で、私たちとしては情報が徹底的に公開されるべきだと思っております。この問題が、市民生活に大きな影響を与えるような問題であるということは、ご存知の通りだと思いますし、そういう問題について、ちゃんと情報が公開されないと判断できかねるということになる。そういうところがまず問題だろうと思っております。

それから、私たち法律家の立場として、TPP交渉の中で予定されているISD条項(投資家対国家紛争解決条項)が締結されることについて、大変な危惧を抱いております。TPPというのは、いま農業とか医療の問題だけがクローズアップされていますけれど、全体的には21分野で、あらゆる分野、金融、そういったあらゆる分野に関わっていますので、国民の生活や健康を、それから財産等に大きな影響を与える。食の安全、環境の安全、労働問題、雇用問題、様々な国民生活に影響を与えるような協定になると思っております。

その中で、ISD条項に同意しますと、個別企業が、日本の法制度や自治体が掲げている条例等を問題として、損害賠償の対象にしてくる可能性があります。多くの法律や条例というのは、国民の生命や健康や安全を守るための条例や法律だと思いますけれど、そういう法律を一企業や投資家が問題にして、事実上その法律や条例の改廃を求める、あるいは事前にこういうISD条項を締結することによって、そういう法規制をやらせないような効力を持つという危険性があります。

これはしかも、問題になった場合に、ほとんど国内の司法裁判所でこの問題が裁かれるのではなくて、国際的な第三者機関で裁かれることになる。日本が、日本で起こったトラブルについては、基本的には日本の司法裁判所で問題を解決するというのが憲法の建前ですけど、それが外国企業投資家の第三者機関への提訴によって、日本以外の機関で裁判が行われると。その結果、先ほどお話ししましたような、日本の国民の安全や命を守っている法律や条例に大きな影響を与えかねない。これはやはり司法権の侵害であると。司法権を憲法で、裁判所の司法というもので、トラブルを裁くというふうな建前になっているんですけど、その憲法違反にもなるんじゃないかと。

それから、法律というのは、立法権というのは国会にあります。それから、地方自治体というのは条例を制定することができるんですけども、その、憲法で定めた立法権や条例制定権を侵害することになりかねない。その中身というのが、あらゆる分野の法律や条例等の問題になりかねないということで、この問題というのが農業の問題とか医療の問題と比較してあまり問題にされていませんが、極めて日本の国家主権そのものを侵害するような協定になるのではないか。しかも、相手が国家ではなくて、要するに企業、投資家、こういうところが日本の国家あるいは自治体を訴えることができるというのは、非常に問題がある協定ではないかと考えております。

そういうところから、弁護士ネットワークはISD条項の問題点を中心に、TPPに参加するのは反対、即刻撤退すべきだというふうに考えまして、こういうネットワークを結成したということでございます。弁護士集団というのは、これまで医師会とか医師の集団がTPPの問題点を早くから指摘し対処しましたけれども、弁護士会は遅きに失しましたけれども、ただ、この問題についてはいろいろ国民にアピールすべきであると、まだ理解されていないところもあるということで、具体策が、ネットワークを形成することによって、弁護士会内部でも賛同者を募りますし、国民を介してこの危険性をアピールしていきたいと。さらにはこういう協定の参加から撤退するように働きかけていきたいと。当然、国民的な運動と同時に、国会議員に対しても訴えかけがこれから必要になってくると思っておりますけど、そういうことを考えて、急遽ネットワークを立ち上げた次第です。よろしくお願いします。

川口弁護士)ネットワークは共同代表の形をとるということになりまして、共同代表は3人おりまして、もう1人の共同代表の岩月弁護士から一言お願いします。

岩月浩二弁護士)弁護士の岩月でございます。ISD条項と憲法。今日お配りした分厚い資料。これが何かといいますと、米韓FTAの締結に当たって、韓国の法務省および韓国の最高裁がどのような検討したのかということについて、米韓FTA批准後に韓国の国会議員が情報公開をさせて明らかにされたものです。これをご覧いただくと、韓国の法務省が非常に危機感を持ってこのISD条項を米韓FTAに入れるということについては抵抗している状況が非常によくわかります。結果的にはアメリカに押し切られたわけですけれども、なぜISD条項を入れないようにしようとしたのか、それから、入れるとしても、その及ぶ範囲を最低限にしたいということをいろいろ必死になって努力した結果が表れていますので、それを踏まえて、我々は抵抗論を少し張りたいなということです。

ISD条項と憲法と題するものですけども、いま宇都宮弁護士から申し上げたように、TPPというのは関税の問題というよりも、非関税障壁が問題の本質である。非関税障壁というのは何かというと、貿易の妨げになる各国固有の仕組みや制度というふうに考えていいと思います。これらをなくそうというのが基本的なTPPの考え方です。元協定が4ヶ国で締結されています。ニュージーランド・シンガポール・チリ・ブルネイ、この4ヶ国で元協定がすでに締結していて、その段階交渉がTPPなんですけども、その布石を固めた1条4項のところを見ると、まず、「貿易の障害を撤廃し、国境を越える移動を明確にすること」「公正な競争の条件を促進すること」「投資の機会を実質的に増大させること」。改めて繰り返しますと、貿易を拡大して公正な国際競争要件を確保して、外国投資を保護して国益にするために、各国固有の規制や仕組みを撤廃する。これまでよりもいっそう高度に、そういうことを実現しようという。あえて言いますと、野心的試みがTPPである。

その中でISD条項がどのように位置付けられるかということですけれども、ISD条項をあえて定義すると、投資協定に関する、受け入れ国政府の措置によって損害をこうむった外国投資家に対して、国内法による救済手続き、国内の裁判所の救済手続きとは別に、「投資家国際私設法廷」に対して、そうする権利を事前に包括的に認めると。こういうものがISD条項です。

で、どういう条項があるかということですけども、投資協定のルールというのはわずか数箇条です。わずか数箇条の中に、非常に具体性を欠いて曖昧なものがあります。例えば、「間接収用」。これは普通に理解がしにくい概念ですけれども、間接収用。それと、「公正で公平な最低限の待遇を与える義務」。これも非常に抽象的な規定になっています。したがって、あらゆること、間接収用とか公正公平最低限待遇義務、違反として構成して訴えることが可能だというような、韓国法務省が、NAFTAの例や提訴されたケースをずっとNAFTAの例を挙げたうえで、結論を出したのが、「参加によって、あらゆる政府や自治体の措置、立法を含んだ提訴の対象になる」ということで、非常に広範囲な提訴で、国際仲裁に対する提訴権を認めるのがISD条項です。

これを憲法との関係で考えたときに、いくつも問題が起きてくるというのが私たちの理解です。一つは76条1項の司法権。まず直接的にここに影響しております。「すべて司法権は最高裁判所法及び法律の定めるところにより治する下級裁判所に属する」というのが日本国憲法前提の司法権ですが、ここに、「但し、外国投資家が投資家国際私設法廷への提訴を選択する場合はこの限りではない」という条項を加えるのと同じことになります。あえてここで「私設」ということを何度か繰り返しているのは、裁判官を当事者が選ぶというその場限りの裁判がISD条項の裁判ですので、私設という言葉を入れています。

で、76条1項だけではなくて、司法の関係では81条の違憲立法審査権にも影響を与えます。現行の条文は、「最高裁判所は一切の法令命令規則または処分が憲法に適合するかしないかを決定する権限を有する終審裁判所である」という形で判断、憲法に基づく形で判断をしておりますけども、ここに「81条の2」を入れる必要があるわけです。「投資家国際私設法廷は一切の法律命令規則または処分がTPP12章(投資章)に適合するかしないかを決定する権限を有する唯一の法廷である」という言葉がここにかぶさってきます。本来、法律というのは、憲法に違反する限りにおいて違法だという評価があるわけですけれども、このISD条項を入れることによって、国権の最高機関が作る法律、これを憲法に違反していなくても、投資協定に違反するということで違法だと判断する機関が国家の外にできる。これが投資家国際私設法廷だということです。

それから41条。41条というのは国民主権権利の端的な表れですが、「国会は国権の最高機関であって国の唯一の立法機関である」に対して、「但し、投資家国際私設法廷の判断には従わなければならない」。そうするか、あるいは、「投資家国際私設法廷の判断を尊重しなければならない」というような形で、本来、憲法が書き換えられなければ、ISD条項は本来的に憲法に合わないはずである。

ここで韓国法務省が検討した結果は、非常に広範な範囲で、非常に巨大な外国企業に提訴権を与える結果、「萎縮効果が表れる」ということを言っており、国家主権原理に対するかなり大きな制約になる。それから、具体的な分野として、医療だとか食料が問題になっている、あるいは食の安全が問題になっていることを考えると、例えば、人権規定もずいぶん変わっていくんですけど、端的に言うと、25条1項はどういうふうになるか。生存権ですけれど、「すべて国民は外国投資家の利益を害さない範囲で健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する」というふうに変えられてしまう。

こういう形で但し書きとか付加とかをしないと、憲法との統一性を保てないというようなものを、秘密交渉で国民的議論もなしにやるとすれば、やはりこれは憲法に違反するだろうというふうに考えざるを得ない。というのが、憲法との関係でISD条項を考えた場合の危険性です。以上です。

川口弁護士)ありがとうございます。TPPの問題については、農業の問題にかなり論点が矮小化されているのではないかというふうに、我々法律家は考えておりまして、マスコミを通じても、農業や医療のところでの議論が多いわけですけれども、このISD条項を見ると、すべての国民生活に関わる法規制が、非関税障壁という形で外国の投資家から巨額の賠償を訴えられるという危険性があると。それに対して、巨額の賠償を訴えられないために萎縮効果という形で自分から規制を撤廃していって、食の安全や労働規制とかをどんどん、次々とみずから撤廃していくのではないか。現に韓国では進んでいることなんですが、韓国のFTAではこのISD条項が入っていますので、日本がTPPを締結したあとにどういうことが起きるのかということは、すでにわかるほど問題が進行しているわけですけども、その点についても法律家としてはかなり問題だということで、このネットワークでは韓国の弁護士等とも連携しながら、TPPの問題について論点が小さく矮小化されたことについて、TPPがこういう問題なんだよ、ということをきちんと提起して、国民の皆さんに情報等をお話していきたいというふうに考えております。もう1人共同代表になっていただきました伊澤弁護士の方から一言お願いいたします。

伊澤正之弁護士)栃木県弁護士会の伊澤正之と申します。よろしくお願いします。岩槻弁護士からもお話がありましたが、米韓FTAの、非常にTPPに似たISD条項などを見ると、韓国の中では相当悩んだ上で条約を締結する。韓国では裁判官157名がこのFTA受け入れのISD条項は、司法主権を侵害する可能性があるということで大法院、日本の最高裁ですが、大法院に対して、タスクフォースチームを設置する建議書を出したと。日本の司法界では、裁判官にこのようなことを期待するのは、私はできないと思っていまして、それは在野法曹である弁護士が、それを担わなわなければいけないと考えております。

一番目には7月になりまして、TPPについての意見集会をして、それをまとめたのがホームページの7月17日と16日の私の話。この論点について記載させていただいております。私たちは、やはり個々の論点だけではなくて、このTPPが全体としてどのようなものであるか、そういう意味でも、いっそう調査し検討し評価して、それを国民の皆さんに伝えていく義務があると、法曹者としての義務があるというふうに考えております。それが、今回のTPPに反対する弁護士ネットワーク立ち上げということにつながったと。私たち、これから本当に、大変に大きな問題ですが、全力を挙げて取り組んでいきたいというふうに考えております。

川口弁護士)ありがとうございます。本来であれば、日弁連が主体となって、重点課題として取り組んでいくところなんですが、日弁連はいろいろ中にありまして。今日はこの弁護士ネットワークとして、どのような形でどういう取り組みをしていくのかということ。今日立ち上げたばかりですので、細かい具体的なところまでは詰め切れていないのでありますけれども、どういうふうにしていくのかということが、どういう取り組みを持って、について、事務局長になっていただいた中野先生から一言お願いします。

中野和子弁護士)弁護士の中野と申します。急に立ち上げて、ここまで急速に広げてきたわけですけれども、まだまだ知られていない。特に憲法、条約が憲法を潰していくというようなこの内容について、十分に知られていないし、それは弁護士の中でも、まだ十分に知られていないということがありまして、まず情報を広く伝えていくということを行います。もう一つ、先行している農業分野、医療分野、あと消費者団体の皆さんもこれに反対という声を上げているんですけども、さらなる分野を統合して、大きな一つの国民運動にしていくということで考えております。まだまだ合流できる分野があると思うんですね。

でも、日弁連の意見書にもありますように、公共事業においては、労働者に関して事前要求条例を作っていることがありますが、こういうものが非関税障壁ということで出される危険性もあるわけです。労働者の場合には、もう少し人が流動化する、流入するということもありまして、労働基準に関して危険性はあると言えると思います。公共事業ですけれども、政府調達に関してはWTOで制限がありますが、それをどこまで下げていくのかということになれば、予定していると言われている国土強靭化計画、この中のお金も、日本の国民の税金が、外国の資本に持っていかれるのではないかという危険が十分にありますので、そういうことについても、建設業界の方とともにお話し合いをしていきたいと思いますし、自治体の皆様とも話し合いをしていきたいと。最終的には、これについて「撤退すべきだ」という国民的合意を形成していきたいと。そのために、弁護士のネットワークとして活動していくということを考えております。以上です。

和田聖仁弁護士)東京で弁護士をやっております和田と申します。今日の資料の投資家対国家紛争解決手続というところの中に、ローンスターと韓国との間の訴訟についての説明が書いてあるんですが、内容的には、韓国とベルギーの投資協定の問題にはなっているんですが、ベルギーにたまたまペーパーカンパニーを置いてある関係上、そうなってしまっているんですが、実際的な手形はローンスターということになっているんですが、実はローンスターという会社は韓国だけの問題ではないわけでして、日本でもすでにいろんなところで投資をしていると、そういうところで、具体的な例で言えば、皆さんご存知だと思いますけれど、東京相和銀行が東京スター銀行に変わっていく経過の中で、投資をされた会社がローンスターだったと思いますし、また日本のゴルフ場が、すでに破綻したゴルフ場が海外投資家に買収されていると思いますけれど、その中で関わっている投資の会社としましては、ローンスターとゴールドマン・サックスが双璧をなすという状況になっているかと思います。そういう意味でも、韓米FTAの問題が、日本のTPPの問題にも影響を与える。韓米FTAで起きている問題が、日本でも問題になってくる。まず、そこに関わってくる当事者というのは、実は韓国の問題であったものが、日本の問題であったということは、ここにも一つ表れているんじゃないかというふうに思います。そういう意味でも、韓国と連絡、連携を取りながら、何とか、韓国で起きていることを日本で実現をさせないということが大事なんじゃないかと私は思っております。

神山美智子弁護士)本日はありがとうございます。東京で弁護士をやっております神山と申します。私は80年代ぐらいからずっと、司法弁護団に取り組んでおります。TPPが集大成というか、もうこれで最後、崖っぷちだと思っているんですが、一番の問題は萎縮効果だと思います。この制度は、訴えられる前に自分で規制をどんどん緩やかにしていくというようなことが30年以上続いてきています。例えば、アメリカでは、遺伝子組み換えのホルモンを牛に与えて早く太らせたり、高脂肪の牛乳をたくさん出すというようなことをやっております。ある州は、そういう牛ではない、そういう牛乳ではないものに、そういうものではないという表示をさせるということを州が認めたんです。そしたら、牛乳の協会がその州を訴え、その州の訴訟団はモンサントも参加したり、モンサントの弁護士が後押ししたりして、州が負けてしまったということがあるんですけれど。そういうことが日本国内で、もし起こったとすれば、いま日本は「遺伝子組み換えでない」という表示を認めていますけれど、ちょうどそれは同じようなことですから、「ISDで訴えるぞ」と言われる前に、おそらくそういうことをちらつかされたら。直ちにやめてしまうだろうという意味で、私は日本政府が萎縮してしまうということを非常に懸念しています。

川口弁護士)具体的には、ネットワークとして、交渉の年内妥結を目指すというふうに言っている間、実際は年内に妥結するかどうかはわかりませんけども、我々の時間はないという中で、本来は、東京・大阪・名古屋の比較的都市部の弁護士が呼びかけ人になっていますけども、農業や食の問題ということになると、北海道とか東北とか各地のいろいろな現場の問題やニーズを吸い上げた形で、弁護士がこうしたネットワークを作っていますので、そういう弁護士たちも結集しながら、全国的な運動にしていきたいというふうに考えております。ぜひ、北海道から沖縄まで各地各地で、弁護士がそれぞれのところで勉強会とかロビーイング活動を含めて、精力的にこの運動を年内取り組んでまいりたいと。

業界団体が、それぞれ個々に農業とか食の問題、医療の問題、それぞれ深刻な問題ですけれども、地域の弁護士が法的なサポートをしながら、結節点になって全体をまとめるという形で、国民一人一人の問題に対することを、わかりやすく提示するような情報発信を、精力的にしていきたいというふうに考えております。以上で、こちら側からのお話としては以上です。

あと、呼びかけ人としては、318名ということで間違いございませんということでご了承ください。基本的にこの要望書自体は、今後も賛同者を募って、改めてまた提出していくということを考えております。それから、核となる弁護士が今回、全国から集まってまいりましたので、核となる弁護士を中心に情報交換等をしながら、TPPの問題は、皆さんは農業の問題という形で報道した方が視聴者にわかりやすいということで、どうしても農業の話をしてしまいがちかもしれません。農業の問題は21分野のうちの一つですので、重要な問題ではありますけども、他にもたくさんの問題があるという全体像を私たちは自主的に提示をしていく。その一つの核がISDだというふうに思っておりますので、ISDを中心に問題点を示していくということを考えております。記者の皆さんから何か質問があればお願いいたします。

質疑

日本農業新聞・緒方大造氏)我々日本農業新聞は、農業の問題ではなくて、実は国家主権の問題ということで、一貫してISD条項は国家主権侵害性があるという論陣を張ってきました。そして、いまお話になられた通り、極めて憲法違反の疑義が強い、もしくは憲法に抵触するということを、実際に、TPPに類似するような韓国そしてメキシコをずいぶん取材してきました。一つ、今後の専門分野としてお聞きしたいんですが、即時撤廃ということをこれから運動で呼びかけていくということなんですが、最終的に合意もしくは国会批准承認という段階、それが明らかに憲法に違反している、抵触しているということになれば、違憲ということで、TPP条約そのものが無効であるという訴訟を起こすつもりはあるのか、そこまでも視野に入れているのかどうか、その辺をお聞きしたいです。

岩月弁護士)ある場面、ある場面では、弁護士ですから、本来、処分として国民的な訴訟という形になるのか、どういう形になるのか、そもそも一般国民という形で訴訟を起こすのは極めて困難ですから、どのような形で訴訟を起こすかは別にして、必要な場合にはそういう手段もありうるというふうに考えております。それが有効な場合には、そのような手段があると。ただ一番問題なのは、まだ憲法問題として、専門家がこの問題について発言をする機会が非常に乏しい。ここのところをまず変えていって、最終的に必要な措置を取るというふうに私は考えています。

宇都宮弁護士)最終的に、そういう訴訟というのは必要に迫られたらやると思いますけども、まだまだ、いまのところはそれよりもまず、この問題についての重要性、ISD条項の問題はいくつか問題にされていますけども、まだまだ浸透していない。しかも、具体的に韓国等では相当、米韓FTAで問題にされて、法務省なんですけども、裁判官なんかはそろって仔細な検討をされているということと、先ほど神山弁護士が言われたような萎縮効果というのが、かなり韓国の中では出てきているということも聞いていますし、それからあとは、NAFTAの関係でISD条項が使われて、メキシコとかカナダ政府が訴えられていると。こういうような問題が起きているわけですけども、このようなことが、まだ十分に国民に知られていないのではないかということなので。

それからあと、弁護士の中でも、その辺の問題がいままで十分に浸透していないということで、当面はやはりISD条項を中心にして憲法違反の問題、それから国家主権侵害の重大な問題だということを、弁護士のほうにも国民のほうにもこの問題を提起していきたいと。それから最後に、憲法裁判に行く前に、最終的には国会で批准という問題がありますから、やはり国会議員の中で、やはりこういう主権を脅かすような協定に反対してもらいたいと。反対すべきだというような運動が、裁判の前に必要なんじゃないかと。

その国会議員というのは、自民が圧勝しているわけですけど、基本的には自民党自身が参加する中では、党内でも一定の方向については、みんなできちんと公約を守っていくと、それが守れないようであれば撤退するということを謳われていますので、この交渉の中身というのをできるだけ情報公開させて、自民党の議員の中でも、私は、内容が明らかになれば反対する議員がたくさん出てくるんじゃないかと。まだまだ、そういう議員に影響を及ぼすようなこの運動というものは、弁護士会ではなくて、いろいろな団体が反TPPのネットワークを作っているようですから。

それから、いろいろな農業の団体、それから消費者団体なども反対運動をやられていますから、そういう運動を広げる中で、国会議員の中でも反対議員を増やしていくと。最終的には批准を阻止すると。もちろんその前に、政府が約束を守って自分たちの主張は曲げられないということで、撤退するということがあれば一番いいんですが、そうでなければ、批准をさせないという運動というものが当然、中心になるんじゃないかと思っております。

伊澤弁護士)私は、TPPの本質はアメリカの投資家の保護であって、そのための、相手国の主権の制約というところにTPPの本質があると思います。先ほど、日本農業新聞の方から、きちんと報道していただいているというお話がありまして、非常に心強く思っております。一方で、国会議員の先生方というのは、非常に新聞をよく読まれるんですが、主として全国紙しか読んでいらっしゃらない方がありますので、全国紙に載るような、我々の主張が全国誌に載るような運動を作り上げたいというふうに考えております。

川口弁護士)ご質問の、違憲訴訟を起こすのかということについては、皆さんはぐらかすので。私も二つほど違憲判決を取ってまいりましたけど、違憲訴訟というのは、やはり最後の最後の構えでやるものですので、その時になって初めて引き出すというものです。いまは、闘いの場はそこではないので、その前の段階で全力を挙げてやるということですので、前に、では、「運動が敗北したあとに違憲訴訟しますか」ということにいまの時点で答えられる段階ではないと。ただ、最終的には、違憲だというように言っているわけですから、その段階になれば、そういう形の対応も必要な時がくれば、私たちも動く可能性がないとはいえない。いまの時点では、その前の段階で、交渉撤退、批准させない、ということを当面、私たちとしては最大限やっていきたいということです。

朝日新聞)政府のほうはISD条項について、訴えられて負けた場合にお金で解決する方法だと。一方、いま先生方がおっしゃったように、制度や法を変えさせられるんだいう根拠の部分が、例えば韓国でどうだったとかを教えてください。

岩月弁護士)法律的に厳密にいうと、ISD条項で敗訴した場合は、国家は賠償義務を負うけれども、その法律自体を無効にはされません。ただ、威嚇効果というのは非常に大きいものがあるので、例えば2011年にドイツが脱原発政策を採りました。これに対して、スウェーデンのバッテンフォールという電力会社が、ドイツ政府を相手取ってISDに基づく裁判を起こしました。この金額は38億ドル。日本円でいうと4000億円弱。そういう賠償請求を受けるということですよね。ただ、そういう賠償をしながら国策を貫くことができるのかどうかということでいえば、直接法律を無効にしないにしても、非常に政策の選択については抑圧的になるということは理解していただけると思います。

それから韓国で具体的に表れているケースでは、いくつもあると思うんですが、一つわかりやすいのではないかと思うのは、日本のエコカー制度にあたる制度を韓国が昨年実施しようとしました。ところが、アメリカの自動車業界のほうから、このエコカー制度は、「大型車はあしからず」「アメリカに対して差別的だ」という意見書が出されました。これは、「内国民待遇に違反する」という主旨になると思うんですが、その結果、韓国政府は国民にはそういう説明をせずに、棚上げにしました。そういう意味では、あらゆる政策について外国投資家、主としてアメリカ企業だと思いますけども、その意味で弱腰なのか、あるいは監視から逃れられないのかいうことを、ずっと考えなければならないという意味で言えば、あらゆる政府の行為、立法を含めて、外国投資家の監視のもとに置かれる。それがやはり、立法権に対する侵害ではないかというふうに思っております。

朝日新聞)いまのお話前提で、例えば、こういう条件を付けるとか、何がなんでもISD条項がだめなのか、それとも、いろんな制限をつけたり、さらにこういうものに変えていったら歩むんだというご判断を持ちでしょうか

岩月弁護士)現在交渉されているTPPの、12章の交渉段階の不確定な案として、昨年7月にアメリカのパブリックシチズンという市民団体がリークしました。確かにその中に、一定の制限をしようという条項が入っていないわけではないです。そういうふうに、健康とか環境とか、安全とかそういう分野について、どのように扱うかについて三つぐらい案が出ていました。ただ、一番強烈に制限する案も、健康とか環境とか安全の分野について政府が取る措置が、「慎重に配慮された方法による、そういう措置を妨げない」。一番強い案でもそういうものです。「慎重に配慮された方法」というのは、貿易に与える影響を最小限にするとか、投資に与える影響を最小限にするとか、かなり厳しいものが想定されます。

それから、例えば環境のための措置だとすれば、環境を守るための措置として、かなり定量的な形で価格的な証拠を十分に持った措置でないと、環境のための措置と言いながら、外国企業の公正な競争条件を妨げるためのものだというような言い方の要求をされますので、そういう意味では、限定をしていくという方向は、確かにTPPにも交渉の中で取り上げられながらも、実際の力関係でなかなかそうはいかないということになるんじゃないかということを考えると、やはり、ISD条項自体が、外国投資家が政府を直接国際裁判に引っ張り出すという構図自体が、非常に特異なものなので、それはやはり認めるべきではないというのが基本的な考え方になると思います。

日本農業新聞)いつまでに何人ぐらいの賛同者を。いつまでに何人ぐらいの集められる・・・。

川口弁護士)引っ込みがつかなくなる可能性がありますが、どうしましょう。あまり人数ですね、我々そんなにこだわっていないところがあって、人数が多いほうがいいでしょうけれども、今回ご覧いただいた通り、西日本が非常にやわなので。全国の問題ということからすると、中国・四国・九州地方の弁護士がほとんど入っていないというところで。そこのほうへ広げないといけないし、北海道もほとんど来ていないというように思うものですから、1週間程度でこのぐらいですので、まぁ、あまり増やすことには目標は設定しすぎて、やるべき課題を怠ることにはならないようにしないといけない。

記者の皆さんはだいたい、記事を書くときに「8月末までに1000人目標」というように書きたいと思うんですけど、私もその手には乗らないと。増やしたいとは思っていますが、いま、年内にという中で、弁護士会の中でもTPPの問題について理解が不十分だと思いますね。ISDについても、ご存知ない弁護士が多数います。この賛同を弁護士会に広げても、「ISDって大変だよね」と初めて知ったという人が結構多いんですよ。それが弁護士会の中の実情でして、弁護士も多分に一般市民として、日頃は、「TPPは農業を強くするために必要だねー」とかいう程度の議論しかできない弁護士が実は圧倒的。その中で、弁護士の中での勉強も、かなり集中的にやって行こうというふうに先ほどお話をしていたところです。そんな中で、賛同者を増やしていきたいと考えておりますが、いつまでに何人というのはあえてちょっと割愛させていただきたいと思います。

日本農業新聞)先ほどロビー活動をするとおしゃっていましたが・・・。

川口弁護士)地元の国会議員の中で、自民党、民主党も当初TPPに賛成していたけれどもという議員が結構いまして、自民党に関しては、こないだの選挙では「TPPに反対」で勝っている人がいます。今回の選挙では鹿児島の尾辻さんなどは、明確に「反対」で勝っていますよね。そういう形で、自民党の中でもTPPに反対している人たちがかなりいますので、そういう議員たちとの、どういう議員にどういう働きかけをしていくのかということは、今後、そこは戦略を立てながらやっていきたいと。最終的には、国会議員の中でTPP反対の声を広めて安倍政権を、国会議員を無視して進めているわけですから、国民を無視しているだけではなく、国会議員も了解しないというのは、そういう形で進めていくということについて、やはり国民の側からも投資家の側からも、議員を後押ししてTPP反対の声を顕在化させていきたいと。そのために、積極的に議員を各ブロックごとに選出議員をピックアップして、精力的にロビーイングをしていきたいなと考えております。

朝日新聞)ISDについてですけども、関心が非常にありまして。ただ難しい点とか、情報がない中で、事実と推測をきちっと分けて考えないといけない部分も我々ありますので、例えば、自分たちも勉強をしっかりとしていきたいという気持ちがあります。その上でちょっと恥ずかしいですが、基礎的な話を教えていただきたいんですが、やはり皆さん法律家の主張として、読者に訴えるときに、何が違法性が高いのかというところをやはり取り上げていきたいと思うんですけども。ここを見る限りでは、憲法76条1項に違反するというところが第一関門というふうにとらえてはいるんですけども、外国人の投資家なり民間が、国際仲裁に訴えるケースというのはほとんどないものなんですか。極めて異例なものなんでしょうか。それと、いま捕鯨の関係で国際司法裁判所でやっていますけども、あれも国と国のことだから許されるということなんでしょうか。あとはEPAでいまもISD条項は進んでいますけども、一応この中でも法制局を通じて公的審査を通じて結んでいるんですけども、これも基本的には憲法違反であるという見立てでよろしいんでしょうか。

岩月弁護士)ISD条項自体は、実は世界的に見ると1959年から、これが一番最初だといわれています。ドイツとパキスタンだったかな、ちょっと自信ないですが、ISD条項が入っています。これは基本的に東西冷戦が背景にあります。発展途上国に投資した投資が国有化される、そのときに、撤退するにあたって賠償を求めると。その場合に、途上国に対する、私は蔑視もあると思うんですけども、途上国の裁判制度が不備であるから、投資をするにあたって、途上国との間でISD条項を含んだ投資協定をするということが1960年代からあったと。ところがISD条項についての訴え自体はそんなに多くないんです。ずっと、ある年には1件とか2件とか、ずーと続きました。

1994年にNAFTAが発効します。NAFTAとは何かというと、アメリカとカナダとメキシコです。アメリカとカナダというのは先進国同士です。しかもアメリカというのは訴訟大国といわれる国です。このアメリカとカナダが、初めて先進国同士の中にISD条項を入れた。これをきっかけにして、一気にISD提訴というのは増えていきます。本来は発展途上国の司法制度の不備を理由にして作った制度ですから、先進国同士では本来は要らないというのが、いまのTPPの中のオーストラリアの主張ですけども、入れることによって非常にISDの市場規模というか、それが一気に拡大した、というのが流れです。そのNAFTAのケースで、政府は、経産省の発表だと全体で45件あると、いうふうに発表でそうなってますけども、45件の中で、ではメキシコ企業が訴えたケースがどれだけあるか。1件です。あとはアメリカが大部分で、カナダがその半分ぐらいというのが実情です。

だから、日本政府として、これまで途上国との間での協定にISD条項を多分27~28入れていると思いますが、途上国が先進国を訴えるとか、途上国の企業が先進国を訴えるということ自体が非常に稀だと。稀だし、皆無と言っていいぐらいの状態だったということですね。ただ、過去において、それが出てきていないから今後出ないということはありえないし、出てくると非常にインパクトの強い話になる。内閣法制局がこれが憲法に違反しないと判断してきたのは、多分実際に日本政府が訴えられることを、あまり想定していなかったのではないか。現実に訴えられるということを想定してこれを考えるときには、やはり憲法違反ではないかと。だからいまの状態は多分、途上国との間でのISDでは、潜在的に憲法違反なんだということじゃないかと僕は考えています。

それから、捕鯨の関係なんですけども、これは国際司法裁判所、常設国際司法裁判所での裁判です。この常設国際司法裁判所で強制的に管轄が生じるのは、司法裁判条約に加盟するにあたって、強制的管轄、訴えられたら受けますよということを受諾した当事者同士、だから日本とオーストラリアは多分、強制的管轄を受諾してるんだと思います。韓国や中国は多分、受諾していないのだと思いますけれども、そういう強制的管轄を受諾しているから訴えられると。ただ、直接内政に関わることかどうかというと、日本の国内司法が完全に及んでいる事項かというと、あくまで国際関係ではないかと。国際、国と国との関係のもとでの違法かどうかということを判断するのであって、国内の制度が違法かどうかという以外で判断しろという、ISDとは少し性格が違うのではないかというふうに思います。

朝日新聞)確認ですけれども、外国人投資家が政府を訴える場合に、国内の裁判所に訴訟を起こす場合は、問題がないというふうにとらえているということですか。

岩月弁護士)それはそうでなければならないと思います。外国投資家だからといって、差別的な判断をするということであってはならないというふうに思います。ただ、ちょっとだけ加えると、ISD条項で認められる賠償というものと、日本の国内裁判所で日本の企業が訴えたときに認められる賠償と、多分相当な差があると思います。アメリカのロイヤーの金銭感覚ってすごいですから、簡単に1桁2桁は変わってしまうんじゃないかというふうに思います。

しんぶん赤旗)ISD条項について、憲法違反でないかということ、それから、国内法規制の改廃を迫られるということからいえば、弁護士の方々が常日頃、国民の権利や人権等を守るために働かれていると思うんですけども、そういう皆さんの活動と国民の権利といったものが、どういう変化を懸念されているのかというのを教えてください

宇都宮弁護士)これは具体的にならないと、必ずしもそうなるかどうかというのはわからないんですけど、例えば私がずっと長年取り組んできた多重債務問題、日本の場合は多重債務問題を解決するために、最終的には2006年に貸金業法の改正が行われて、首相も上限金利を厳しく規制してグレーゾーン金利を撤廃したんですね。消費者金融の分野で消費者、特に低所得者を法の面から守るには、私は金利規制が必要だと。その上で2006年の法改正、最終的には2010年6月に完全施行された結果、多重債務者はかなり減少して、1998年から自殺者が14年連続で3万人続いたんですけど、2012年の自殺者は3万人を切りましたよね。これは、そういう法改正によって多重債務者がかなり減ってきたというのは、大きな影響を与えたんじゃないかと思ってるんですけども、そういう金利規制自体は企業の立場から言うと、これは不公平な規制。アメリカは事実上、金利規制がない状態なんですね。

こういうことが、実は2006年の法改正の時も、当時のレイクというのはゼネラルエレクトリックというアメリカ系のサラ金だったんです。GEグループで。それからCFJという会社がありまして、これはシティバンク系のサラ金だったんですけど、これを米国商工会議所という形をとって、金利規制反対運動をずっとやってきたんですね。アメリカの投資ファンドグループもサラ金も当時、大手は一部上場企業になっていまして、株を購入して運用していましたから、金利を規制すると利益が減るということで反対運動をやっていた。

こういう、本来は多重債務の被害から消費者を守るための規制自体の問題にされると、本当は日本国内で被害が多発しかねないような問題とか、あるいは日弁連の貧困問題対策本部は最低賃金の引き上げと同時に、「公契約条例」というのを各自治体が制定するような運動をやっていて、かなりの自治体に広がっていっていると思いますけども、公契約条例というものは、公共事業を請け負う会社の企業体で働く労働者の最低賃金を保証して、そういう企業体でないと公共事業を受けられない、こういうような条例なんですけども、これも、企業活動からすればかなりの制限なんです。

そこで条例自体が非常に企業の利益を害しているということで問題になると。こういうことが一つ一つ問題になりかねないというのがISD条項ではないかと。たかが企業のために、企業の金もうけのために、日本の社会でそういう多重債務者の拡大を防いでいたんですね、あるいは、法理の被害から消費者を守るための法律自体が、一企業の利益のために問題にされかねない、あるいは最低賃金の問題でも、そういう最低賃金を決めることそのもの自体が、企業利益を害するというような問題提起も考えられるので、これはやはり国民生活を守る、先ほどの憲法25条の生存権保障、こういうことが、たかが企業の利益のために台無しにされるということは許されないのではないかというように思います。

そもそも個別企業の利益のために、その国の制度自体が問われるような仕組み自体が、私は非常に問題ではないかと思っているんですけどね。こういうような協定そのものが、出発点から言って、非常に問題を抱えているんじゃないかと思っております。

中野弁護士)先ほども少し申し上げた公共事業ですけれども、やはり国の税金あるいは地方自治体の税金を使って公共事業をするといったときには、一定の国内実績であるとかそういう要件を受注する時につけて入札に出すわけです。そういうものに対して、やはりそういう実績のない新しい外国の投資家が入ってきたときには、それはおかしいと排除するものというふうに言うかもしれない。そういうことを言ってしまうと、本当に小さな公共事業にしたって、それは国民の税金を使って国民のために行い、日本の事業家さんあるいは中小企業対策のためにそういうことをやると。あるいは大きな企業かもしれませんけども、ゼネコンさんがやってその人たちが潤うという構造になっていたものが、それはできない、あるいは一定の条件を外してしまって、ものすごい競争させるということになったらば、どんどん低入札ということも起こってきますし、日本の国民の税金が日本国民に還元されずに他国の投資家に行ってしまうという事態も起こりうるだろうと。

そういったときに、日本国内の内需を管理しようと思ってやるような政策は一体どうなってしまうんだろう。ということが十分、危険性として考えられる。あと、食品添加物について神山先生から一言お願いします。日本の国民が「添加物がイヤだ」と言っても、私たちのそういう要求が「それもだめよ」とつぶされてしまうということになったらば、私たち国民は、いろいろな考えで国民主権者として発揮するような行動すべてが否定されていくというようになりかねないというふうに考えております。

神山弁護士)添加物というよりも、農薬のことでお話をしたいと思います。90年頃にレモンから「2,4-D」(除草剤)が出てきたということでレモンが売れなくなったということをご存知の方がいらっしゃるかどうかわからないですが、その当時にアメリカ政府が、その当時あった「OTO」(Office of Trade Ombudsman)という「市場開放問題苦情処理推進本部」というところに、「日本がポストハーベストを認めている国際基準を受け入れていないからこんなことが起こるので、国際基準を受け入れて、ポストハーベストを前提とした残留基準を定めるべきだ」という正式な苦情を申し入れてきたのですけれども、それに対して、今度日本政府は、それを全部受け入れて、例えばそれまでコメに0.1(PPM)だったものを、小麦には8という残留基準を決めるということをやりまして、怒った消費者の人たち200人が、残留基準の取り消しを求める農薬裁判というのを起こしたんです。その中で、一生懸命闘われたと思いますけども、そもそも国が決めた基準を取り消しを求めるような資格はないわけですから、取り消しを求める裁判というのは門前払いで、訴えは却下で終わるというように。アメリカが直接、日本政府に「金を払え」と、「ポストハーベストを認めないような制度をしているから、アメリカは損したから金払え」と言ってきたんだったら、(我々国民は)それこそ「憲法違反だ」とか言って争うでしょうけども、日本はそう言われると「ハイわかりました」といって全部受け入れてしまうので、結局、国内の争いになってしまって、そういう資格がないといって負けてしまうということで、訴訟などを起こさないにしても、これまでそういうことで負け続けてきていますので、TPPになったら最初から負けるんではないかというふうに思います。

TBS)初歩的な質問をさせていただきます。今日お話をお聞きして、大きな問題であると認識したんですけども、こういう大きい問題であれば、日本の弁護士さん、皆さん全員で反対されればいいのに、なぜ有志の方だけなのかというところをお聞かせいただけますか。

伊澤弁護士)ISDで情報がありまして、どこの施設の法廷でやるかというと、ワシントンDCということになってしまうんですね。そこで費用をかけてやれるのは、非常に大資本だけですし、そこで英文と英語でもってやるのは基本的にはいまの巨大ロー・ファーム。その「おこぼれ」をもらう日本の法律事務所はあると思いますし、TPPについて「ビジネスチャンスだ」というふうに考えている弁護士がいることは事実です。私たちのような弁護士と、ビジネスチャンスと考えている弁護士が、どちらがいま執行部で力があるかというと、私の口からは言えませんが、わかると思います。私たちは、あくまでも国民のため、国の利益のために考えてやっています。自分たちの利益のためにやっているわけではありません。しかし、自分たちの利益のために動いている弁護士がいることは事実ですし、そういう弁護士が生まれるというのは、非常に悲しい事態だなと私は思っています。

川口弁護士)宇都宮先生はノーコメントですね。私がちょっと前に、日本農業新聞でインタビューを受けた際に、日弁連の検討委員会の副委員長という肩書きが出ただけで、東京の「法商売系」の法律事務所の弁護士から、日弁連にクレームがあったそうで、「弁護士会としてTPPに反対しているかのように見えるような報道をするな」といったように、そういうような、いちいち日弁連の執行部が私に「気をつけてください」と電話をかけてくる日弁連もどうかと思うんですけども、日弁連の中ではTPPを強力に推進して「職域拡大だ」というふうに勘違いしている・・・これ映像流れていますよね?今日から理事長になりましたけども、一部弁護士たちがいるのは事実かなというふうに思っています。

本来は、TPPの全体が、まず例外なき関税撤廃、関税の問題だけでなく非関税障壁の問題というもののほうが大きくて、すべての国民の生活、生命と健康を守る法規制が、非関税障壁という形でTPPを阻害しているんだということで、どんどん撤退の危機にさらされるという状態で、賠償金をちらつかせて、私たちの食生活も医療も農業も地域経済も、労働規制もすべて、21分野、国民生活のあらゆる分野の法規制が撤廃の危機にさらされて、お金儲けと国民の生活というのを天秤にかけたときに、お金儲けを優先していくというような仕組みが、いま私たちの手の届かないところで作られてしまおうとしている。

情報がない、管理されながら進んでいるので、そういうことに対して、本来なら弁護士として情報開示をきちっとさせて、私たちの国民の人権や自由を守ろうというようのが、おこがましいですが、私たちの使命なので、そういう形で本当は一致団結して日弁連として声を上げてきたいというところですけども、職域拡大というふうに考えている弁護士も一部強力にいるというところで、一枚岩としての対応ができないというところが残念ながらいまの状況です。ツイッター上でも、「会長の時に頑張ってくれれば」というような批判というか苦情が若干寄せられてますけども、内部でいろいろあると思いますが、いまこうして宇都宮先生を中心に頑張ろうということで、弁護士の中でも多くの弁護士を結集していきたいというふうに思っているところです。

記者)いまの質問に関連したことですが、ビジネスチャンスととらえる弁護士さんたちは、憲法76条1項の違反ではないという認識の人が多いんですか。違法性の観点がずれとか、そこのところはどうでしょうか。

川口弁護士)憲法違反という認識は、多分ないと思います。そういうところではなくて、単純に自由貿易とか何とかという、ちまたで出ているロジックが多いと思いますけども、あと本当に、いま弁護士業界はどこも経済的に厳しい。ここに来ている弁護士も、厳しい場面に置かれているわけなんですけども、厳しいから職域拡大だという形でTPPに参入することに取り込まれている人たちがいる。憲法上のロジックでは考えてない人たちが多いと思います。

記者)「これは憲法に違反しないよ」と反論してくる弁護士はいないのでしょうか。

川口弁護士)ちゃんと議論をふっかけて聞いたら、そういうかみ合いにはなりません。「余計なこと言うなよ、川口」と言われるだけです。

記者)アメリカ企業が日本政府を訴えた場合・・・。

岩月弁護士)国際投資家仲裁制度はいくつかの案があるんですけども、一つの案は、「国際投資紛争解決センター」という世界銀行傘下の解決する場所があります。そこに提訴するもの、そこに提訴するものは、原則としてワシントンですが、ワシントンでありますので事務局が。原則としてワシントンですが、開催地は当事者の合意で変えることができる。これはワシントンである必要はない。それからその制度は、訴える原告・外国投資家が1人、裁判官が4人、訴えられた国がもう1人の裁判官を選び、その二者が合意する人が裁判長になるというような形で、その場限りの裁判官を選びます。だから仲裁という言葉になるんですけども、そういうものであって、場所をワシントンにするパターンもあれば、全く投資紛争解決センターを通さずに全く私的にやる方法もあるんです。

新聞報道だと、国連の国際商取引法務委員会に訴えるというような報道があるように書かれますけど、これは間違いなんです。国連の国際商取引法務委員会は、モデルになる仲裁ルールを作るだけです。あとは作られた仲裁ルールに基づいて、外国投資家と国家が話し合って裁判官を決めて、裁判所をどこにするかということを自由に決めてやれるもの、これが俗に何か「国連に提訴することもできる」と書かれているものです。で、大まかにはその二つぐらいが典型的なICSID(国際投資紛争解決)なんですけれど、場所はワシントンに限るわけでもないということです。

記者)もし日本政府が訴えられた場合、日本でやらないと受けられませんと、もしずっと言い続けた場合は、日本で・・・。

岩月弁護士)場所については、多分、当事国はいけないんじゃないですかね。場所は当事国は多分いけないんだと思います。だから、アメリカ企業がカナダ政府を訴えたにしても、ワシントンでできるかというと、できない可能性はあると思いますね。現実に、アメリカ企業がメキシコを訴えた、ICSIDという世界銀行傘下の機関に提訴したケースは、カナダで仲裁がされている。というふうにしていますから、その場所ではなかなかできないのではないかと思います。あえて、ついでですから付け加えますと、裁判官の資格というのは非常に緩やかです。ところが、それに耐えた人がどんどん専門化していくということがあるので、実際にベルギーと韓国のISDに基づいて、ローンスターが韓国を訴えたケースは、裁判官の構成がフランス・アメリカ・イギリスというふうになっていますね。だから、韓国にとって誰が有利・不利になるのか、全然わからないような世界です。

川口弁護士)可能であれば、記者の皆さんとの今後の懇談の場等を設けられればなと思っています。弁護士業界的には、岩月弁護士が突出して突っ走っているのを、我々が一生懸命「待ってー」と追いかけているような状況で、なかなか弁護士業界的にも、ISDの問題というのはわかりにくい。国際的にいろいろな判例とかケースを、かなり正確に押さえているものですから、記者の皆さんにも、一緒にそういう情報をシェアしていく場が持てたらなというふうに思いますので、今日おいでの皆さんには、お名刺をいただいている皆さんには、記者懇談会などの機会があればご連絡させていただきたいなと思いますので、またそのときにはよろしくお願いいたします。

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「「TPPの『ISD条項』は国家主権の侵害につながる」有志の弁護士318名が政府に撤退を求める要望書を提出 ~TPPに反対する弁護士ネットワーク設立記者会見」への3件のフィードバック

  1. koguma8823 より:

    始めまして。私見と質問がありコメントさせていただきます。
    TPP参加が決まる場合、私は早期にアメリカの弁護士とエージェントにコンタクトしたいと考えてます。
    自己防衛として、日本の弁護士と派遣は訴訟で駆逐されると思ってます。
    弁護士が国内法に保護される、労働者も公人も黒船であるTPPのエージェントに提訴され
    知識、資本の無い私はらは泣き寝入りになると怯えております。アメリカンドラマで弁護士、交渉人が
    よく登場する世界になるのではありませんか?
    未だに楽観している方々がいらっしゃるが不安でたまりません。
    日本の国内法に保護された法務関係の方々大丈夫なんでしょうか?
    ビジネスチャンスと思われる方々、この黒船を
    乗り切る自信をお答えいただきたいです。

  2. 田中由紀子 より:

    「TPPに反対する弁護士ネットワーク」待っていました!力強い限りです。それぞれの専門分野からTPPに反対するネットワークが広がるよう期待しています。私は看護師ですが、TPPの医療・国民の健康への弊害を心配し反対しています。日本医労連発行の「医療労働7月号」に色平哲郎医師が「世界に誇るべき国民皆保険制度と、TPP」を書いています。その中で先生は民主党政権時代政務官とのやり取りで「最高裁の『混合診療禁止は合法』」という判例が確定した。TPPの条約より最高裁の判例の方が上ですねと質問したと報告しています。医療の法的問題も合わせて発信してください。

  3. 川本ゆり より:

    国際法は、それが国際法廷で法的保障を与えられる場合も含めて、(例:欧州人権条約)全て加盟国の主権の尊重の上に成り立っています。国連憲章は全ての加盟国の対等な権利、民族自決、人権や基本的自由、一層高い生活水準を目的としていて、他の協定がこれに反する場合国連憲章の義務が優先する(第103条)ことを明記しています。ISD項目の問題は、TPPの枠組みをけん引している米国が、社会権規約や、持続可能な開発に関する条約、(京都議定書、生物多様性条約、食料に関するカルタヘナ議定書)を批准していないことが最大の要因です。この国際法上の不備が、『第三世代』を含む基本的人権を無視した、投資家の利益による訴訟を容認する結果となり得るのです。判決の問題のある場合も上級国際法廷に上告できる制度も不備です。既にTPP交渉で先行しているオセアニア諸国もこのISD条項には反発しています。日本と北欧諸国は国の主権免責(国が外国の国内裁判所に提訴されない権利)に関する条約を批准していますが、(批准国が少なく発効はしていない)国際司法裁判所は既に、ドイツについて主権免責を認める判決を下しています。
    重要なことは、国連憲章の目的と原則を踏まえて、日本国憲法前文の原理に沿って憲法第98条第2項を生かす政治と外交と考えます。

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